先日、ツイッターを見ていたところ…
トレンドワードに「トリアージ吉村」というものが出現しました。
これ何?…と思って調べると、どうやら「大阪府の吉村知事」の発言に関するものらしい。
残念ながら、このトレンドワードはネガティブな意味で捉えられており、軽い炎上状態になっていました。
炎上のモトネタとして挙がっていた記事は、以下。
hbol.jp(2020/11/23)
あろうことか、吉村洋文知事は記者に囲まれ、大阪ではこれから「病床トリアージをする」と宣言しました。
「病床トリアージ」というのが何を意味しているのかという話になってくるのですが、産経新聞によれば、一般の病気やケガの患者と新型コロナウイルスの患者を病院ごとに分けるという意味のようです。
しかし、本当はこの「病床トリアージ」という言葉には、その先の意味が含まれているのではないかと考えられるのです。
というのも、ただ入院する病院を振り分けるだけなら「振り分ける」と言えばいいだけなのですから、わざわざ「トリアージ」という言葉を使う必要はありません。
(https://hbol.jp/232849より。改行は筆者によるもの)
上記引用記事は、「ハーバー・ビジネス・オンライン」というネットメディアのもの。
運営主体は、フジサンケイグループの出版担当「扶桑社」です。その為か、上記引用内に”産経新聞によれば”という文言がある。
どちらかと言えば、一次媒体を基にした1.5~2次媒体と見るべきサイトです。当ブログと同じですね。
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他方、ハーバー・ビジネス・オンライン記事の元ネタとなった産経記事は、以下。
www.sankei.com(2020/11/19)
大阪府の吉村洋文知事は19日、新型コロナウイルスに感染した重症者の病床の確保に関連して「大阪全体で救急病床のトリアージ(選別)をしていく」と述べ、一般の傷病患者とコロナ患者の受け入れ先を明確化していく方針を示した。
あわせて、確保する病床の最大数を206床から215床まで拡充するよう府内の医療機関に要請したことを明らかにした。
府内には約500の集中治療室(ICU)があるとされる。
新型コロナの重症者増に伴い、コロナ患者以外の重篤患者を受け入れられない医療機関が相次ぐことが想定される。
吉村氏は「交通事故や脳梗塞などの病気は新型コロナ患者を受け入れていない病院にお願いし、役割分担を明確にする」と言及。
「相互連携で進める計画を立てており、医療崩壊ではない」と強調した。
(https://www.sankei.com/west/news/201119/wst2011190031-n1.htmlより。改行は筆者によるもの)
ハーバー・ビジネス・オンラインでは、この産経記事を深読みして、「病院の役割分担と言えばいい話を、患者の選別を意味するトリアージと表現したのはおかしい」という主張に達した模様。
産経記事そのものには、「トリアージ=患者選別」という表記はありません。「トリアージ=病床選別」とだけ。人間ではなく、施設の話です。
しかし、施設を分けるということは、最終的には患者の選別にかかるとも言えなくはない。
そういう意味で、ハーバー・ビジネス・オンライン記事の読みも外れてはいない。
記事に乗っかって炎上に加わった人々も、デマに惑わされたとは言えません。
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確かに、「トリアージ」という言葉には、ショッキングな意味はあります。
強烈にドキツイ言葉で表現すれば、「まだ息のある患者を前に、”この人はもう助からない”と医療関係者が判断した時、治療を止める」という制度。それがトリアージです。
口の悪い人は、これを「見殺し」と言う場合もアリ。
(上画像:トリアージ実施時に使うタグ。このタグに書き込まれた情報を基に、治療が実施される)
ただ、「見殺しにする」というキツイ表現であったとしても、それは決してやりたくてやるワケではありません。
トリアージが問題となる場面は、主に「患者が一度に大量発生しまくって、病院がパンクする」という異常事態発生時。
具体例としては、地震・火災・大規模事故などが挙げられます。
下手をすると、数万人規模で患者が発生する緊急事態。そんな時に「予約順に治療」「先着順に治療」という悠長なことを言っている場合ではない。
秒単位を争う極限状況になった時に、トリアージの話が出てくるのです。
医療関係者は、基本的に”治療を求めている患者”を拒否できませんし、その考えもありません。
しかし、状況が切迫している時は、一人でも多くの患者を救う為の行動を求められます。その行動方針がトリアージ。
運用には相当の覚悟と注意が必要であり、教育機関等で頻繁に訓練が実施されています。
www.youtube.com(2019/9/11)
この様な背景がある中、厳密には医療関係者ではなく・法律畑出身の吉村知事が「トリアージ」と言った。
パッと見聞きしただけで終わると、騒ぎになっても不思議じゃないですね。
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ただ、一つ気になるのは…
「吉村知事が”病床トリアージ”と言い始めたのは、少なくとも半年以上前からである」という点。
www.youtube.com(2020/5/15)
言い出した当初は炎上しなかったのに、今炎上しているのは何故?
もっと早くから燃えても不思議じゃないのに。
…まぁ、先述の「パッと見で騒ぐ人」が沢山いて、乗っかった結果燃えた。
そんなところも大きいと推察できます。
しかし、それだけではない。
燃えやすい下地があったことも否めません。
それは、先述の「トリアージという言葉が持つ意味」の他に、知事を始めとする府政にも及び、更には前世紀の話にまで関係してくるものですが…。
と、長くなるので、当記事はここまで。続きは次回記事にて。
次回記事のキーワードは、3つあります。
そのひとつが「阪神大震災」。
--------------(記事了)--------------