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【大阪府知事の話】言いたいことは分かるが、燃えやすい下地に注意すべき(後編)

前回の続きになります。

記事のテーマは、「大阪府の吉村知事が、かなり燃えやすい方になった」という話。

tenamaka26.hatenablog.com

 

ツイッター上に出現した「トリアージ吉村」というトレンドワード。何の事かと調べてみれば…

大阪府の吉村知事が、新型コロナウイルス対策について述べた際、「トリアージ」という単語を発して炎上。その流れでツイッターにトレンドとして出現したのです。

hbol.jp(2020/11/23)

www.sankei.com(2020/11/19)

 

「トリアージ」とは、一般的理解では…

◆大規模災害等の異常事態で患者が激増し、
◆受け入れ側の病院がパンクしてしまった時、
◆全ての患者を順番に診察していたのでは「手遅れ」が発生するので、
◆短時間で患者の治療順を決めて治療に当たり、救命人数を増やす。

この様な「患者の優先順位を決めること」とされています。

これは、裏返せば「助からないと分かった患者の治療を止めること」への決断も含まれる為、医療関係者は相当の覚悟を持って取り組まねばならない。また、現場に判断を丸投げしない様に、厳格な基準を事前に定めておく必要があります。

 

目的は、一人でも多くの患者を救うこと。

しかし、まだ息のある患者への治療を止めることは事実であり、怒る人もいる。なかなか難しい問題です。

 

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ただ、吉村知事の弱点というか甘い所というか、ツッコミを喰らう隙があったのは否めない。

素直に「新型コロナ対応に特化した受け入れ病院を作り、そこで陽性か否かを判断して、医療現場の混乱を避ける」と言って止めればよかった。そこに「トリアージ」という専門用語を使うのは、ちょっと迂闊。

 

特に関西地方では、「トリアージ」という言葉や、維新の会&吉村知事に対する見方が厳しい。その理由は、大きく3つ。

(1)阪神大震災

(2)大阪都構想の住民投票

(3)イソジン騒動

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

 

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(1)阪神大震災

1995年(平成7年)の1月17日、兵庫県南部を震源とする大地震が発生。6000人を超える死者と、数万人規模の負傷者が出る大災害になりました。

家を失ったり、救助活動に関わったりした方を加えれば、軽く数百万人規模の話になるでしょう。

(この地震の正式名称は「阪神・淡路大震災」ですが、ここでは「阪神大震災」という呼称で統一させて頂きます)

 

阪神大震災が起きた時、筆者はまだ子供。

幸いにして被害は免れたものの、周囲に被災者の方は多く、連日の報道で被害状況が伝わり、強い恐怖を感じたことは覚えています。

 

その報道の中に、「トリアージの現場」を捉えたものがいくつかありました。

当時はまだトリアージという言葉すら一般的ではなく、トリアージと呼ぶ報道関係者はいませんでした。が、やっていることは正にトリアージ。

「この患者さんは駄目だ。次!」という言葉が飛び交う医療現場。その場にいない私でも、強烈な緊張感を持つ画です。

 

阪神大震災から25年が経過しましたが、被災者の記憶が完全に癒されることはありません。大なり小なりトリアージに関わった方もいたハズで、治療を止められた遺族もいます。

緊急時で仕方のないこととはいえ、綺麗に割り切れる人は少ない。

 

そういう下地のある地域では、「トリアージ」という言葉に過剰反応する人がいても非難できません。

同じ事は、東日本大震災などの他大災害にも言えます。そうなると、日本国民ほぼ全員が過敏になるのも無理はない。

 

他の言葉で代用できるのに、敢えて「トリアージ」という言葉を使う。

そこは「言葉が命の政治家」として、吉村知事は甘かった。

 

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(2)大阪都構想の住民投票

1ヶ月ほど前に実施された、いわゆる「大阪都構想」に関する住民投票。

結果は否決でしたが、関西地方では大きな話題になりました。

 

正式名称は「大阪市を廃止し特別区を設置することについての住民投票」でしたので、大阪市民だけの投票であった筈。ですが、連日メディアで討論会が催され、関西地方全体が興味を持つ話になりました。

tenamaka26.hatenablog.com

tenamaka26.hatenablog.com

 

この過程において、都構想推進派の維新(吉村知事サイド)の発言にツッコミどころ多数。

コロナ対応で世界中が大変な中、多額の費用を使って住民投票をやり、否決。

「コロナで大変なのに、今投票やる意味がよく分からない」「そのお金をコロナ対応に回せばどう?」という声がある中で、投票を実施。コロナ軽視と捉えられても仕方ない面が残ります。

 

「公明党と協力できるのは、今しかない」として強行…という情報もあり、「市民の健康より、政局が大事か?」との批判も出ました。

その流れで、トリアージと言う。ちょっと頂けない。別の言葉を使えばいいのに…。

 

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(3)イソジン騒動

今回、ツイッターのトレンドワードに出た「トリアージ吉村」という言葉。

この言葉と併せて書かれていたものに「イソジン吉村」という言葉もあります。

 

ネタモトは、今年8月に維新が開いた会見。

「うがい薬が、新型コロナに効くらしい」という内容のもので、結構な騒ぎになりました。

www.nikkei.com(2020/8/4)

 

吉村知事本人は「特効薬ではない」と言っていたものの、市場は大混乱。ドラッグストアから品が消え、悪質転売ヤーが定価の10倍で売ろうとし、挙句の果てには逮捕者まで出る始末。

医療関係の専門家からも「吉村知事の会見は、証拠に乏しい」という厳しい意見が出て、結構な炎上騒ぎになりました。

 

こういう会見をした方が、トリアージという単語を使う。「ちゃんと意味が分かっているの?」という声が出ても、仕方ないとしか言えない。

 

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上記の様な事情がある為、吉村知事が「トリアージ」という言葉に触れ・その様子を見て怒る人がいても、不思議ではありません。

とはいえ、吉村知事が「患者を見殺しにする」という考えで発言したとは思えない。「早い段階で施設の棲み分けをして、治療体制を整えておきましょう」という趣旨での発言である。筆者はそう理解しています。

 

他方、吉村知事は政治家として甘い面がある。これは否めない。

政治家は、言葉が命。思想や利害を異にする人間をまとめ上げるのが政治家の仕事ですから、「言葉に気を付ければ何とかなった」という話であれば、無用な軋轢を生む言葉は避けた方が無難です。

 

今回の「トリアージ」に関しては、随分前から医療関係以外でも使われる言葉になっています。

が、「トリアージには”命の選別”の要素がある為、誤解を受け易い。使う時には慎重に」と注意される場面も多い。

medical.nikkeibp.co.jp(2009/6/25)

 

 

吉村知事の、言いたいことは分かります。

ただ、言葉は使う場面と相手によって変えるのが望ましい。

言葉が商売道具である政治家は、望ましいを超えて「しなければならない」のです。

そういう意味で、「トリアージ吉村」というトレンドワードは…重い。

 

 

--------------(記事了)--------------

 

 

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