先日、京都市内にある某中華料理店が、惜しまれつつ閉店しました。
その店の名は、「餃子の王将 出町店」です。
map.ohsho.co.jp(2020/11/5閲覧)
このお店、関西ではかなり有名な店でした。
過去に何度か、関西ローカルニュースで取り上げられたこともアリ。
「餃子の王将」自体は、全国各地にある超有名チェーン店です。ご存じの方も多いでしょう。
ただ、この出町店は「超個性的なサービス」を提供していた店です。他の王将店舗で同様のサービスをやっているという話は、聞いたことがありません。
いや、王将内部だけでなく、飲食業界でも同様のサービスをやっている所は…恐らく無いのでは?
少なくとも、筆者は知りません。
そのサービスとは、「貧乏な学生さんに、無料で食事を提供する」というもの。
maidonanews.jp(2020/10/31)
「食後30分間の皿洗いで1食無料のサービス」で知られた「餃子の王将」出町店(京都市上京区)がいよいよ10月31日で閉店します。
閉店まで数日後と迫った10月下旬、店主の井上定博さん(70)を訪ねました。井上さんは冗談を交えながら、閉店報道からの2カ月と最後の思いを語ってくれました。
餃子の王将出町店は「皿洗いで無料サービス」でよく知られ、懐事情の厳しい大学生たちに親しまれました。2018年暮れからは、仕送りが遅れているなどの理由で前日から食事を取っていない学生に限り、皿洗いをしなくても無料で食事を提供する形式に変更となりました。
多くの学生の胃袋と心を満たしてきた出町店ですが、今年8月下旬、井上さんは自身の年齢や後継者の不在などから10月末閉店を決断しました。
(https://maidonanews.jp/article/13882799より。改行は筆者によるもの)
上記ニュースは、「まいどなニュース」という関西ローカルニュースサイトからのもの。
このサイトを始め、関西の報道各社から「王将の出町店が閉まる」というニュースが流れました。話を聞いて、筆者の周囲でも驚く人が多かった。
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出町店のある京都市は、多くの大学が存在する「学生の街」です。
ただ、学生さんの中には苦学生もいて、懐具合の厳しい方も少なくない。
そんな学生さんを大事する出町店。今時、ここまでやってくれる店は珍しい。
その為でしょうか。
閉店の話を、全国ニュースの場でも扱っていました。
www.youtube.com(2020/11/4)
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出町店さんが「食事の無料提供サービス」を実現できたのは、王将のFC契約(フランチャイズ)によるところが大きい。
FCとは、本部(この場合は王将フードサービス)が、加盟店(出町店などの実店舗運営者)に対し、看板・物流ルート・ノウハウ等を提供。その対価として、加盟店からお金を貰うシステムのことです。飲食店やコンビニにはありがちな契約。
多くの場合、FC本部が提供するノウハウや資材は同じもの。その為、同じ系列店では、全国各地でほぼ同じサービスが展開されています。
他方、王将のFCは、少々緩い部分アリ。全部の店がガッチガチに同じ…というわけではありません。
地域の状況に応じて、メニューやサービスの調整が可能。チェーン店でありながら個性がある…という、何とも変わったFCなのです。
その為、出町店でやっていたサービスは、出町店さん独自のもの。他店に無くとも、全く不思議ではありません。
いや、もっと言えば、「このサービスを維持できる出町店さんが凄かった」となりますね。
出町店さんの無料サービスは、ここ1~2年のものではありません。何十年も前から実施されています。
普通、タダ飯を振る舞うと、「タダならば食わねば損」「タダと言っているのだから、金は払わなくてもいいよな」と考える人は多そうなもの。
しかし、そういう人ばかりでは、あっと言う間に店が潰れます。そうならずに長年営業を続けて来れたのは、店主さんの人柄・腕・家族や本部の応援…等々があればこそ。それらの長所がお客さん側にも理解され、今まで続いてきたのでしょう。
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関西の名物店が、ひとつ減る。
寂しい話ですが、これも出町店さんの選択です。「今までよく続けて頂いた」「ありがとうございます」という想いで、店の存在を語り継いでいきたいところ。
幸い、出町店の店主さんはお元気。
御歳を召してはいらっしゃいますが、「嫁さんが許してくれたら、また店をやりたい」と仰っています。
もし条件が整って、何かしらの店を新規開店された時には、店主の考えに賛同するお客さんが支えてくれるのでしょう。出町店のファンも支えてくれるかも?
心の温まる良い話は、エンドレスであって欲しいものです。
--------------(記事了)--------------