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【動物殺処分の話】「悩んだ末」であることは、理解した方がいいでしょう

先日、物議を醸すニュースが報じられていました。

それは、「盛岡市の動物園が、ウサギ(カイウサギ)を15匹、殺処分した」というもの。

moriokazoo.org(2021/4/12閲覧)

 

盛岡市動物公園「ZOOMO(ズーモ)」が、飼育していたカイウサギ全15匹を安楽死させたことが分かった。

数匹に慢性鼻炎を引き起こすパスツレラ症の症状がみられた。

感染防止のためだが、重症化していない個体も含まれていたため、市民などから賛否の声が上がっている。


同園によると、カイウサギは子供動物園で飼育されていたもので、昨年11月中旬から数匹に、くしゃみや鼻水などの症状が見られるようになった。

園では、パスツレラ症への感染を疑い、全てのカイウサギに抗生剤を注射したほか、獣舎の消毒などの対策をとった。

しかし、症状はほかの個体にも広がった。

 

園では1匹ずつ隔離したケージで飼育する方法も検討した。

しかし「飼育場所を移すと、感染を広げる恐れがある」「QOL(生活の質)が低下し、カイウサギにとって苦痛となる」などとして、治療を継続せず、全15匹を安楽死させることを決めた。

23日に公式ホームページやツイッターで公表したところ、「動物の命を何だと思っているのか」といった批判や、「苦肉の策だったと思う」など理解を示す意見が相次いだ。

 

市は昨年、動物の習性に沿った飼育環境を目指す「アニマルウェルフェア(動物福祉)」を重視する、新たな園の運営方針を明らかにした。

同園では、動物の安楽死について、〈1〉治療を行っても回復が見込めない〈2〉生活の質が低下したままである〈3〉症状の進行により苦痛を伴う――という三つの基準を元に判断しており、「基準に従って、園内で何度も話し合い判断した」としている。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210329-OYT1T50211/より。改行は筆者によるもの)(2021/3/30)

 

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今回問題になった「パスツレラ症」とは、人獣共通感染症のひとつ。狂犬病等と同じく、人も獣も感染する病気です。

ただ、狂犬病ほど深刻なものではない。狂犬病は、発症すればほぼ100%死に至る病気です。パスツレラ症は、そこまでのものではない。

www.city.yokohama.lg.jp(2021/4/12閲覧)

近年、日本ではパスツレラ症(pasteurellosis)の患者発生が増えています。

犬や猫に咬まれて感染する感染症としては、患者数が多いものの一つだと考えられています。

 

パスツレラ症(pasteurellosis)は、人と動物の共通感染症の一つです。

豚のパスツレラ症として、萎縮性鼻炎、肺炎、多発性関節炎などがあります。

牛のパスツレラ症として、出血性敗血症があります。

鳥のパスツレラ症として、家禽コレラがあります。

ウサギのパスツレラ症として、鼻炎(スナッフル: snuffles)、肺炎、中耳炎、結膜炎、敗血症などがあります。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/kansen-center/shikkan/ha/pasteurella1.html#:~:text=%E3%83%91%E3%82%B9%E3%83%84%E3%83%AC%E3%83%A9%E7%97%87%EF%BC%88pasteurellosis%EF%BC%89%E3%81%AF%E3%80%81,%E5%87%BA%E8%A1%80%E6%80%A7%E6%95%97%E8%A1%80%E7%97%87%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 

上記説明を見るに、パスツレラ症は「鼻炎から敗血症に至るまで、様々な症状がある病気」と分かります。

敗血症は危険ですね。適切な処置をしないと、死にます。

 

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今回の殺処分問題。賛否両論アリ。

動物園の対応に賛成する方からは、「園も一生懸命にやった」「管理コストは無尽蔵ではない為、やむを得ない」という意見が多い。

動物園の対応に反対する方からは、「他の方法はなかったのか」「動物の命を何だと思っている」という意見が多い。

 

この議論を続けていると、「動物園の是非」にまで話題が及びます。

それを論じ始めると、とてもひと記事には収まらない。本が数冊は書けるレベル。

よって、当記事で主張するのは、ただ一点だけとします。

 

それは、「動物園サイドの苦労は、年単位であった」というもの。

特に反対派の方は、この話に触れた様子が少ない。中には、「動物園は、思い付きで殺した」的な感覚で、怒っている人もいます。

そんな方には、以下のPDF文章を読んで貰いたいです。動物園側の苦悩が伝わってきます。

(参考:盛岡市動物園「カイウサギの安楽死について」2021/3/29)

 

上記文章のポイントを、筆者なりにまとめると、以下の通り。

 

◆症状が出たのは、令和元年(2019年)5月くらいから。

◆獣医師の診察を経て、「症状の出た個体の隔離」「症状の出た個体に対し、抗生剤を投与する」等の方法を試みるも、完全に蔓延は止まらず。

◆その為、症状が出ていない個体にも、予防的に抗生剤を投与した。結果、2019年12月あたりで、蔓延は収まった。

 

◆1年後の2020年11月。再び蔓延がみられた。

◆前回と同様の処置を施したが、今回はそれで止まらず。園内の全個体に症状が出た。

◆園内で会議を重ねた結果、「獣医による安楽死」を決断。

◆実行後、「隠すのはよくない」として、批判覚悟で情報公開。論争に至る。

 

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上記内容から、現場の苦悩が伝わってきます。

 

「面倒だから殺処分」みたいな無責任・いい加減さは、感じない。

「里親を探せばいい」という意見も採用しなかった。なぜなら、病気になっている個体を、厄介払いに近い形で放逐するのと同じだから。

公にしなければ、当面の炎上は避けられたのかもしれません。しかし、動物園側は正直に告白し、再発防止に努めると表明した。

 

動物の命が、寿命以外の理由で消えてしまった。これは悲しいことであり、違和感を感じて声を上げる人がいても、変なことではありません。

が、当事者の苦悩を理解するのも、怒るのと同等以上に重要です。事の背景を理解しなければ、見えるものも見えてこない場合がある。

 

物事を一面的に捉えるのではなく、様々な角度から見る必要がある。これは、動物の殺処分に限らず、どんな問題に対しても通用します。

怒る前に、ちょっとだけ立ち止まって、情報収集と分析に努める。これが大切です。

 

 

--------------(記事了)--------------

 

 

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