先日、とあるサイトが閉鎖されました。
サイトの名は、「NAVER(ネイバー)まとめ」です。
いわゆる「まとめサイト」「キュレーションサイト」の最古参であり、2009年からサービスを開始した有名サイト。閲覧した方も多いハズ。
サービス開始から11年となる今年、サイト閉鎖・事業撤退となりました。
nlab.itmedia.co.jp(2020/9/30)
LINEが運営するキュレーションメディア「NAVERまとめ」が9月30日11時過ぎにサービスを終了しました。
同社はサービスの終了を7月1日に発表。
終了理由については
「サービス環境・市場環境の変化による単独サービスとしての今後の成長性や、LINEグループ全体での選択と集中の観点などをふまえて検討した結果」
として、今後はNAVERまとめで培ったノウハウを検索事業の発展に生かしていきたいと説明していました。
(https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2009/30/news083.htmlより。改行は筆者によるもの。以下同)
「NAVERまとめ」に掲載される情報は、その大半が「他サイトの情報を切り貼りしたもの」です。完全オリジナルコンテンツは、ほぼ存在しない。
ネットの情報を拾ってまとめるだけのサイトなので、「まとめサイト」と呼ばれています。
まとめを作成するのは、ごく普通の一般人の方。名の通ったライターさんではありません。
記事作成ツールは「NAVERまとめ」の運営側が用意する為、ITの知識に乏しくとも、まとめ記事作成は容易。
まとめを作成し、閲覧数が伸びれば、その数に応じて作成者に金銭報酬が発生する仕組みになっていた為、参加する人が続出。結構な盛況ぶりを見せていました。
(上画像:「NAVERまとめ」に関する書籍の一例)(画像提供:Amazon)
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ただ、記事作成に参加する者の増加が、サイトの質を上げるとは限らない。
十分な教育・指導もないままで、まとめ作成に参加する者が急増すれば、高確率でサイトの質は下がります。記事内容の高品質化を考えず、「報酬目当ての、粗悪記事乱発」に手を染める連中が、大量に出て来るのです。
悲しいかな、「NAVERまとめ」では、この粗悪化が顕著でした。
他サイト記事を丸パクリして、楽に記事数を稼ごうとする連中が続出。
見出しが派手なのに、中身スッカラカンの粗悪記事が湧きまくり。
「パクリはやめて」という被害者(パクられた側)からの訴えに対し、サイト運営の行動は緩慢かつ消極的。
これらが大炎上を招き、その影響で未だに「NAVERまとめ」を毛嫌いする人が多い。
www.itmedia.co.jp(2016/12/12)
LINEが運営するキュレーションメディア「NAVERまとめ」も、「コンテンツを無断利用された」と被害を訴える人が多いサイトの1つだ。
ライターの北本祐子さんは、個人サイトに掲載した画像をNAVERまとめに何度も無断で利用され、そのたびに抗議してきたという。
問題が起きたのは今年1月末。徳間書店が運営するWebメディア「&GP」に、チョコレートを紹介する記事を掲載した翌日だ。
この記事の画像4枚すべてと、商品の紹介文が丸ごと、NAVERまとめに転載された。
北本さんが直接取材し、高画質な画像も借りて執筆した記事だったため、悔しい思いをしたという。
北本さんはLINEに対し、問い合わせフォームから抗議した。
LINEから届いた返信メールには、
(1)権利を侵害しているNAVERまとめの画像・テキストのURLを指定すること、
(2)出典のURLに、「このページ内の画像をNAVERまとめに転載することを禁止します」など、転載禁止の旨を追記すること
――を求められたという。
転載禁止の文言は、NAVER側の削除作業が終わり次第、消してよい、という。
記事が載っているのは商用サイトであり、外部のニュースサイトにも同じ記事が配信されている。
編集部と対応を話し合ったが、商用サイトやニュースサイトに、一時的でも「このページ内の画像をNAVERまとめに転載することを禁止します」と掲載するのはNAVERまとめの宣伝行為にしかならないと考え、削除依頼を出さず、泣き寝入りすることになったという。
(https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1612/12/news067.html)
「NAVERまとめ」の掲載記事がやっていたのは、「引用」ではなく「盗用」。
抗議しても、運営側の対応は「お前が”盗用禁止”と書かないから悪い」と言ってきたに等しいもの。
これは、万引き犯人が商店主に逆ギレして、「万引き禁止と書いていないから悪い!」と言う様なモンです。
サイトが炎上して当然。評判が悪くなるのも自明の理。
上記引用記事と同様の抗議は多数ありましたが、まとめ運営側の動きは鈍く、盗用記事の削除・再発防止策の構築等に至るには時間がかかりました。
それもまた、運営の評判を落とすネタになります。
(参考:「NAVERまとめのライターに無断転載の損害賠償を支払っていただいた件」https://www.photo-yatra.tokyo/blog/archives/12696)
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他方、「NAVERまとめ」は粗悪記事が多い反面、SEOはしっかりしていました。
SEOとは、「ネット検索の上位に、自分の記事を表示させる手法」のこと。これにより、検索から記事への誘導がスムーズになり、閲覧数が増えます。
そこだけ見れば、商売人として優秀。
しかし、多くの人に見て貰うということは、閲覧者の怒りを買えば手が付けられなくなるということ。
しまいには、検索サイトの側から「パクリ・粗悪記事を、検索上位に表示させない」という対応を取られました。この影響で、まとめ記事の閲覧数は大幅ダウン。運営を弱らせる要因になったことは疑いない。
また、こういう「内容ペラペラの盗用記事でも、検索上位に出ればいい」という考えを広めたのも、「NAVERまとめ」によるところが大きいでしょう。
検索サイト側がSEO対策をやっても、抜け穴はどこかにあります。そこを突いて、現在は「悪質トレンドブログ」「いかがでしたかブログ」等の台頭が顕著。検索サイトとの”いたちごっこ”になっています。
これらの悪行に対し、直接的な責任が「NAVERまとめ」にあるとは考えられません。が、ひとつの成功例を示してしまったことに対しては、それなりの重責があるでしょう。
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ただ、筆者が思うに…「NAVERまとめ」に象徴されるサイトの全てが、「粗悪」「盗用」とは限らない。
中には、大手マスコミが取り上げないニッチな情報もあったりします。
(至極稀ですが)
また、「埋もれた情報に触れる機会」を提供してくれる側面もあります。
(引用元が明記されている場合は…ですが)
こういう面もあるので、まとめサイト記事を十把一絡げでゴミ扱いするのは、ちょっとやり過ぎ。使い方次第で、有用なサイトにもなり得るのです。「NAVERまとめ」も同じ。
「NAVERまとめ」に限って言えば、「問題の多いサイトがどうなるかについて、見本を示してくれた」という意味でも有用です。
引用にはルールがあります。ルールをガン無視すれば、「消えない深い傷」を残すことになりかねない。そのことを身を以って示してくれた反面教師として、かなり有用です。
「NAVERまとめ」の栄枯盛衰は、良くも悪くも後世に残るものになりました。
この教訓をどう活かすか? それが今後の課題です。
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