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【裁判の話】SNSユーザーが注目すべき裁判、現在進行中

今、筆者が注目している裁判があります。

それは、

「自分を貶めるSNSの書き込みに対し、
第三者が”いいね!”を押したことで、
その第三者に損害賠償や慰謝料を求め得るか?」

という内容の裁判です。

 

www.huffingtonpost.jp(2020/10/21)

www3.nhk.or.jp(2020/10/21)

Twitterで伊藤さんを誹謗中傷する複数の投稿に「いいね」を押したとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが自民党の杉田水脈衆院議員に対し、220万円の損害賠償を求めている裁判の第1回口頭弁論が10月21日、東京地裁(武藤貴明裁判長)であった。


訴状によると、杉田議員は2018年6~7月、元TBS記者の山口敬之さんから性行為を強要されたという伊藤さんの訴えについて、「枕営業の失敗」「日本を貶めている」などと誹謗中傷した13件の投稿に「いいね」を押したとしている。


さらに、伊藤さんを擁護するツイートをした人物をバッシングする複数の投稿にも「いいね」を押したという。

 

杉田議員の公式Twitterは当時で約11万のフォロワー(現在は19.7万)がいたといい、誹謗中傷ツイートに好感を表明する「いいね」をした行為が、伊藤さんの名誉感情侵害行為にあたると主張している。

 

被告の杉田議員は出廷せず、請求棄却を求めた。

https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f8f1f83c5b6dc2d17fac36eより。改行は筆者によるもの)

 

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この手の話は、かなり新しい問題であり、判例の蓄積に乏しい。

専門家の方が発する意見では、「ケースバイケース」との声が多い様に見受けられます。

例えば、以下の記事。TwitterやFacebookよりも前から存在している「mixi(ミクシィ)」での話。

 

www.bengo4.com(2020/8/26)

「いいね」に関しては、SNSサービス「ミクシィ」の「イイネ」機能について、発言に対して賛同の意を示すものにとどまり、仮につぶやきなどが名誉を毀損するなどの内容であったとしても、つぶやきに「イイネ!」を押したことで、そのつぶやきなどの内容について不法行為責任を負うことはない、との判断が出ている(平成26年3月20日東京地裁判決)。

https://www.bengo4.com/c_18/n_11644/

 

上記記事によると、「mixiで”イイネ”を押しても、不法行為責任を負わない」とのこと。

 

ただ、Twitterとmixiは別のサービスであり、mixiで通用する理屈がTwitterでも通るかどうかは分かりません。

これから法廷で争われ、判決が出るのです。

 

とはいえ、両者が似たサービスであることも事実。

そう考えると、伊藤氏の主張は通り難いかも知れません。

 

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他方、TwitterのRT(リツイート)に関しては、裁判所の判断が出ています。

www.bengo4.com(2020/6/11)

平成26年12月24日の東京地裁判決は、「ポスター破りに唾かけ、車破壊、名誉毀損、業務妨害、証拠隠滅・犯人隠避、ストーカー、強姦、強制猥褻、不正アクセス、詐欺、恐喝、集団暴行、飲酒運転etc…お前らはこんだけやらかしてるんだから、無傷でいられるわけないでしょ」などという他人の投稿をリツイートしたことが、法的問題に当たるかどうかが争点となりました。

 

裁判所は、まず、このツイート自体について、多数の犯罪をしたことなどを示していて、侮辱し社会的評価を低下させるため、名誉毀損に当たると判断しました。

 

リツイートした人の「自身が発信したものではない」という反論に対し、裁判所は、リツイートについて「ツイートをそのまま自身のツイッターに掲載する点で、自身の発言と同様に扱われるものであり、リツイートした人の発言行為とみるべき」と示しました。

 

 (https://www.bengo4.com/c_23/n_11326/

 

上記記事内容のポイントは、

批判や考察等が無い「単なるリツイート」は、
リツイートした者の賛同意見表明とみなされ、
その責任はリツイートした者に降りかかる

…といったところですね。

「他人の意見を引っ張ってきただけ。自分が言ったわけじゃない」では通らず、「意見に賛同するから、コメント無し・RT拡散したハズ。拡散した者が言ったも同然と判断されたのです。

 

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上記の「RTに対する考え方」と、今回の「いいね!に関する考え方」。

この二者が、どこまで同じ要素を含むか?…ここが判断の分かれ目でしょう。

 

筆者が思うに、「いいね!」を”賛同”と捉える人もいれば、”読んだよ”程度に捉える人もいる。”延々と続くヤリトリを一旦ストップする為”に使う人もいる。

被告である杉田水脈衆院議員が、どういう意図で「いいね!」を押したと主張するのか?…ここが気になる所です。

 

ただし、ツイッターのヘルプページには、こう書かれています。

help.twitter.com(2020/10/23閲覧)

ツイートにいいねする方法


いいねは小さなハートマークで表示され、ツイートに対する好意的な気持ちを示すために使われます。

いいねしたツイートは、プロフィールページから [いいね] タブをクリックまたはタップすることで表示できます。

https://help.twitter.com/ja/using-twitter/liking-tweets-and-moments

 

この文章を鵜呑みにすれば、杉田氏が好意を持って「いいね!」を押したことに。

そうなれば、「コメント無しのRTは、賛同と同じ」という解釈に近くなりますね。杉田氏サイドに不利な文言です。

 

上記ヘルプを、裁判所がどう判断するのか?

 

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今回の「いいね!」裁判は、下手をすると数億人単位の方々に影響を及ぼします。

なぜならば、常日頃から使っているSNSに、新たな注意点が増えるかもしれない為です。

 

ツイッターの「いいね!」ボタンは、間違って押しても「本当に押しても構わないですか?」等という警告が出ません。

仕様が変われば別ですが、もし「いいね!」にも名誉棄損が成立する場合、法治国家の民としては従わざるを得ない。

誤タップを恐れ・ビクビクしながらスマホを触る人が増えるでしょう。

 

筆者も、頻繁にTwitterを使います。

「いいね!」やRTには気を遣いますが、今回の裁判次第で”気遣い上乗せ”になるかも知れない。

裁判自体に直接的関係はなくとも、判決内容が生活に影響を与える恐れアリ。そう考えれば、どうしても注目してしまいます。

 

裁判は、始まったばかり。どうなるかは、五里霧中。

 

 

--------------(記事了)--------------

 

 

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