先日、アメリカの探査機が、火星に着陸しました。
探査機の名前は、「パーサビアランス」です。意味は「忍耐」。
www.afpbb.com(2021/2/19)
パーサビアランスは、火星の土壌サンプルを持ち帰る予定です。
もし成功すれば、「火星の土を持って帰ってきた、初めてのケース」となります。ワクワクしますね。
「今世紀中に、火星へ人類を送る」という計画が進行中の昨今。
火星の土壌サンプルは、重要な資料となることでしょう。
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他惑星への移住。この話をテーマにした映画作品は、数多くあります。
そんな数多ある作品の中で、なかなか興味深い切り口の映画作品があります。当記事では、その作品をご紹介します。
作品のタイトルは、『パッセンジャー』です。
『パッセンジャー』は、2016年のアメリカ映画です。
パッセンジャー(passenger)とは、日本語で「乗客」のこと。
そのタイトルの通り、「宇宙船に乗り込んだ乗客」が主人公の物語になっています。
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『パッセンジャー』の冒頭ストーリーは、以下の様なものです。
▼物語の舞台は、未来世界。太陽系内の惑星間移住どころか、他恒星系への移住も可能になった時代の話である。
▼一隻の巨大宇宙船が、大勢の乗客を乗せて宇宙を航行していた。船の名は「アヴァロン号」。目的地は、地球からはるか離れた未開の惑星である。
▼アヴァロン号が地球を出発してから目的地に着くまでの時間は、120年。超長期間の航海となる為、乗員乗客の全員がコールドスリープ(冷凍睡眠)処置を施され、仮死状態で眠っていた。
▼乗員(船の乗組員)も眠りにつくので、アヴァロン号は完全自動制御で航行。強力なシールド(エネルギーバリア)を装備し、隕石程度はハネ返す。船内のメンテナンスはロボットが行い、120年間の航海も余裕でこなせる。そんな超高スペックの豪華宇宙船アヴァロン号は、順調に航海を進めていた。
▼しかし、アヴァロン号の内部で、予想外の事態が発生する。
▼乗客の一人である「機械技師のジム」が、到着予定日より90年も早く目覚めてしまったのである。目を覚ましたのは、ジムだけ。他の乗員乗客は、皆眠っている。
▼混乱したジムは、様々な方法で状況の改善を試みる。アヴァロン号を制御するAI(人工知能)に問い合わせたり、宇宙船の乗組員に接触を図ったり、地球へメッセージを送ってみたり…等々。だが、どの方法も空振り。状況は変わらなかった。
▼再び冷凍睡眠状態に入ることも不可能。このままでは、他の皆が目覚める前に、寿命で死ぬ羽目になる。絶望するジム。
▼「こうなったらヤケだ。この生活を満喫してやる」
開き直ったジムは、スイートルームをこじ開けて無断利用。船内の娯楽施設を使い倒し、豪華宇宙船を独り占めする生活を送り始めた。
▼だが、それも1年ほどしか続かなかった。会話する相手は、「男の接客ロボット」だけの生活。孤独に押しつぶされていくジム。
▼そんなジムは、ある誘惑と必死に戦っていた。それは、「もう一人、冷凍睡眠から強制的に目覚めた者がいたら、自分はひとりではなくなる。孤独から抜け出せる」という誘惑。
▼冷凍睡眠装置については、散々調査したジム。再び眠りにつく方法は無いが、機械を誤作動させて強制起床させる方法は知っている。
▼しかし、誰かを強制的に目覚めさせるということは、その者も自分と同じく「目的地に着く前に、寿命で死ぬ」という運命を辿ることになってしまう。
▼「自分の孤独を癒すために、他人の人生を台無しにしていいのか?」
思い悩み、誘惑を押さえ続けていたジムであったが…。
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『パッセンジャー』は、SF・ラブロマンス・ヒューマン・パニック…等々、様々な要素を詰め込んだ映画です。
中でも、筆者が注目するのは、「格差社会」を描いているという点。
アヴァロン号の乗客には、身分の差があります。割り当てられる部屋の豪華さ、食事内容、その他にも色々な面で違いがあります。
この状況、「SF映画の中の話」と切って捨てるのは困難。あり得る話です。
今世紀中に、人類が太陽系内の惑星へ移住するという光景は、現実のものとなる可能性が高い。その時までに、格差社会が解消されているか…?
作品内では、さほど重要なテーマとして扱われていませんが…この要素は、意外に重厚なものです。
また、「安全神話」に疑問を投げかけている点も、注目すべきポイントかと。
そもそも、なぜジムは予定より90年も早く目覚めたのか?
これには、ちゃんとした理由がありました。あまり書くとネタバレになってしまうのですが、「完璧と思われたシステムに、結構な穴があった」という様子が描かれており、なかなか興味深い。
これも、現代社会で問題視されている点です。SF世界の夢物語ではない。
SF作品ではあるんだけれども、近い将来に現実化しそうな要素を持つ『パッセンジャー』。
興味のある方は、この機会に是非ご覧くださいませ。
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