先日、以下の記事を書かせて頂きました。
記事の内容は、「日本政府の言葉を信用しない人が、ますます増えてきた」というものです。
近年、度々行われる演説や記者会見で、「仮定の質問には答えない」という姿勢を貫く政府関係者が増えています。
これに、新型コロナウイルス騒動に対する「後手後手の鈍足対応」が乗っかって、「仮定の質問に答えないのではなく、答える能力が無いのでは?」との疑念が多発。
言葉と行動の両方が、あまり信用されていない。
これは、かなりマズイ状況です。誰も言うこと聞かなくなる前兆です。
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この「仮定の話には答えない」という姿勢。
これに匹敵するレベルの「マズイ表現」は、他にもあります。
それは「誤解を招いたなら申し訳ない」という言葉。
www.sankei.com(2021/1/12)
西村康稔経済再生担当相は12日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い首都圏4都県に発令した緊急事態宣言をめぐり
「誤解もあるが、昼間も含め外出自粛をお願いしている。
特に午後8時以降の外出自粛をお願いしているが、昼食はみんなと一緒に食べてもリスクが低いということではない」
と述べ、昼間も外出を自粛するよう呼びかけた。
(https://www.sankei.com/politics/news/210112/plt2101120041-n1.htmlより。改行は筆者によるもの)
「誤解を招いたとすれば」という表現。この言葉は、かなり上から目線の言葉です。
一見すると丁寧な感じですが、「俺の言葉を理解できなかった、お前らが悪い」と言っているに等しい。
記者会見や演説において重要なことは、「聞き手が理解すること」です。
聞き手に意図が伝わっていないのに「誤解」と言い切ると、聞いている側が腹を立てる場合も多い。
政治家や官僚の方は、スピーチの勉強をされている筈。
大抵のスピーチ教本・教科書には、「スピーチは、相手に理解して貰うことを最優先に考えなさい」と書いてあります。
その基本を無視して、聞き手の誤解と言い切る。これは非常にマズイ。
確かに、誤解を受けることもあるでしょう。そうであれば、質疑応答で真意を伝えればいい。
が、最近の政治家は、「会見時間が短い」「事前に質問を提出させる」「再質問禁止」という型式を採りたがります。これは、「いかに都合の悪い質問を避けるか」ということばかりを考えている。そういう風にしか思えない。
これでは、更なる誤解を招いて当然。聞く相手(視聴者)が誤解するのではなく、政治家が誤解を発生させる下地を作っているのです。
自分(政治家)が悪いのに、相手(聞き手)のせいにしている。
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上記と同じ理由で、「小難しいカタカナ語」や「一般的ではない専門用語」を多用するもマズイ。どうしても使わねばならない場合は、分かり易い解説をつけまくることが必須。
また、「イエスかノーか」で答えられる質問に、イエス・ノー以外の答えを返すのもマズイ。
これらも、スピーチの基本である「相手に伝え、分かって貰う」という目的から離れたものです。分かり難い。
記者会見などの場で質問するのは、主に新聞・雑誌・テレビ・ネットメディア等の記者さん達です。
が、その背後には一般視聴者がいます。
分かり難い演説を放ち、記者の質問にマトモな回答を出さないのであれば、一般視聴者を粗末にしたのと同じ。
最近は、新型コロナウイルス関連の話が多く、連日連夜「政治家や担当役所の記者会見」が行われています。テレビ・ネット・ラジオ等で、その様子が流れることも多い。
特にネットでは、記者会見を丸々生中継したり、動画サイトで後からチェックすることも可能。以前より、記者会見に対する見方が厳しくなっています。
にもかかわらず、どんどん会見内容が粗末になっていく。これでは不信が増すばかり。
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先に申し上げましたが、「演説・スピーチは、相手に分かって貰ってナンボ」なのです。
”やってます感”を出す為、アリバイ作りで行うものではない。そういう会見は、時間の無駄です。それどころか、一般視聴者のイライラに火をつける材料になります。
政治家や役人は、言葉が命であり、商売道具です。
言葉の意味を理解して貰い、スピーチの内容を確実に伝え、話し手が期待した行動を聞き手に促す。これが演説の目的である筈。
聞き手が行動しなければ、それは話し手のスキル不足。それくらいに思った方がいいのです。今の政治家や役人が行う会見には、その気概が著しく欠けたものが増えています。
聞き手も馬鹿じゃありません。勉強している人は多い。ただ単に、政治家に反発したり煽ったり…という人ばかりではないのです。
そういう「勉強している人」ほど、政府の分かり難い説明に怒るのです。なぜなら、政府の言いたいことが分かる為、「もっと簡単な言い方があるだろう!」と気付くから。
状況がよく分からない人。色々としっかり理解している人。世の中には様々な人がいますが…
最近の政府広報は、「様々な人を怒らせる」という方向で記者会見をやっている。そういう風にしか見えない。これでは、問題解決どころか、深刻化の一途を辿るでしょう。
人は、言葉でモノを考え、行動します。
言葉が分かり難ければ、行動結果も何だかよく分からないものになるのです。
言葉を粗末にする者は、仕事を粗末にする者であり、相手の生活をも粗末にする者なのです。
--------------(記事了)--------------