昨日、横浜市長選の投開票が実施されました。
結果は、新人で立憲民主党等の支援を受けた「山中竹春」氏の勝利。
www.asahi.com(2021/8/22)
www3.nhk.or.jp(2021/8/23)
横浜市長選は22日投開票され、新顔で元横浜市立大教授の山中竹春氏(48)=立憲民主推薦=が、新顔で元国家公安委員長の小此木八郎氏(56)や現職の林文子氏(75)らを破り、初当選を決めた。
林氏が進めた横浜港へのカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に「反対」を訴えており、誘致は中止される見通しだ。
投票率は49・05%(前回37・21%)だった。
(https://www.asahi.com/articles/ASP8Q4WB7P8NUTIL04G.htmlより。改行等は筆者によるもの)
先ず筆者が注目したのは、投票率ですね。前回に比べ、約12ポイント上昇しています。
「いかに有権者が関心を持っていたか?」の表れですね。良いことです。
投票率が高ければ高いほど、組織票の効果が薄れます。
組織票は、直接的利害関係者の思惑が反映し易い。故に、「ヘンテコ議員」や「明後日の方を向いた政策」が出現し易いのです。
直接的利害関係者とは、言うなれば「お得意様」です。
お得意に支えられるだけで、当選できてしまう…となれば、お得意の喜びそうなことばかりを優先させます。本当に必要な政策より、お得意先優先の政策が実施されるのです。これはよくない。
投票率が上昇すれば、上記の害を減らす方向に進みます。そういう意味では、今回の横浜市長選は良い結果になった…といえるでしょう。
ただ、今回選ばれた「山中竹春」氏が、市民の期待に応えるか否かは別問題。
厳しく見ていかねばなりませんね。
口先だけでは、リコール(解職)への道をまっしぐらですから。
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ところで…
今回の選挙結果に関し、最もヘコんだ利害関係者は誰か?
それは「自民党」と「菅総理」でしょう。
www.jiji.com(2021/8/23)
菅義偉首相の地元である横浜市の市長選で、首相自身が全面支援を打ち出した前国家公安委員長の小此木八郎氏が敗れ、政権に激震が走った。
衆院議員の任期満了まで残り2カ月。
9月の自民党総裁選に向けて「党の顔にならない」と交代を望む声が広がるのは必至だ。
自民党神奈川県連会長だった小此木氏は独自候補を立てられなかった責任を取るとして6月に閣僚を辞任し、市長選に出馬。
党が過去2回推薦した現職の林文子氏も名乗りを上げ、保守分裂となった。「菅派」市議も割れた。
「自主投票」で臨む党の立場を離れ、個人として小此木氏支援を公言した首相の対応は異例だ。
内閣支持率が低迷する中、お膝元で行われる重要選挙を制して反転攻勢に出たいとの思いもあったとみられる。
今月3日の党役員会で「総裁の立場にあるが、友情支援する」と宣言した。
小此木氏は首相がかつて秘書を務めた彦三郎元建設相の三男。
首相自ら地元有力者らに電話で支持を求めたといい、坂井副長官がビラ配りをした。
(https://www.jiji.com/jc/article?k=2021082200407&g=pol)
菅総理は、神奈川2区選出の議員です。
神奈川2区は、横浜市西区・南区・港南区で構成されています。横浜市は、菅総理の地盤なのです。
その地盤にて、特定候補に表立った援助・応援をしたけれど、その候補が落選した。これは、政治家として非常にマズイ。「影響力が低下している」と見做される光景ですからねぇ。
首相が応援した「小此木」氏は、先ごろまで「国家公安委員長」という重職にいた人。
その役職を辞めて、今回の市長選に出て落選。本人さんは「今後は、どの選挙にも立候補しない」と言っています。引退宣言に等しい。
ここまでの惨敗となれば、応援した側にも疑問の目が向けられますね。
特に、今年は大型選挙「衆院選」が実施されます。
2021年10月後半で「衆議院議員は全員任期切れ」になる為、嫌でも選挙をせねばならない。
その前哨戦ともいえる、今回の横浜市長選。惨敗の余波は大きい。
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もうひとつ、「自民党と菅総理への余波」という話で思いつくのは、「世襲制が通用しない結果に終わった」という点です。
世襲制とは、「先代が世継ぎを決め、権力を譲り渡すこと」です。
最もありがちなのは「親から子へ」という流れですが、近年は「先輩から後輩」「上司から部下」「親類から親類」という流れも多い。
この流れも、当記事冒頭で述べた「組織票」「直接的利害関係者」の話と同じことです。
身内で権力を囲って、自分達に都合のいいことばかりを考える。有権者の都合は二の次。故に、「ヘンテコ議員」や「明後日の方を向いた政策」の発生原因になり易い。
今の政治家は、世襲議員が多数。
世襲は、政治家サイドに都合がよい為、今後も何とか続けようとするでしょう。
今回の横浜市長選も、世襲の色が濃かった。「菅総理に近い部下」「菅総理が秘書を務めた者の息子」を、菅総理が推したのですから。
で、結果は敗北。
横浜市長選の結果は、「政治家が相手にするべきは、身内の都合ではなく世論」という点を体現したものです。
有権者の側からみれば、至極真っ当な話なんですけど…ねぇ。
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この「世襲制」に関しては、他の選挙でも通用しない事例が散見されます。
例えば、先の東京都議選。
かつて「都議会のドン」と呼ばれた自民党の重鎮、「内田茂」元都議の息子さんの「内田直之」氏が立候補しましたが、落選しています。
www.yomiuri.co.jp(2021/7/5)
昨今の情勢を見る限り、横浜市長選や東京都議選で起きた「世襲失敗」の事例は、増えて来るでしょう。
ただ、議員さんの方は「世襲する気マンマン」な人も多い。
www.asahi.com(2021/7/26)
www.jiji.com(2021/7/25)
今の政界を見るに、「いち市民の声を聞く気がない」「質問に答えず、ゴリ押す姿勢しか見えない」という政治家が多過ぎます。
その「聞かない・答えない政治家」が、世襲を画策すると…
これ以上は言いますまい。
まぁ、「いずれにいたしましても、適切かつスピード感を持って対処し、安全安心な状況を提供する」と仰る政治家さんばかりです。言行が一致しているならば、世襲も歓迎されるでしょう。
言行が一致している…ならば。
--------------(記事了)--------------