先日、大阪の吉村知事が、「新型コロナウィルスには”うがい薬”が効く」という趣旨の会見をやって、結構な騒ぎになりました。
覚えていらっしゃる方も多いでしょう。当ブログでも取り上げました。
吉村知事は、「これが特効薬だ」と明言していません。あくまで可能性を示しただけ。
しかし、この会見が原因となり、小売店に客が殺到。うがい薬を求める客への対応で、店頭は大混乱。
そして、案の定「転売ヤー」も大量発生。嫌な意味で、予想通りの展開になりました。
ただ、この話に関しては、マスク騒動の時ほど「転売ヤー」が暴れたワケじゃありません。なぜならば、「吉村知事の示したうがい薬は、薬機法(旧・薬事法)で、転売禁止商品に指定されていたから」です。
もし正規の資格を持たない者が転売すれば、それは犯罪行為。最悪の場合、「三年以下の懲役or三百万円以下の罰金orその両方」となります。
その為、転売情報をアップした途端に、転売サイト運営に削除されるという流れになって、大きな騒ぎになる前に消えた…という感じ。
(参考:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000145#1631 薬機法第84条9項)
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ただ、転売ヤーも「法の抜け穴」を探そうと足掻いた模様。「薬機法に触れないうがい薬」をピックアップして、転売していました。
一般ユーザーからツッコミが入れば、
「これは薬機法に触れるものではない」
「薬機法の規制対象外の品だから、転売OKだ」
「もっと法律を勉強しろ」
という対応を返す転売ヤーもチラホラ。あくまで強気。
ただ、マズイことに、その強気姿勢が「一般ユーザーの怒り」を買ったのでしょう。
某オークション形式の転売サイトでは、「うがい薬ひとつあたり、数億円以上の価格をイタズラで付けられ、取引を妨害された」という転売ヤーもいました。
まぁ、取引妨害はNG行為ですが、「世間を敵に回すとこうなる」という具体例を見た感があります。いろいろと後世に残る話。
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しかし、この光景を見て、筆者は考えました。
確かに、転売ヤーが出品しているうがい薬は、薬機法で取引規制されていない。
しかし、別の法律で規制されていると思われる。
転売すると、警察沙汰になるのでは?
この考えは、どうやら的中しそうです。
と申しますのも、上記で触れた「別の法律」で規制されている品を転売した者が、警察に逮捕されたというニュースが報じられたからです。
同じ理屈で、「薬機法に触れないうがい薬」を転売した者も逮捕される。理論的にはそういう解釈になります。
なお、今回問題となったのは、うがい薬ではなくハンドソープです。
www.kyoto-np.co.jp(2020/8/24)
新型コロナウイルスの影響で品薄となったハンドソープを転売したとして、京都府警福知山署は24日、国民生活安定緊急措置法違反の疑いで、京都府向日市、ネットショップ経営の男(41)を逮捕した。
同署によると、アルコール消毒製品の転売容疑の逮捕は全国初という。
逮捕容疑は7月29日から8月15日の間、インターネットショッピングサイトなどで1個1300~2428円で購入したエタノール入りのハンドソープを自身が経営するネットショッピングサイトで、京都府内の男女3人に3千~3980円で計3個転売した疑い。
東京ディズニーランドと東京ディズニーシー(いずれも千葉県浦安市)で販売している限定商品という。
(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/342146より。改行・強調等は筆者によるもの。以下同)
問題となった品物は、「東京ディズニーリゾート」で販売されている、お土産品のハンドソープです。
泡が「ミッキーマウスの形」になるように作られた特注品で、人気があります。
このハンドソープは、先述のうがい薬と同じで、薬機法で規制されていない品物です。薬機法の観点から見れば、転売OKの品物。
しかし、「国民生活安定緊急措置法」の観点からはNGであり、それを理由に転売ヤーが逮捕されてしまいました。
薬機法ばかり気にしていると、こういう目に遭うんですね。
薬品関係の法律は難しい。
やはり、素人は手を出すべきじゃない。
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ここで、「国民生活安定緊急措置法」の話を少し。
この法律は、「国民にとっての生活必需品を、不当な高値で売り捌く不届き者」を取り締まる為に作られた法律です。
昭和48年(1973年)に作られた法律。
(参考:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=348AC0000000121)
当時は、コロナ騒動ではなく「石油危機(オイルショック)」が発生。トイレットペーパーの買占め等が問題視されました。
その惨状を繰り返さない為に作られた法律が、「国民生活安定緊急措置法」です。
この法律で規制された品物を、正規の方法・価格で売買しなかった場合、警察の捜査対象となります。場合によっては逮捕され、裁判の場にしょっ引かれることもアリ。
ただ、法律の決定や変更には時間がかかります。国会を通さないと駄目ですから。そうなると、緊急事態にはなかなか対処しにくい。今年起きたマスク騒動は、その顕著な例です。
「ある日を境に、一斉に店頭から品物が消える」という状況を見てから、国会を開催して意見を聞いて…となれば、法律が決まる頃にはもう緊急事態が去った後。それでは法律の意味が無い。
そこで、「国民生活安定緊急措置法」では、「どの品物を規制対象に含むかは、政令で決める」とされています。
「政令」とは、政府(内閣)が出す命令。法律よりも決定スピードが早い。緊急事態に対処するには、こちらの方が機能的です。
今回のハンドソープ事件は、この「政令」に引っかかった…というワケです。
では、その政令とは、具体的にはどんなものか?
その政令が、なぜハンドソープを規制するのか?
うがい薬とは、どういう関係があるのか?
その話は、次回記事にて。長くなるので、本日はここまでとさせてください。
--------------(記事了)--------------