前回からの続きになります。
連載テーマは、「衆院選で、投票先をどこにするか悩む方に、選択のヒントを提案したい」というもの。
筆者が提案するのは、「各政党の公約」と「過去実績や言動」を分析すること。これが最も効率的だと考えています。
「なぜ効率的と考えるのか?」については、第1回記事に詳細が書いてあります。そちらを参照してくださいませ。
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当連載の第2回から、「各政党の主張や実績に関する、具体的な分析」を行っています。
今回取り上げるのは、日本共産党です。
日本共産党の選挙公約は、以下。
www.jcp.or.jp(2021/10/25閲覧)
上記公約をザッと見ると、ポイントは以下の9点。
(1)「自公政権による政治腐敗」の撲滅
(2)新型コロナ対策。医療体制強化と、経済活動の推進
(3)経済的格差の是正。弱者支援方策の拡充
(4)労働者の権利保護。中小企業への援助拡充
(5)教育体制の強化と、教育費用の低廉化
(6)富裕層や大企業への課税強化。それ以外は減税推進
(7)原発に頼らない、クリーンかつ省エネ志向のエネルギー政策推進
(8)男女差別やLGBT差別等を減らす対策
(9)日米安保体制の廃止。憲法9条を御旗にした平和外交
共産党の公約も、「新型コロナ対策」や「社会的弱者への援助」等、他の党と似たものが多いです。
が、一番に「自公政権による腐敗撲滅」を掲げるところが特徴的ですね。他党でも指摘している要素ではありますが、いの一番に持ってきてはいない。
また、「日米安保体制の廃止」を訴えている所も特徴的。これまで当ブログが分析した他党の公約には、「廃止」とまで言及しているものがありません。
思い切った書き方をしています。
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で、公約の内容ですが…
分析云々の前に、ちょっとひとこと。
共産党の公約には「分かり易い形の要約パンフレット」的なものが見当たりません。
筆者の調査能力不足なら申し訳ないのですが、ちょっとページを覗いたくらいでは見つかりませんでした。
「詳しい内容を記した、長文バージョンの公約」しか見当たらない。
当ブログの過去記事でも述べましたが、有権者は忙しい。
加えて、専門的な政治知識を持つ人ばかりでもない。
故に、詳細な公約の前に、簡易版パンフレットを読む人の方が多い筈です。
そういう「分かり易い品物」がないと、有権者に主張が伝わりづらいのでは?
ちょっと話が横道に逸れましたが、気になったので言及させて頂きました。
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話を元に戻しましょう。
筆者が思うに…
共産党の公約内容は、概ね良好なものが列挙されています。
しかし、どうにも納得できないと言いますか、「本当にできるのか?」と思しき内容もチラホラ。
その手の疑問点の中で、最大クラスのモノは…
やはり「日米安保体制の廃止。憲法9条を御旗にした平和外交」でしょう。
共産党は、自衛隊に対して否定的です。日米安保に対しても同様。
まぁ、確かに日米安保については、おかしな事件が度々起きています。在日米兵による事件・事故や、危険な場所での軍事訓練等がそれです。
日本の捜査を止められ、アメリカ側のみで調査を行う。その結果「日本側が泣き寝入り?」という事例が、根絶されたとは言い難い。
そこに疑問を持たない人は、あまりいないでしょう。
他方、日本は「中国」「北朝鮮」「ロシア」等、物騒な国に囲まれています。
どれも好戦的であり、核保有国ばかり。弱みをみせれば、攻め込んでくる可能性がありますね。
近年の実情を見ると…
ロシアは、ウクライナに侵攻しています。「政府に敵対する人間の暗殺」も多い。
中国は、インド軍と小競り合いになって死者を出しています。南シナ海で人工島を作り、軍事要塞化しています。国際機関からダメ出しを喰らっても、完全無視という傍若無人ぷり。
北朝鮮は、ミサイル実験を続けています。国民が餓死寸前なのに。
…どの国も、決して大人しくはない。
その様な国に囲まれている日本が、何故に大規模侵攻を受けていないのか?
