前回記事の続きです。
テーマは、
「筆者の予想が、的中したらしい」
「複数の転売ヤーが、これから逮捕されるかも」
というものです。
前回記事の内容をザックリまとめると、以下の様なものになります。
◆2020年8月4日。大阪の吉村知事の会見で「うがい薬が、新型コロナウイルスに効く」との情報が出て、うがい薬が品切れになる騒動があった。
◆この騒動で、また「転売ヤー」が動き、世間の顰蹙を買う。しかし、マスク騒動の時と違い、転売サイトから速攻でうがい薬の出品が消えた。
◆消えた理由は、「吉村知事の示したうがい薬の転売は、薬機法(旧・薬事法)に触れる為、犯罪行為になるから」である。
◆しかし、ここで転売ヤーは諦めない。「薬機法に引っかからない」とされるうがい薬を探し出し、転売活動を始めた。
◆この転売を見て、筆者はこう考えた。
「薬機法には触れないかも知れないが、他の法律に触れる恐れが大きい」
「今は大丈夫でも、そのうち逮捕者が出るだろう」
◆この予想が的中した模様。うがい薬ではないが、他の商品の転売で逮捕者が出た。
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先日のニュースで報じられた「転売ヤー逮捕」の話は、うがい薬の転売ではなく、ハンドソープの転売に関するものです。
ハンドソープは、「医薬部外品」というカテゴリに入る品物。転売しても、薬機法に触れない製品とされており、転売ヤーが気軽に転売していたのでしょう。
また、このハンドソープが「東京ディズニーリゾート限定品」であった為、転売が容易だったと思われます。
限定品ですから、普通のハンドソープに比べて、希少価値がある品物。ハンドソープが欲しいと思わなくても、ディズニー関連品が欲しいと思う方は多い。
(上画像:報道で紹介された「東京ディズニーリゾート限定ハンドソープ」と同じもの)
しかし、このハンドソープ。薬機法に触れない品だとしても、他の法律に触れる商品だったのです。
その法律とは、「国民生活安定緊急措置法」という法律。
前回記事では、この法律の存在に触れたところで終わりました。
今回は、なぜハンドソープ転売で逮捕されるのか、その根拠を深掘りしていきます。
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「国民生活安定緊急措置法」とは、昭和48年(1973年)に作られた法律。
その目的は、「生活必需品の不当な買占め・ボッタクリ販売を防止し、高値で売り捌く不届き者を取り締まること」です。
この法律に触れた場合、犯罪行為をしたものとして捜査対象になります。裁判で有罪となった場合は、懲役や罰金もアリ。
(参考:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=348AC0000000121)
この法律で規制される「生活必需品」は、「政令」で定めることになっています。
政令とは、政府(内閣)が出す命令のこと。法律よりも決定スピードが早く、緊急事態に対処するのに向いているものです。
2020年5月、とある政令が出ました。それは「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」です。
この政令によって、「薬機法に触れない製品でも、転売すれば逮捕される」という状況になりました。
www.meti.go.jp(2020/5/22)
この政令で新たに指定された品に、「消毒用アルコール」に関するものが含まれています。
今年発生したコロナ騒動に便乗して、マスクや消毒用商品の高額転売が多発しましたね。あの惨状を問題視した政府が、再発防止の為に「高額転売禁止」との政令を出したのです。
では、「取り締まり対象となる消毒薬」とは、どの様な品物なのでしょうか?
上記リンクには、こう明記されています。
※消毒等用アルコールとは、
消毒等(消毒、殺菌その他これらに類する行為)に使用されることが目的とされている
①アルコールを含有する医薬品・医薬部外品
及び
②医薬品・医薬部外品以外のアルコール分60度以上の製品
を指します。
(https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200522003/20200522003.htmlより。改行・強調等は筆者によるもの。以下同)
上記引用によると、「殺菌に使うもので、アルコールを含む医薬部外品であれば、高額転売禁止品」となります。
上記の条件を満たせば、薬機法に触れなくても逮捕の恐れが出て来ます。
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では、今回問題となった「東京ディズニーリゾート限定品ハンドソープ」はどうなのでしょうか?
この商品、下部をよく見ると「ビオレU 泡ハンドソープ」と書かれています。
「ビオレU」は、有名メーカー「花王」さんが製造している商品。
つまり、この限定ハンドソープは、「パッケージデザインこそディズニーが関与しているものの、中身は花王製品」ということになります。
www.kao.com(2020/8/27閲覧)
花王さんのページに記載された、当該ハンドソープの成分表を見てみましょう。
成分
イソプロピルメチルフェノール*、水、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(1E.O.)液、PG、アルキルグリコシド、POE(21)ラウリルエーテル、エタノール
(https://www.kao.com/jp/bioreu/bru_handsoap_00.html)
「エタノール」という表記がありますね。これ、「消毒用アルコール」のことです。
先述の「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」により、「殺菌に使うもので、アルコールを含む医薬部外品であれば、高額転売禁止品」とされています。
このハンドソープは、まさにそれ。
法律・政令で禁止されているものを高額転売した為、「ディズニー限定ハンドソープ」を扱った転売ヤーが逮捕されたのです。
もし、この製品に「消毒用アルコール」が含まれていなければ、逮捕されなかった可能性が大きい。
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記事冒頭で触れた「医薬部外品のうがい薬」の中にも、ディズニー限定ハンドソープと同じく、「アルコールを含む医薬部外品」とされている品がゴロゴロあります。
そういった品を、転売サイトで売り捌いた転売ヤーも、多数存在します。
ハンドソープの逮捕案件を見ると、理論的には「該当するうがい薬を高額転売した者も、逮捕される」という話になりますね。
転売ヤーの方々は、「薬機法に触れない製品であれば、堂々と転売していい」という強気の姿勢で出品を続けていますが、その「薬機法に触れない製品の転売」で、逮捕者が出ました。
このニュースを見て、どう思うのでしょうか。
これから警察が動くかどうか?
それは警察関係者でないと分からない話ですが、可能性は十分にあります。
ある日突然、家に警官がやってきて、「この品物を高額転売したな?」と告げられ、そのまま逮捕…という状況もあり得る。
これが、商売のリスクです。
転売ヤーの方々は「自営業者」「立派な商売」と自負されているハズ。当然、商売上のリスクまで考えて、活動されているのでしょう。
本記事で紹介した内容を、事前にしっかりと考えていた転売ヤーの方々は、逮捕の心配は少ないでしょう。
しかし、しっかり考えずに・安易に高額転売禁止の品を扱った転売ヤーの所には、警察がやってくる恐れアリ。
状況は案件により別々であり、捜査や逮捕の判断を下すのは警察関係者です。が、逮捕案件が出た以上、似た様な話には・似た様な対応をするのが当然。
さて、どうなることやら。
--------------(記事了)--------------