前回記事の続きになります。
テーマは、大人気漫画『キングダム』の展開について。特に「秦(しん)の六大将軍」に注目した内容になっています。
本題に入る前に、注意事項をば。
当記事は、前回記事と同じく、「未だ単行本になっていない・割と最近の内容」に触れるものです。「雑誌連載は追いかけておらず、単行本派である」という方にとっては、ネタバレになる恐れがあります。
また、「史実から物語の展開を推理する」という内容も含まれます。
『キングダム』は、実際の歴史を下敷きにしたエンタメ作品です。故に、史実を知ることがネタバレと言えなくもない。
上記の点を了承して頂いたうえで、読み進めて下さいませ。
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では、本題に。
前回記事の最後で、筆者はこう述べました。
現在の六大将軍は、
・蒙武(もうぶ)
・騰(とう)
・王翦(おうせん)
・楊端和(ようたんわ)
・桓騎(かんき)
・現時点で該当者ナシ。保留枠
この状況。
しかし、このメンバーのまま、保留枠に1人加わって終わり…ではない。最終的には、
・蒙武
・騰
・王翦
・李信(りしん)
・王賁(おうほん)
・蒙恬(もうてん)
以上の面子になるだろう…と。
つまり、楊端和と桓騎が抜け、李信・王賁・蒙恬が任命される。
筆者は、こう予想しています。
なぜそう言えるのか?
その理由を、順番に述べていきましょう。
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『キングダム』は、『史記』という歴史書を参考に描かれています。
この『史記』。めちゃくちゃ有名な書物です。
学校の授業でも、まず間違いなく触れる筈。歴史だけでなく、国語(特に漢文)の授業で目にする教材です。
作者は「司馬遷(しばせん)」という「漢」の時代の人物。『キングダム』の時代から数えて、約100年後に活躍した方です。
『キングダム』の展開や結末は、『史記』を読めば大体分かります。
ただ、『史記』が現代の歴史書に比べてスカスカな書物ですので、独自解釈を挟むことは容易。その独自解釈こそ、『キングダム』が高い人気を誇る秘訣です。
例えば、主人公の李信。
どこで生まれてどこで死んだのか、『史記』には明記されていない。いくつかの戦いで勝っただの・負けただの…が記されている程度。
それ故、様々な独自設定を混ぜ込むことが可能です。
が、あまりに突飛な要素を入れると、歴史ドラマではなくファンタジーになってしまう。
独自設定と、『史記』で語られる史実との混ぜ具合・バランスが大事。
『キングダム』作者の「原泰久」氏は、「史実と独自設定の配合」を非常に上手く行っていらっしゃいます。
故に、作品の人気が高いのです。
この「史実と独自設定の配合」について考えると、今後の『キングダム』の展開が見えてきて、「六大将軍の最終フォーメーション」の予測も可能となります。
では、史実と独自設定のバランスから考える、今後の『キングダム』と「六大将軍」の姿はどんなものか?
それを導き出すポイントは、以下の3つです。
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(1)楊端和の独自設定
史実で伝わる楊端和は、秦の武将の一人。いくつかの戦いで活躍したという記載がありますが、それ以上でもそれ以下でもない。
しかし、『キングダム』の楊端和は、「異民族の長」「無双の強さを誇る女王」「かなりの美人」という、濃いキャラ設定。
「秦の武将」というより、「異国の王であり、秦の同盟者」という描かれ方です。
つまり、楊端和は「秦に従う者」ではなく、「秦に協力する者」。
故に、秦の命令系統から外れる権限を持っているといえます。
その証拠に、コミックス53巻で敵国の城を落とした時、秦中央の意思を確認することもなく、相手に「自治権を与える」と約束しています。
その後、楊端和が罰せられることはなかった。楊端和の意志が通ったと考えるのが妥当です。
『キングダム』の楊端和は、あくまで「異民族の長」。優先するのは、自国の都合。
秦の六大将軍というシステムに収まらない存在なのです。
したがって、「自国の都合により、六大将軍を辞退」となっても、全く不思議ではない。
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(2)桓騎の脱落
六大将軍の一人である「桓騎」。
『キングダム』では、「元は大盗賊団の頭領だった」という異色の経歴を持つ者として描かれています。
その経歴から、型にはまらない独自の戦術思考を獲得し、類まれなる残忍さを発揮する…というキャラ設定。ハッキリ言って、悪役の立ち位置です。
主人公の李信とは、相性最悪。
この桓騎。史実によると、今後「処刑レベルの大敗」をやらかします。
「戦いで討ち死にした」という説もアリ。
物語を史実に沿わせるとなれば、最も脱落しなければならない武将です。
楊端和が抜ければ、ポストがひとつ空きます。
桓騎が負けて消え、更に空席がひとつ。
そして、元々あった空席がひとつ。
こうして空いた席に、李信・王賁・蒙恬の3名が就任。物語の展開としては、最も綺麗な流れです。
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(3)李信・王賁・蒙恬の、三将軍連合戦
更に言えば…
『キングダム』で描かれるであろう最終決戦のメインキャラが、李信・王賁・蒙恬の3名なのです。
主人公達の国「秦」。
秦が中華を統一するには、他の6つの国を平定しなければなりません。
敵国が6つであるが故に、「六大将軍」の制度が必要という流れ。
この6国は、一気に滅亡するのではなく、ひとつ・またひとつ…と順番に平定されていきます。
その「最後の国」を攻めたとされるのが、李信・王賁・蒙恬の三将軍。『史記』に記述があります。
この戦いは、物語のクライマックス。締めとなるイベントです。
そこに登場する李信・王賁・蒙恬の三人が「一般将校」では、盛り上がりに欠けます。強大な権限を与えられた「六大将軍」のポジションで登場した方がよい。
史実と独自設定のバランスを考えると、最も綺麗で盛り上がる設定といえます。
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上記の様な理由から、筆者の考える「秦の六大将軍」の最終フォーメーションは、
・蒙武
・騰
・王翦
・李信
・王賁
・蒙恬
この6名と結論付けます。
こうやって予想するのも、『キングダム』の楽しみ方のひとつです。
しかし…
恐るべきは、予想可能な題材を使っているのに、それでも予想外の展開を仕掛けてくる作者・原先生の手腕。
『キングダム』の人気ぶりが凄いのも、この手腕の為せる業でしょう。
現在、『キングダム』のコミックスは61巻まで発売中。
『史記』の内容から推察するに、『キングダム』が完結するのは…コミックス100巻を軽く超えそうです。200巻くらいに達してもおかしくない。まだまだ見所は多い筈。
今後の展開に、更に期待です。
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