先日、SF作品の科学的考察本『空想科学読本』について、記事を書かせて頂きました。
この本はシリーズ化され、現在でも新刊が発行され続けています。
第1巻が初めて世に出たのは、1996年のこと。25年も愛され続ける、息の長いシリーズ本です。
筆者も、このシリーズを好んで読んでいます。
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で、この『空想科学読本』ですが…実は、兄弟分ともいえる本が存在します。
パクリとか真似っこではなく、「兄弟分」です。
その本のタイトルは、『空想歴史読本』。当記事では、この本について触れていきます。
『空想歴史読本』は、1999年初出の書籍。
著者は「円道祥之」氏です。
この円道氏。『空想科学読本』の著者「柳田理科雄」氏とは顔馴染み。
両者の対談を軸にした、『空想科学論争』という本も出ています。柳田氏と同じく、SF世界に関して独自の視点をお持ちの方です。
ただ、両者の大きな違いは、
「柳田氏が理系担当で、円道氏は文系担当である」
という点です。
円道氏の著作『空想歴史読本』は、SFを中心とするフィクションの世界を、歴史的視点から分析した本。SF世界のメカニズムを、科学的見地から分析した『空想科学読本』とは、ひと味もふた味も違います。
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SFを中心とするフィクションの世界を、歴史的視点から分析した本。
上記文章で、『空想歴史読本』の特徴をこう表現しました。
これは、一体どういう意味か?
SF作品は、世に数多あります。
それぞれの作品は、独立した世界観を持っています。当然、「その世界で起こった歴史的事実」も違う。現実の歴史とも違うし、他作品の語る歴史とも違う。
例えば、「聖徳太子は、巨大ロボットを作っていた」と語る特撮作品があります。現実にはそんな話は無いのですが、劇中ではその巨大ロボが復活し、活躍します。『世界忍者戦ジライヤ』という作品内での話。
例えば、「第二次世界大戦の末期、日本軍は”リモコン操縦可能な、鋼鉄製の戦闘ロボ”を完成させた」とする特撮作品があります。言うまでもなく『鉄人28号』の話。
例えば、「1974年に、地殻変動によって、日本全土が海へ沈む」とした特撮作品があります。初代『日本沈没』の話。
この様に、様々な作品で、独自の歴史展開が描かれるのですが…
多くの作品を見てみると、不思議なことに共通点が見えてくるのです。
その手の共通点をまとめているのが、『空想歴史読本』の大きな特徴。
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なぜ、こんな共通点が生まれて来るのか?
作者も・内容も・媒体も全く違う、数多のSF作品群。それらの歴史観に、奇妙な共通点があるのは何故?
著者・円道氏の見解によると、その理由はコレ。
「フィクション作品を作るのは、結局のところ人間。その人間の中に、何かしらの歴史的共通認識があって、それが作品に反映されるからではないだろうか」
なかなか興味深い結論です。
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『空想歴史読本』は、非常に面白い本です。
ただ、「1999年に出版された後、続編の話を聞かない」という状況が惜しまれます。
筆者は、続編が出たという話を聞いたことはありません。
「Amazon」等の主要通販サイトや、「KADOKAWA」「扶桑社」等の書籍検索にも引っかからない。制作に深く関わった「空想科学研究所」のページにも、全く情報が無い。
どうやら、1冊だけ出て、そこで止まっている模様です。
『空想歴史読本』が世に出て、20年以上経過しました。
SF作品の数は、20年前よりずっと増えています。リアル世界の歴史も大きく進み、ネタは増えている筈。
いちファンとしては、ボチボチ続編を出して頂きたいところです。円道先生、続編を期待しております。
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