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手作り&裏読み&日替わりブログ

【マンガの話】歴史ドラマか? 現代劇か?

本日は、かなり濃い内容を描く、大人向け漫画のご紹介をば。

作品のタイトルは、『チ。ー地球の運動についてー』です。

チ。―地球の運動について―(1) (ビッグコミックス)(提供:Amazon)

 

『チ。ー地球の運動についてー』(以下『チ。』と表記)は、青年漫画雑誌『ビッグコミックスピリッツ』にて連載中の作品です。

コミックスは、既刊5巻。

 

内容は、「歴史を下敷きにした、学問&宗教ドラマ」といったところ。

派手なアクションや、奥深いミステリー要素は皆無。しかし、読者の心を掴む魅力に満ちており、かなりの人気を集めています。

「マンガ大賞2021」では、堂々の2位入賞。勢いが窺えますね。

www.mangataisho.com(2021/11/6閲覧)

 

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『チ。』は、「歴史を基にしたフィクション」です。

物語の舞台は、中世(15~16世紀)のヨーロッパをモデルにした世界。

 

作品内のヨーロッパは、本物の歴史に非常に近い。ですが、所々に「これはフィクションですよ」と言いたげな表記があります。

例えば、物語の重要ファクターである宗教の名前。

劇中では「C教」と表記されていますが、これは明らかにキリスト教です。英語で表記すれば「Christianity」ですから、頭文字を取って「C教」としたのでしょう。

 

また、物語の肝である「地動説」の話。これに深く関わるのは、15~16世紀に活躍した人物「ニコラウス・コペルニクス」です。

が、劇中ではコペルニクスの影は全く出てきていません。その点も、フィクションぽさを演出する描き方です。

チ。―地球の運動について―(2) (ビッグコミックス)(提供:Amazon)

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先程も少し述べましたが…

『チ。』で描かれるのは、「地動説がどうやって発見され、広まったか」という物語です。

 

地動説とは、今日では常識レベルの話。「太陽を中心にして、地球が公転している」という学説です。

この説は、古代ギリシャの時代から唱えられていた説です。しかし、キリスト教は地動説を否定し、「地球を中心に、太陽を始めとする他の星が周回している」という説を採用していました。これを「天動説」といいます。

 

中世ヨーロッパ(キリスト教圏)では、教会に逆らうことは不可能。

その顕著な例は、「異端審問」や「魔女狩り」でしょう。教会の教えを疑えば罪に問われますし、教会が「悪魔と関係を持つ者だ」と認定すれば、火刑に処されて殺されます。

 

この世界で、教会の教え「天動説」を否定する「地動説」を唱えると、かなり危険。「異端者認定」を喰らいかねない。もしそうなれば、拷問の末に殺されることも覚悟せねばならない。

その様な世界において、命がけで「地動説」を研究した人々がいる。その人々が、『チ。』の主人公です。

故に、『チ。』の主役は1人ではありません。複数人います。

 

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『チ。』が、何故ここまで支持されるのか?

筆者が思うに、それは「情報や信念に対し、命がけで向き合う者達を描く作品だから」というものではないか?…と。

 

現代のリアル世界は、情報に満ちています。

書籍は勿論、ネット等で様々な情報を閲覧可能。ここまで情報過多な時代は、これまで存在しなかったものでしょう。

故に、「何が本当で何が嘘か、物凄く分かり難くなってしまった時代」ともいえます。

また、「油断していると、自分も嘘・デマを撒き散らす可能性が高い」という状況でもある。SNS等で、情報発信が容易になった現代。このリスクは誰にでもある。

故に、「情報の真贋を、真剣に考える機会が激増した時代」とも言えます。

 

『チ。』の世界は、現代の状況と似ています。いや、現代に限らず、人間世界における普遍的状況なのかも知れません。

不確かな情報に惑わされ、妙な同調圧力をかけられ、意に沿わない生活を強いられることは多い。

そんな中で情報を吟味し、自分の信念を貫いて生きることは、とても苦しい。しんどい。面倒くさい。

そういった状況でも、命がけで前に進もうとする人達。それが『チ。』の主人公達なのです。

 

『チ。』は、中世ヨーロッパを描いた作品ではない。実は、「現代になって、より一層深刻化した病巣」を描く作品であるこうも言えますね。

筆者は、これがヒットの要因だと考えます。

 

 

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