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【昭和特撮の話】イデ隊員、空へ

先日、俳優の二瓶正也(にへい・まさなり)氏が亡くなりました。

ご冥福をお祈りいたします。

 

二瓶氏は、特撮ドラマを中心に活躍された方。

特に有名なのは、1966年放送の初代『ウルトラマン』にて、科学特捜隊のメカニックマン「イデ隊員」を演じたことですね。

www.nikkansports.com(20201/8/24)

1966年(昭41)にTBS系で放送された、人気特撮ドラマ「ウルトラマン」のイデ隊員で知られる、俳優の二瓶正也(にへい・まさなり)さん(本名二瓶正典=にへい・まさのり)が21日午前0時に誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなっていたことが24日、分かった。

80歳だった。

 

関係者によると、既に家族葬を執り行ったという。

https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202108240000810.html?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=nikkansports_ogpより。改行は筆者によるもの)

 

筆者は、レトロ系の特撮作品を好んで鑑賞します。

イデ隊員の姿は、何度も拝見しました。

 

イデ隊員は、科学特捜隊の中で最も「人間臭い」人物だと考えます。

ウルトラマンが怪獣を倒す姿を見て、
「ウルトラマンがいれば、地球の平和は守れるんじゃないか?」
「科学特捜隊も、自分の作った武器も、本当は不要なんじゃないか?」
と自問自答するイデ隊員。

バルタン星人に脅されてパニックになり、指示通りに移動してしまう気弱なイデ隊員。

 

正義の味方といえば、「信念を持ち、揺るぎない性格」という描かれ方が多いものです。しかし、そういう人物が実際にいるか?…といえば、なかなかいない。

他方、イデ隊員の様な「気弱な人物」は、現実世界で割とよく見る存在です。そこが何とも味わい深く、『ウルトラマン』の世界観を深いものにしています。

これも、二瓶氏が持つ演技力の為せる業。

 

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そんなイデ隊員が、かなり含蓄のある台詞を言い、「これ、本当に子供向け番組なのか?」という印象を視聴者に与えた話があります。

その話とは、『ウルトラマン』の第23話。

エピソードタイトルは、「故郷は地球」

ウルトラ怪獣の中で、最も気の毒な部類に分けられる「ジャミラ」が登場した話です。

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(※注意※)以下文章には、「故郷は地球」のネタバレになりかねない内容が含まれています。

初代『ウルトラマン』は、今から55年前の作品。ネタバレも何も…と仰る方は多いかもしれませんが、一応は注意喚起しておきます。

 

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「故郷は地球」で取り上げられたテーマは、いくつかあります。

その中で、最も業が深いといえるのは、「公務員の隠蔽体質を問いただした」というもの。

 

イデ隊員が所属する「科学特捜隊(科特隊)」は、数ある国際機関のひとつです。本部はフランス・パリにあるという設定。

その科特隊に対し、「他の公的組織によって起こされた不祥事を、発覚前に隠蔽せよ」という命令が出る話。それが第23話「故郷は地球」です。

子供番組で取り上げるネタとしては、強烈に重い話です。

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「故郷は地球」の粗筋を、物凄くザックリ書くと、以下の通り。

 

▼東京で開催される「国際平和会議」。その関係者が乗る飛行機や船が、次々と爆破されるという事件が起こっていた。科特隊が、事件の調査に乗り出す。

▼調べていくと、「何者かが高度な光学迷彩(透明化)を使って、飛行機や船に攻撃を仕掛けている」ということが判明。

▼科特隊のイデ隊員は、「光学迷彩を無効化する兵器」を開発。この兵器のおかげで、犯人の乗った宇宙船は撃墜された。

▼が、今度は宇宙船の中から、灰色の巨大怪獣が出現。科特隊が追撃するも、姿をくらませた。

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▼この巨大怪獣を見た、科特隊パリ本部の人物が驚きの声を上げる。「あれは、ジャミラだ」と。

▼どうやら、本部の人間は怪獣の正体を知っているらしい。イデ隊員を始めとする、科特隊日本支部の人間が問うと、本部の者は静かに語り始めた。

 

▼怪獣の正体は、「ジャミラ」という名の人間である。

▼ジャミラは、某国で秘密裏に行われた宇宙開発プロジェクトの犠牲者。事故が起きて死亡したと思われていたが、どうやら他の星に漂着して生きていたらしい。

▼ジャミラは、かなり過酷な環境に放り出されたのだろう。見た目は大きく変わり、怪獣化してしまった様子だ。

 

▼「十分な安全確保もなしで、人間を宇宙へ放り込んだのか!?」「人体実験じゃないか!」等という批判を恐れた某国上層部。自らの罪を隠すため、彼らは全てを闇に葬った。当然、ジャミラの捜索・救出活動は皆無。何もしなかったのである。

▼そんな扱いを受けても、自力で地球に返ってきたジャミラ。見た目だけでなく、心までも怪獣化してしまったジャミラには、「自分を見捨てた”人類”に対する復讐心」しか残っていなかった。故に、各国要人を乗せた飛行機や船を攻撃していたのである。

 

▼ジャミラの正体を聞いて、激しく動揺するイデ隊員。「俺たちも、いつジャミラみたいな目に遭うか分かったもんじゃない!」と言い、戦意喪失。戦いを放棄しようとする。そんなイデ隊員を説得する、日本支部のメンバー。

▼しかし、イデ隊員以外のメンバーも、どこかやりきれない気持ちでいるのだった。「俺たちの仕事は、地球の平和を守ることだ。ジャミラと戦うのは、使命だ」と頭では分かっているのだが、裏事情を知ってしまうと、どうにも納得できない。

 

▼動揺する科特隊日本支部メンバーに対し、本部の人間がこう告げる。

「ジャミラを、”単なる一匹の怪獣”として殺せ」
「裏事情を世間に知られる前に、何としても殺して隠蔽しろ」
「それが、平和会議を成功させる唯一の方法だ」

 

▼科特隊日本支部のメンバーは、本部の人間には逆らえない。仕方なくジャミラと戦うことにしたのだが…。

 

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「故郷は地球」は、二瓶氏が演じるイデ隊員の主役回。

イデ隊員の苦悩がメインとなる、『ウルトラマン』の傑作エピソードです。

 

普通に考えれば、ジャミラは被害者です。事実を隠蔽し、ジャミラを見殺しにした某国上層部が諸悪の根源。

それを知りながら、「国際平和会議」を成功させることだけを考えて、ジャミラの抹殺司令を出す科特隊本部。こちらも「正義の組織」と断言できる気がしない。割り切れないものを感じます。

現代にも通じる、社会の闇です。

 

正義と仕事との間で揺れ動く、人間臭いイデ隊員。

そのイデ隊員を、見事に演じた名優・二瓶氏。

彼の名は、末永く語り続けられることでしょう。

 

 

二瓶さん。お疲れ様でした。

ごゆっくりお休みくださいませ。

 

 

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