前回記事の続きになります。
テーマは、「各種選挙で、タレント候補や売名行為を減らすには、どうすればいいか?」
筆者の出した結論は、「立候補の条件に、ペーパーテストを加える」というものでした。
前回は、「何故テストが必要なのか?」について述べました。
今回は、どんなテストがいいのか、その具体的内容に触れていきます。
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先ずは、軽く復習&補足情報を。
日本で実施される選挙では、「立候補する為の条件」があります。どこの誰でも立候補できるワケではありません。
以下の総務省HPに、その要件が掲載されています。
www.soumu.go.jp(2021/9/20閲覧)
簡単にまとめると、立候補する為の条件は4つ。
(1)国籍や居住地
日本国籍を有していること。地方選挙においては、その地域の選挙権を有していること(住所や生活実態の有無等で判断される)。
(2)年齢
立候補できるのは、25歳以上か30歳以上。選挙の種類によって違います。
(3)選挙権を失っていないか
選挙権(投票する権利)は、18歳以上の日本国民に満遍なく与えられます。
しかし、「刑務所に入っている受刑者」や「一定の犯罪を犯した後、時間の経過していない者」等には、選挙権が与えられません。そういう人は、立候補もできません。
(4)供託金を支払えるか
選挙に出馬するには、「供託金」というお金が必要です。このお金は、「得票数が一定値に届かない場合は、没収される」というお金。目的は、「思い付きや冷やかしで選挙に出られても困るので、軽々しく出馬できない様にする」というもの。
金額は、選挙の種類によって違います。例えば、現在の「衆議院議員総選挙の小選挙区」では、一人当たり300万円が必要。
(※なお、このお金は「出馬する意思を示すもの」であり、ウグイス嬢の人件費等「他の選挙活動費」については、自腹で用意しなければなりません。)
現在の日本では、上記4条件を満たせば、正式に立候補できます。
筆者が提案するのは、上記4つの他に、「”政治に関する基本的知識”を問うペーパーテストを受けて、合格点をとる」という条件を加えてはどうか?…というものです。
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では、そのペーパーテストをやるとして、内容はどんなものにすればいいのか?
筆者の持つイメージは、「運転免許のペーパーテストを、少し難しくした様なもの」になりますね。
目的は、「最低限の知識すら勉強していない者を、門前払いする」というもの。冷やかし防止という意味で、供託金と方向性は似ています。
「知名度だけ」で勝負する者を排除し、「何も考えず、売名目的で立候補する」という悪行も減らす。これが第一目的です。
ポイントは、以下の5点。
(1)出題される内容と、難易度
(2)受験対象者と、受験頻度
(3)試験の実施方法
(4)成績の公開
(5)試験後に、問題と解答を一般公開
それぞれ、詳しく見てみましょう。
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(1)出題される内容と、難易度
基本的には、「法律の基礎」や「一般常識」を問うテストであり、「白黒がハッキリする設問」であること。
どっちが正解とも言えない・議論の分かれる問題や、現在進行形の問題は避けるべきです。(例えば、「日本は核武装すべき?」という問いは不適切)
法律問題は、「衆議院と参議院の違い」や「憲法と民法の違い」等、高校の公民や大学の一般教養レベルの、ごく簡単な法律問題で十分かつ適切だと考えます。「政治の事を、全く何も知らない」という候補を出さないなら、それでOK。
ただ、「政治に絡む犯罪」については、少々高度な問題を出してもいいかと。
例えば、公職選挙法違反の具体的事例。立候補するなら、選挙違反に関する知識は持っていないとマズイですからね。一般的には浸透していない知識でも、立候補者にとっては必須です。
一般常識問題は、「世界地図や日本地図を白抜きにして、国名や都道府県名を答える」「パソコンの基礎知識を問う」というレベルで十分。
今の日本は、「○○県が、どこにあるか分からん」とか「USBって何?」と仰る方が閣僚クラスに座るという、トンデモな状況が頻発していますからね。「政治の世界で普通に仕事するには、これ知っておかなきゃマズイでしょう」というレベルの問題でOK。
全体的イメージは、「行政書士試験」に準ずる程度が理想です。法律資格の中では、比較的簡単といわれているもので、司法試験よりも難易度は低い。
あまりに専門的すぎると、合格する人材の偏りが酷くなります。行政関連職に就いていない人でも、少々努力すれば身に付くレベルにしておかないとNGです。
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(2)受験対象者と、受験頻度
対象者は、立候補を考えている者、全員です。
現役の議員だろうが、新人候補だろうが、皆等しく受けて貰う。
受験資格は「立候補可能な者」か「その見込みのある者」に限られます。
日本国民でない者、若過ぎて選挙に出られないことがハッキリしている者(小学生等)、長期の受刑者などは試験を受けられない。
試験開催頻度は、年に1~2回くらいで十分。
選挙の度に試験をやるというのは…ちょっと難しいですね。議会には解散もあって、解散後に試験をやるのはスケジュール的に無理です。
また、合格結果には有効期限を設ける。これは必須。
世の中は変わるものです。「30年前に試験を受けて合格したから、再試験は不必要」というのを許せば、古臭い人間を残すことになります。刻々と変わる政治世界で良い仕事をしようと思えば、古臭いだけの人は邪魔です。故に、定期的に実力を見る必要があります。
「一度合格すれば、有効期限は4年間」等にする。多くの議会や首長は、任期が4年間に設定されていますので、それに合わせた形にするのが合理的でしょう。
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(3)試験の実施方法
答案は、記述式や論文式ではなく、白黒はっきりする択一方式がよいかと。
また、受験の様子は映像で記録し、可能であればネットのライブ配信等で生中継すればよい。不正防止に役立ちます。
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(4)成績の公開
試験に合格後、実際に立候補した場合は、成績を公開すること。これは必須。
成績は、総得点だけではなく、答案を全て公開すること。これにより、候補の得意分野・苦手分野が分かります。
有権者が候補を選択する際、参考資料になります。
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(5)問題と解答を、世間に広く公開
ネットや官報で、試験問題と解答を公開すること。これも必須。
問題のレベルを、国民が検証しないとダメです。特定政党や現役議員に有利な問題は、甚だ不適切です。
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これくらいのテストをすれば、「全く政治と関係ない人が立候補できる」という事態が減り、投票時に有権者が迷い難くなります。
また、定期的にテストを受けることで、「この人、長く政治家やっているけど、最近ボケてきたのでは?」という心配を払拭する効果もあります。
ペーパーテストも満足にできない人が、国家や自治体を動かす能力を持っている…とは思えないですし。
テストの内容は、行政の最前線からしたら「常識中の常識」といえるレベルです。ケアレスミスに気を付ければ、現役政治家は99%大丈夫な筈。
逆に言えば、「この程度の問題にも答えられない政治家は、政治家たる資格がない」となります。
怪しい候補を排除し、政治への理解を広めるには、こういうテストをやるべきだ。筆者はそう考えます。
選挙の質を上げる為に、是非とも検討して頂きたい。
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