先日から続く『レッドマン』の紹介記事。その第3回目になります。とりあえず、今回が最終回です。
ひとつめの記事では、レッドマンの概要を紹介しました。
ふたつめの記事では、レッドマンが「悪魔」「通り魔」と呼ばれる理由について、深掘りしました。
今回は、
「なぜ、こんなヒーロー番組を作ったのか?」
について、詳しく述べていきます。つまり、「レッドマン誕生の秘密」について、深掘りする記事になります。
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『レッドマン』は、1972年(昭和47年)に放送された特撮番組です。
その放送時間は、一話につき5分間程度。他のヒーローものは30分番組が多いので、5分番組は異色です。
その5分間も、まるまるバトルシーンで占めるワケにはいきません。テーマソングを流す時間等もありますので、戦闘シーンに使える時間は、2分半~3分程度といったところです。
なぜこんな短時間番組になったのか?
これには、ちゃんとした理由がありました。
『レッドマン』は、独立した番組ではありません。子供向け番組『おはよう!こどもショー』(日本テレビ系)の中で、「特撮ヒーローコーナー」として放送されていたものです。
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『おはよう!こどもショー』は、今でいう所の『おはスタ』『おかあさんといっしょ』みたいな番組です。番組内で触れる話題はひとつではなく、沢山あります。
その沢山の中の一つに、『レッドマン』があったのです。いちコーナーで流れる特撮ドラマである為、各話毎の時間は短いのです。
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この「短時間放送を強いられる」という状況が、『レッドマン』の特徴を生み出します。
先ずは、「説明不足で、レッドマンと怪獣の関係性が不明」という点について。
通常の30分番組であれば、ドラマ仕立てで「事件発生→犯人の目的説明→防衛隊が阻止失敗→ヒーローが登場して戦闘→事件解決」という流れを描けます。
しかし、「2分半~3分程度で、事件の背景と格闘シーンを合わせて描く事」は、普通の方法では困難です。字幕やナレーションという手もあったのでしょうが、それでも1分くらいはかかるでしょう。
その為、「説明不足で展開が唐突になってしまう」というのは、仕方のないことです。
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また、「短時間の特撮ドラマを制作してくれ」と先方から頼まれるということは、それに見合った費用しか出ないということ。つまり、制作費が安い。
ドラマを撮る側は、安い費用の中で何とか子供にウケるものを作ろうと考えます。しかし、先立つ者が無ければ、身動きが取れない。そこで、あの手この手で制作費を削減しようと考える。
…撮影側の努力が見て取れます。
「コスト削減の跡」を探してみれば、以下の様な点がチラホラ。
◆新規で怪獣のキグルミを作るのはコストがかかるので、出てくる怪獣は「過去に放送された円谷作品」からの使い回しばかり。その怪獣も、メンテナンスが上手にいってないのか、質感が粗く見え、チープさが増している。
◆光線技を表現するにはコストがかかるので、できるだけ撮影しない。その結果、ナイフなどの武器を多用する羽目になる。
◆レッドマンは空を飛べる設定だが、光線技と同じく、表現するにはコストがかかる。その為、敵を倒した後に去っていく場合は、徒歩が多い。たまに「スキップ」っぽい動きも見受けられる。
◆レッドマンは、一応「身長42m、体重3万トンの巨大ヒーロー」という設定だが、ミニチュアセットを作るのにコストがかかるので、戦う場所は専ら荒地や農道である。酷い時には、収穫後と思われる田畑のそばで戦うこともアリ。竹藪や雑木林で戦う場面も多いが、ミニチュアの雑木林ではなく、本物の雑木林で戦う。
どちらにしても、設定と縮尺が合わない為、巨大ヒーロー感が薄れる。
◆普通は「巨大=鈍い動き」というイメージがあり、「映像再生速度を遅くすること」「倒れた時に土煙を上げること」で巨大さを表現する場合がある。が、コストがかかる為、そんな工夫が見られない。
◆そもそも、「レッドマン」自体が、「ウルトラマンの原案として出たけれど、没になったもの」である。コスト削減目的のリサイクル感が強い。
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(上画像:レッドマン。手に持っているのが、必殺武器の「レッドナイフ」)
この「あの手この手でコストを削減する」という努力が、レッドマンの戦い方を泥臭くて野蛮な方向に導いてしまいます。
「光線技でカッコよく倒す」というものより、「鋭利な刃物で刺殺」という方が、制作費を格段に削減可能。基本思想はコレです。
基本路線が「安さ追求」であり、そこに「戦闘のバリエーションを増やして、視聴者を飽きさせない作品にする」という向上プランを乗せると、「ナイフでメッタ刺し」等の方向に行かざるを得ない。『レッドマン』の残虐描写は、スタッフが知恵を絞った結果なのです。
「大人の事情」そのものを体現した状況…といえるでしょう。
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スタッフが、「短時間&低予算」という限られた条件下で頑張り、出来上がった『レッドマン』。
この作品が、半世紀近くの時を経て再評価され、現在の状況に至っています。
つまり、「内容がブッ飛び過ぎており、逆に中毒者続出」。
映像のチープさ、お子様には刺激が強すぎる描写、展開のシュールさ…。総合的に見て、レッドマンを超える作品が見当たりません。
特撮好きの方もそうでない方も、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。きっと、良質な笑い話のタネになるでしょう。
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