本日は、とある「軍事サスペンス映画」の紹介をば。
紹介する作品のタイトルは、『クリムゾン・タイド』です。
『クリムゾン・タイド』は、1995年のアメリカ映画。
潜水艦内での緊迫したヤリトリを描く、硬派なサスペンス映画です。
この映画の主要人物は、2人。
ひとりは、”頭脳明晰だが、まだ若い”という設定の潜水艦副長「ハンター少佐」。
もうひとりは、”経験豊富だが、頑固で融通が利かない”という立ち位置の潜水艦長「ラムジー大佐」。
この2人が、核ミサイルを巡る重大な決断を迫られ、バチバチの火花を散らす。これが『クリムゾン・タイド』の主要テーマであり、醍醐味でもあります。
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『クリムゾン・タイド』の内容をザックリ説明すると、以下の様なものになります。
▼物語の舞台は、20世紀末。太平洋にて潜航する潜水艦「アラバマ」の内部である。
▼ロシアで発生した紛争を切っ掛けに、反乱武装勢力が活発化。勢いに乗った武装勢力は、ロシア・ウラジオストク近隣にある核ミサイル基地を占拠した。
▼このままでは、暴走した武装勢力が、アメリカに核攻撃を仕掛けてくるかも知れない。アメリカ政府は、軍を臨戦態勢(戦争開始の一歩手前)に移行。核戦争前夜という、緊迫した情勢に突入してしまう。
▼この状況に際し、核ミサイルを搭載した潜水艦アラバマは、敵基地の近海に潜航していた。
▼艦を率いるのは、経験豊富な老将「ラムジー大佐」。それを補佐するのは、優秀な成績で学校を卒業した若き将校「ハンター少佐」。
▼両者は、長年仕事をしてきた間柄ではない。今回の任務が初顔合わせである。若きハンター少佐の方が「新入り副長」の立場であり、迎える艦長・ラムジー大佐は古参。
▼慣れない艦で、重要な任務に就く。ハンター少佐の緊張は、高まる一方であった。
▼作戦海域にて待機する、潜水艦アラバマ。と、本国から指令が。その内容は、「敵が、核ミサイルの発射体制に入った。先制攻撃して、ミサイル発射を阻止せよ」というもの。
▼事前の情報では、「反乱武装勢力は、ミサイルのセキュリティコードを解除できない」という話であったが、何らかの方法で解除したらしい。ミサイル発射を阻止するべく、一気に慌ただしくなる潜水艦内。
▼そんなアラバマに、本国から新規の命令が届く。「状況が変わったのか?」と、ラムジー大佐とハンター少佐は身構えた。
▼しかし、新規命令文を受信している最中に、アラバマは敵潜水艦からの攻撃を受けてしまう。この攻撃の影響で受信装置に不具合が生じ、アラバマは命令を最後まで受け取れなかった。
▼新たな命令は、一体何なのか。ひょっとして「アラバマからの攻撃を中止せよ」なのか。重要な部分が受信できておらず、はっきり判別できない・中途半端な電文しか届いていない。
▼この命令文を巡って、艦長と副長が対立。艦長は「直ちに発射すべき」と主張し、副長は「手間をかけても、何とか最後まで受信してから判断すべき」と主張。
▼艦長の意見を優先すれば、アメリカへの攻撃を防ぐことは可能だ。しかし、もし中止命令だった場合は、アラバマが戦争を引き起こすことになってしまう。
▼副長の意見を優先すれば、戦争を回避することが可能だ。しかし、もし発射を催促する命令だった場合は、アメリカ国内で多数の犠牲者が出る。
▼艦長と副長の対立は平行線のまま、他の乗組員をも巻き込んで「一触即発レベル」にまで発展。このままでは、艦内で発砲沙汰になりかねない。
▼この状況を前に、先に実力行使へと動いたのは…
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『クリムゾン・タイド』で描かれるのは、「命令に対する解釈の違い」と「解釈を巡る争い」です。
ただ、その対立背景には様々な事情が潜んでいます。
艦長のラムジー大佐は、強硬派(タカ派)。白人。豪胆で頼りにされる存在なのですが、細かいルールを無視する悪癖を持ちます。
副長のハンター少佐は、穏健派(ハト派)。黒人。石橋を叩いて渡るタイプですが、それ故に迅速さに欠ける傾向があります。
どちらも「自国を守る」という気概は同じ。
しかし、人種・経歴・思想…等々で、大きな違いがある。
この対立軸は、まるで「トランプvsバイデンの構図で繰り広げられた、昨年のアメリカ大統領選」を見る様な感じです。
『クリムゾン・タイド』は、サスペンス映画として観賞しても面白い映画です。
が、「現代アメリカの縮図」として見ても、なかなか興味深い。一粒で二度美味しい作品です。
興味のある方は、この機会に是非。
-----------------(記事了)-----------------