それは、アメリカがバックにいる為です。
日本に手を出すと、アメリカと揉める可能性が高い。アメリカはガチの武闘派国家ですから、下手に絡むと倍返しを喰らいかねない。故に、日本へ軍事侵攻しない。こういう図式で均衡が保たれている。これが通説です。
共産党が、「この通説を打ち破るレベルの、説得力のある改善案」を出したのか?
少なくとも、筆者は見たことがない。
ただやみくもに「日米安保体制の廃止」と言っても、有権者が納得してくれないでしょう。
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「憲法9条を御旗にした平和外交」も同様。
要は、「話し合いオンリーで侵略防止&平和維持」という方策です。
もしそれが可能であれば、香港の惨劇を防ぐ方法があった筈。
香港には、独自の軍隊が存在していません。
ただ、イギリスから中国に返還される際に、「2047年までは、中国本土の制度を香港に押し付けず、返還前の体制を保証する」という約束事が交わされただけ。話し合いの結果だけです。
その後、香港はどうなったか?
香港は中国の体制を押し付けられ、言論の自由は奪われ、中国共産党政府によって侵略されてしまいました。
約束を破られたワケです。
中国共産党政府は、子供に対しても容赦ない。鬼です。そんな相手が、約束を守る筈はない。
www.youtube.com(2020/9/7)
www.asahi.com(2021/10/25)
こういう相手を前に、「話し合いオンリーで侵略防止&平和維持」と申されましても…
具体的な方策を出して頂かないと、全く信用できない。
一応、「日本共産党」は「中国共産党政府」に対し、批判声明を出しています。
が、批判するだけでは、日本の有権者が納得しない。
「日本が香港の様にならない為には、具体的にどうするか?」について、明確な手順を示して貰う。そうでなければ、「話し合いオンリーで平和維持」というのは…通用しないでしょう。
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また、日本共産党の公約には、以下の文章が書いてあります。
現行法は、漫画やアニメ、ゲームなどのいわゆる「非実在児童ポルノ」については規制の対象としていませんが、日本は、極端に暴力的な子どもポルノを描いた漫画やアニメ、CG、ビデオ、オンライン・ゲーム等の主要な制作国として国際的にも名指しされており、これらを適切に規制するためのより踏み込んだ対策を国連人権理事会の特別報告者などから勧告されています(2016年)。
非実在児童ポルノは、現実・生身の子どもを誰も害していないとしても、子どもを性欲や暴力の対象、はけ口としても良いのだとする誤った社会的観念を広め、子どもの尊厳を傷つけることにつながります。
「表現の自由」やプライバシー権を守りながら、子どもを性虐待・性的搾取の対象とすることを許さない社会的な合意をつくっていくために、幅広い関係者と力をあわせて取り組みます。
(https://www.jcp.or.jp/web_policy/2021/10/2021s-bunya-007.htmlより。改行等は筆者によるもの)
日本共産党は、「児童ポルノの商品化を止める」という名目で、「非実在児童ポルノ」を規制しようとしています。
これは、ちょっとヤバイ動きです。
筆者は、児童ポルノに否定的です。そんなもん、無くなった方がいい。
しかし、その為に「非実在児童ポルノ」という概念を使うのは、駄目だと考えます。
何故なら、これは「フィクションの規制そのもの」だからです。俗に言う「言論統制」「言論弾圧」の入り口です。
もし「非実在児童ポルノ」の規制が成れば、次々に「非実在」の名で表現規制をかけることが可能になりかねない。これは、「風刺」を潰す作業です。体制批判を邪魔するやり方。
言論統制は、中国共産党政府の得意技。「日本共産党も、やはり共産党。中国共産党政府と似た様な方向に行くのか?」という疑念を持たれる。
日本共産党が、この疑念に対してどう答えるか?
ここも、支持を得るか・失うかの境目でしょう。
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理想を語るのは、素晴らしい。
ただ、「その理想が実現するのか?」という疑問に、説得力のある答えを返さねばならない。
「仮定の質問には答えない」というのは通用しません。それは答弁拒否です。政治家としての信用を失います。
次の衆院選で、日本共産党が勢力を伸ばすか否か。
それは、「公約達成の為の、現実的な手順」を示し、有権者に納得して貰えるかどうかにかかっている。
筆者は、そう考えています。
--------------(記事了)--------------