筆者は関西人です。
それ故、関西の話題に触れることが多く、他地域の方よりも関西に詳しいと考えています。
しかし、そんな筆者でも、答えに窮する質問があります。
他地域にいる知人から、頻繁にきかれるのですが…残念ながら「相手を完全に納得させる回答」を、持ち合わせていない。
恐らくは、その筋の専門家の皆さんも、筆者へ寄せられる質問と同じ様な問いを投げかけられ、答えに困っているのではないか?…そう推察します。
その問いとは、新型コロナウイルス騒動に関するもの。内容は、
「大阪や兵庫は、感染者が増えて大変。しかし、京都がそれほどでもないのは何故?」
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この疑問。京都新聞紙上でも取り上げられていました。
www.kyoto-np.co.jp(2020/12/4)
全国的に新型コロナウイルスの感染拡大が加速している中、「なぜ京都の感染者数は少ないのか」との声が、京都新聞社の双方型報道「読者に応える」に複数寄せられている。
大勢の観光客が全国から訪れているにも関わらず、近隣の大阪府や兵庫県と比べても現時点で京都府は急激な感染増加に至っていない。
対策に当たる自治体や医療関係者らに考えられる理由を聞いてみた。
2日までの1週間合計で大阪府は2560人、兵庫県は845人の感染が確認されている。京都府は162人だった。
人口千人当たりに換算すると大阪0・290人、兵庫0・155人、京都0・063人となり、現状では京都の感染は一定のところで抑えられているとも言える。
京都府の幹部は理由の一つに繁華街の違いを挙げる。
「感染リスクの高い接待を伴う飲食店などが多い大阪市のミナミ、キタや東京の歌舞伎町、札幌市のススキノに比べると、京都の繁華街は店舗の集中や規模が小さい」
という。
(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/433724?page=2より。改行は筆者によるもの)
上記引用部分では、京都府の幹部職員さんから回答を得ています。
それによると、「京都の繁華街は店舗の集中や規模が小さい」というのが理由だそうで。
確かに、そういう面はあります。
京都市は百万人規模の都市。そこの繁華街といえば、「祇園」や「四条河原町」近辺が思い浮かびます。コロナ騒動前には、筆者も訪れた経験アリ。
その手の地域は、建物が密集してはいるものの、大阪の繁華街に比べれば大人しい。京都には景観条例が存在し、大きな建造物が建て難いという側面もあり、一度に収容できる人数は少なめ。
「混雑する繁華街では、人と人との距離が近くなる」というのは、各地域の繁華街で見られる光景です。が、京都はそもそもの規模が小さい為、密集の程度や範囲も緩め。見渡す限りの混雑が延々続く…とはなり難い。
また、その手の繁華街は「観光客用」と見なされている雰囲気が強く、お値段が高い店も多い。その為、多数の地元民が熱心に通うというのは…ちょっと困難でしょう。
地元民の出入りが少なければ、地元民による感染拡大も少なくて済む。
そこそこ納得できる理屈…ではあります。
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では、医学的側面はどうか?
関西以外の地域から、「PCR検査数を、意図的に減らしているだけなのでは?」という意見も寄せられることがありますが…。
京都新聞によれば、「意図的に検査数を絞っているワケではない」とのこと。
感染者をキャッチするPCR検査の件数は十分なのか。
京都府は11月25日~12月1日の1週間平均で1日当たり641件。
同時期の大阪府は4257件、兵庫県が1460件だった。
人口の違いを加味して比較すると、京都府の検査数は感染拡大が著しい大阪府に比べて2分の1の割合だが、兵庫県とは同程度で必ずしも少なくはない。
(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/433724?page=2)
京都府のPCR検査数は、他府県に比べて少ない。
しかし、人口比で見れば、それほど少ないとも言えない。
同じ程度の比率で検査を実施している兵庫では、かなりの感染者数が出ています。が、京都ではそうでもない。
検査数と感染規模とが、完全イコールではなさそう。
まぁ、京都には京大病院や京都府立医大病院など、全国ニュースでも報じられる有名な医療機関が存在します。
ここが音頭取りになって、感染対策をやっている。その影響もあって、感染拡大ペースが落ちている。そういう解釈もアリ。
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そして、京都新聞には書いてありませんが…
「大阪や兵庫(特に神戸近辺)とは違う、京都府の事情」がひとつありまして、その事情が影響し、京都府の感染拡大ペースが遅いという状況になっている。筆者はそう考えています。
その事情とは、「京都府は広く、過疎化が進んでいる自治体が多い」というもの。
そもそも総人口が少ない為、感染人数で見れば、拡大ペースが遅い。至極単純な理由ではないかと。
では、具体的にどの程度違うのか?
大阪府の状況と、比較してみましょう。
先ずは人口。
2020年11月1日付・国勢調査結果によると、京都府の人口は約257万人。対する大阪府は、約882万人。その差、約3倍。
次いで、人口密度。
京都府の面積は、約4600平方キロメートル。対する大阪府は、約1900平方キロメートル。
人口と面積から計算して、1平方キロメートル当たりの単純な人口密度を求めると…
京都府は約550人。大阪府は約4600人。約9倍の差があります。
これだけギュウギュウだと、大阪府の感染拡大ペースが速くても不思議ではありません。逆に、京都府は大阪府ほどギュウギュウではない為、大阪府より感染拡大ペースが遅くても不思議ではありません。
また、京都府の人口は、京都市に大半が集中しており、他の地域はさほどでもない。
いや、さほどでもないを超えて、結構な田舎が多い。JR嵯峨野線に乗って北上した場合、嵐山を超えた辺りから、急に風景が変わります。
京都駅から、普通電車に乗って20分も走れば、のどかな田園風景が存在しているのです。これは、大阪府ではなかなか見られない光景です。
のどかな地域は、都市部ほどの密集は発生し難い。
www.youtube.com(2016/10/15)
また、「京都市」と一言で表現しても、実際はかなり広い。
市内北部には、普通に山林が存在しています。しかも広大。「市内のどこを見渡しても市街地&繁華街だらけ」ではない。
いわゆる「密」の状態からは、かなり離れた側面があります。
この様な事情が重なって、大阪や兵庫に比べれば、感染者数が少ないのではないか?
筆者は、そう考えます。
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但し…
仮に、筆者の推測が正しかったとしても、油断してはいけません。
「京都市内でクラスターが発生した」という話はあります。人口密度が低めだからといって、甘く見てはいけない。
www.kyoto-np.co.jp(2020/11/18)
今までは大丈夫でも、これからも大丈夫というわけではない。
手洗いやマスクの習慣を忘れず、感染予防に努めるのが肝要です。
これは、世界全土・どこでも言える話。
--------------(記事了)--------------