詐欺師というものは、手を変え品を変え、思いもよらぬ方法で財貨を盗もうとします。
何百年経っても、変わらない傾向。
そんな詐欺話に、また新しいネタが出現しました。
www.itmedia.co.jp(2020/8/11)
ZOZO創業者の前澤友作氏がTwitter上でたびたび開催する、現金の配布企画が注目を集めている。
しかしこれに乗して、同氏に成り済まして金銭をかすめ取る「ギブアウェイ詐欺」が6月末に発生した。
(https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2008/11/news041.htmlより。改行・強調等は筆者によるもの。以下同)
「ギブアウェイ詐欺」という呼称は新しいものかも知れませんが、実際はかなり前から存在する手法です。要は「先に1万円を支払えば、後で100万円が貰える」という類のヤツです。
しかし、詐欺師のやることですから、約束は守られません。先に払ったものを奪われて終了。催促してもノラリクラリと躱され、そのうち音信不通に…というのが典型的なパターンです。
この詐欺は、古典的な手口です。が、「古典的」と評されるのに、未だに騙される人が存在する。これは「人間の本質を突いた詐欺手法」であるが故の状況だと考えます。
つまり、「油断すれば、誰でもコロッと騙される」ということ。自分だけは大丈夫…と思ってはいけない。
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今回の舞台は、ツイッター等のネット空間。狙われた財貨は、「ビットコイン」等の暗号通貨です。どちらも、古典的詐欺手法とは正反対の新しいもの。
しかし、人間が関わっていることに変わりはなく、そこに詐欺師が付け込む隙があります。
詐欺の成否を左右するポイントは、「相手をどうやって信用させるか」。
これには様々な手がありますが、よく使われるのは「有名人の名を出すこと」です。
今回の詐欺でも、その方法が使われました。
ただ、今回の件で特筆すべきは、「偽物が、本物の名を騙った」という低レベルなものではなく、「本物しか使えないハズの方法を使って、詐欺の下地を作った」という点。
簡単に言えば、「本物が使っているアカウントをハッキングした」ということです。その具体的な手口は、以下の様なもの。
(1)ツイッター社のシステムに侵入し、本物のアカウントを乗っ取る。
今回の件では、前アメリカ大統領「バラク・オバマ」氏や、マイクロソフト創業者「ビル・ゲイツ」氏などの超有名人を始め、コンピューター大手「アップル」の企業アカウントなど100を超えるアカウントがハッキングされた。
(2)乗っ取った「本物のアカウント」を使って、仮想通貨を募る旨のツイートを拡散。
本物の有名アカウントがツイートしている為、信じる閲覧者が続出。実際に仮想通貨を支払う人も出た。
(3)乗っ取り犯が流した偽ツイートを引用したり、偽ツイートに返信したりすることで、活発なヤリトリを演出。
「有名人とヤリトリしている」という雰囲気を醸し出し、詐欺の材料を増やした。そのヤリトリの様子を画像保存しておけば、後でハッキングツイートが削除されてしまっても、詐欺のツールとして使える。その画像を加工することで、更に詐欺ツールを増やすことも可能。様々なバリエーションを用意しておけば、詐欺の成功率も上がる。
(4)それらの詐欺ツールを使って、詐欺師が用意したページに誘導。そのページ上で仮想通貨を送金させる。
乗っ取りはいつかバレて、犯人はシステムから締め出されてしまう。しかし、犯人が作ったページに誘導すれば、もうしばらく詐欺を継続できる。
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今回の件では、「偽ツイートをよく見ると、IDが違う」とか「日本語が微妙におかしい」等、怪しい点が残っていました。
しかし、人は「信じ込んだが最後、少々怪しい面があっても疑わない」という思考回路を持ち易い。
詐欺師が狙うのは、そういう盲点です。
騙されない為には、とにかく慌てないこと。「急いで!」「今だけ!」「あなただけ!」という文言が出てきたら、どこの誰が言っていようとも身構えた方がいい。
詐欺は、冷静な思考能力を持った状況で、時間をかけて裏取りされたら、高確率でバレるものです。詐欺師が奪いたいのは、「冷静な判断力」と「考える時間」。
相手が誰であっても、どんなにオイシイ話であっても、慌てて鵜呑みにしないこと。それが一番大事です。
--------------(記事了)--------------