先日から、ロボットやAI(人工知能)に関する記事を書かせて頂いてます。
この手の記事を書く時に、チョイチョイ出てくる「ルール」があります。
そのルール名は、「ロボット三原則」といいます。SFに疎い方でも、一度は耳にしたことのある名前では?
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「ロボット三原則」は、学者でありSF作家でもある「アイザック・アシモフ」氏が唱えたもの。
この三原則は、いわば「AI(人工知能)を持つロボットの憲法」です。
人間に様々な仕事を命じられるロボットですが、時に理不尽な命令を受けることもある。そんな時の為に、「理不尽な命令を受け付けない仕組み」を予め整えておいて、被害を出さない様にする。これが三原則の目的です。
このルールが非常によくできており、現代でも通用する…というか、「家電製品の鉄則」として守られている節があります。
そんな「ロボット三原則」の内容は、以下。
第一条
ロボットは、人間に危害を加えてはならない。
また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条
ロボットは、人間から与えられた命令に服従しなければならない。
ただし、与えられた命令が第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条
ロボットは、第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。
上記の三原則。それぞれの意味する所は、シンプルで分かり易い。
第一条は「安全性」、
第二条は「操作性」、
第三条は「耐久性」を述べたものです。
最も重視されるのは安全性。
安全性を確保した上で、操作し易くする。安全性を確保し、操作性を向上させた後に、機械の耐久性を高めて長持ちさせる。
正に、現代の家電製品に通用する話です。
21世紀の家電製品には、漏れなくコンピューターが内蔵されています。
例えば、洗濯機の「おまかせコース」的なモノひとつをとっても、コンピューターの要素があります。スイッチを押すだけで洗濯物の重さを量り、最適な水の量と洗濯時間を設定してくれますから。
IoTレベルの高度なものでなくとも、現代の家電製品の多くがコンピューターを搭載しています。そこには、ロボット三原則の精神が存在します。
未来を予見した様な原則を、半世紀以上も前に提唱したアシモフ氏。科学者としての優れた先見性が垣間見えます。
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一方、作家としてのアシモフ氏は、このロボット三原則を逆手に取った作品を執筆しています。
有名な所では、映画にもなった『i,Robot』(アイ・ロボット)の名前が出て来ますね。
『i,Robot』は、2004年のアメリカ映画です。主演は、SF映画ではお馴染みの有名俳優「ウィル・スミス」氏。
『i,Robot』の原作は、アシモフ氏の小説です。が、映画は原作そのままではなく、オリジナル要素を盛り込んだ仕上がりになっており、アシモフ氏の小説を読んだ方でも楽しめる造りになっています。
ただ、根幹を成す要素は、アシモフ氏の小説を踏襲しています。それが「ロボット三原則」です。
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映画『i,Robot』の世界では、人間と何ら変わることのない、超高性能ロボが製造されています。
しかし、このロボットに組み込んだはずの「ロボット三原則」が破られたかも知れない、奇妙な事件が発生してしまいます。
その事件は、「とある科学者の死に、ロボットが関係しているかも知れない」というものです。
ロボット三原則の第一条により、ロボットは人間を襲えないハズ。
しかし、どう見てもロボットが怪しい。
”尋問されたロボットが、カッとして机を殴る”といった奇妙な光景を始め、「このロボット、三原則を守っていないのでは?」と思しき状況がチラホラ。
ロボットに疑いを持った主人公(演:ウィル・スミス)が、詳しい調査に乗り出します。しかし、思いもよらぬ妨害に遭ってしまい…
と、ここから先はネタバレになりかねないので、ご自身の目で『i,Robot』本編をご覧くださいませ。
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アシモフ氏の凄い所は、「理系的には完璧なロボット三原則」を考えた一方で、「文系的には破壊可能な原則にした」という点。
「そういう解釈があったか!」というドンデン返しが、ミステリーとして面白い。
もっと言えば、「一見して完璧に思えるルールでも、意外に隙や穴がある」という理解も出来ます。
ルールが完璧に守られました…というオチで済まさない。そこにアシモフ氏の底知れぬ知性が見え隠れしています。
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