先日放送が終了した『仮面ライダーゼロワン』。
作品のテーマは「AI(人工知能)と、人間の共存」でした。
「人類とAI」をテーマにした作品は、『仮面ライダーゼロワン』以外にも数限りなく存在します。
そもそも、近代漫画の創始者ともいえる大作家・手塚治虫氏が手掛けた『鉄腕アトム』の主役ロボット「アトム」に、高性能AIが搭載されています。敵となるロボットも同様。
藤子不二雄氏の描いた名作『ドラえもん』にも、乗り物が人型に変形する『トランスフォーマー』にも、高性能AI搭載のロボットが出て来ます。
SF作品には、最早御馴染みの光景。
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ここで、ふと浮かんだ疑問がひとつ。
「高性能AIを、初めて世に出したSF作品」とは、一体何か?
パッと思いつくのは、ロボット三原則を世に唱えたSF界の重鎮「アイザック・アシモフ」氏の作品です。
もう30年近く前に亡くなった方ですが、現在のSF界に与えた影響は、極めて大。
ただ、よ~く考えてみると…
アシモフ氏がロボットものを執筆する100年以上も前に、「人間の手で・科学的手法により生み出された人工知能」を描いた作家さんがいらっしゃいました。
その方の名は、「メアリー・シェリー」氏。イギリス人の女性です。
この方が、二十歳そこそこの若い時に、ある有名小説を執筆されました。この中に、「科学的手法で生み出された、知能を持つ人工物」が登場します。
筆者の知る限り、これが「世界最古のAI」と呼んで差し支えないかと。
その小説の名は、『フランケンシュタイン』です。
『フランケンシュタイン』が世に出たのは、1800年代初頭。今から200年以上も前の話です。
その頃の日本は、江戸時代後期。葛飾北斎が活躍していた時代です。そんな時期に、人間による人工知能登場を考えたシェリー氏。物凄い先見の明がありますね。
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厳密に言えば、『フランケンシュタイン』に登場する人工知能は、電気コードや歯車で構成されるメカメカしいものではありません。どちらかといえば、「人造人間」に近い。
小説のジャンルも、SF小説というよりは「サスペンス」や「ホラー」に近いものでした。
(上画像:1994年の映画『フランケンシュタイン』)
フランケンシュタインとは、人工知能を作り出した科学者の名前。本名は「ヴィクター・フランケンシュタイン」。
このヴィクターが、人の遺体を繋ぎ合わせて作った異形の怪物。それが世界最古の人工知能搭載型被造物(クリーチャー)です。
一見すると「ゾンビ」みたいですが、人間の行動を観察し・言語を習得する能力まで持ち合わせていたので、「人工知能」と呼んでも差し支えない存在かと。
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シェリー氏の凄い所は、江戸時代後期という時期に、「人工知能が人間に反抗する」という姿を考え、小説の中で描いている点です。
今でこそ、『ターミネーター』や『マトリックス』等で当たり前に出てくる設定ですが、それを江戸時代に考えたシェリー氏。驚くばかりです。
この骨太設定が爆発的人気を博し、現代でも『フランケンシュタイン』の存在感は大きい。未だに「原案:メアリー・シェリー」の体で、新作の舞台や映画が発表されているレベルです。
影響を受けた作品となると、もういくつあるのか分からない。シェリー氏の影響力は、百年単位の巨大な物です。
そして、「AIが人類に反旗を翻す」という光景が、現実のものになるかも知れない。AIというものが現実世界に普及し始めた21世紀。その心配は常に存在します。
これも、シェリー氏が唱えたもの。
200年前の作家が警告した危機を、人類は愚かしくも実現させてしまうのか?
それは、今後の人類次第。
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