本日は、SFホラーとサスペンスを合体させた様な内容の、とある名作映画をご紹介します。
怖いのが苦手な方、「異形の怪物」の類が苦手な方は、注意願います。
作品のタイトルは、『遊星からの物体X』です。
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『遊星からの物体X』は、1982年発表のアメリカ映画です。監督は、『ハロウィン』『ゼイリブ』等でもお馴染みの有名監督「ジョン・カーペンター」氏。
『遊星からの物体X』は、南極の観測基地という閉鎖空間を舞台にした、ホラー&サスペンス映画です。
当時はCGが普及しておらず、現在の様な「映像の緻密さ」はありません。が、それを補って余りある「ジワジワ忍び寄る恐怖」と、「誰が襲い掛かって来るか分からないという疑惑・猜疑心」がタップリと盛り込まれた作品。見応え十分です。
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『遊星からの物体X』の内容を、ネタバレにならない程度で述べると、以下の様なものになります。
▼物語の舞台は、1982年。冬の南極大陸。
▼分厚い雪の積もった大地の上で、ノルウェーの観測基地から飛び立ったヘリが、一匹の犬を追っていた。
▼犬を発見したヘリは、スナイパーライフルで犬を狙撃。が、犬の動きが素早く、なかなか命中しない。
▼やがて、犬は「アメリカの南極観測基地」の敷地に逃げ込む。アメリカの観測員達は、ヘリの音に驚いて建物の外に出た。と、逃げ込んできた犬が観測員のそばに駆け寄り、助けを求める様な素振りをする。
▼その犬を追って、ノルウェーの観測隊員もやってきた。ライフルの銃口をアメリカ隊員に向け、何か叫んでいる。しかし、喋っているのがノルウェー語らしく、アメリカ隊員には伝わらない。
▼しびれを切らしたのか、ノルウェー隊員が銃を撃ってきた。弾丸は、犬の傍にいたアメリカ隊員の足に命中。他のアメリカ隊員は驚いて身を隠そうとする。
▼ノルウェー隊員は、アメリカ隊員を完全無視。逃げた犬を追いかけていった。ライフル片手に、アメリカ基地に近付くノルウェー隊員。
▼この状況ではやむを得ない。基地の中に残っていたアメリカ隊員が、ノルウェー隊員を銃で撃ち、ノルウェー隊員は死亡した。
▼怪我人を治療し、事件の顛末を報告しようとするアメリカ基地。が、2週間前から通信状況が悪く、外部との交信ができない。仕方がないので、ノルウェー基地までヘリに乗って出向くことにした。
▼ノルウェー基地に着いた。どうやら、人の気配は無い。そこにあるのは、まるで武装勢力の抗争があったかの様な戦いの跡と、いくつかの死体であった。
▼その死体の中に、何やら奇妙なものがあった。人間の顔が半分溶けた様な、異形の焼死体。「炎にまかれて、こうなったのか?」と疑問に思いつつも、調査・解剖の為にアメリカ基地まで運ぶことになった。
▼その夜。犬小屋で異変が起きる。アメリカ基地で飼っている犬が、急に騒ぎだしたのだ。驚いて犬小屋に集まる隊員たちの前に、驚愕の光景が。
▼そこにいたのは、ノルウェー隊員に追われて逃げてきた犬。いや「犬だと思っていた何か」と表現した方がいいのかもしれない。
皮がめくれて筋肉組織が剥き出しになり、無数の触手を伸ばして気味の悪い体液を撒き散らす肉の塊。犬だと思っていたものは、得体の知れない怪物だったのだ。
▼隊員は、火炎放射器や銃で応戦。怪物を撃退した。
▼怪物の死体を解剖した結果、恐ろしいことが分かった。
▼この怪物は、他の生物にとりついて、その生物の体を細胞レベルで乗っ取る。宿主に巣食う寄生生物みたいなものだ。
▼乗っ取った後は、見た目も中身も宿主そっくりになり、外見だけでは判別不可能。怪物としての正体を現すまでは、全く見分けがつかないのだ。
▼しかも、この怪物は次々に生物にとりついていき、増殖する。恐らく、ノルウェー基地はこの怪物にやられ、隊員や犬が次々に襲われて怪物化していったのだろう。武力抗争の跡の様な惨状になっていた理由は、怪物と人間が戦った為であった。
▼他の生物の体を簡単に乗っ取る。見た目だけでは分からない。そうなると、アメリカ基地の人間の中にも、既に怪物と化した者がいるかもしれない。
▼自分以外は誰も信じることができない、極限の状況。皆が皆、お互いに疑心暗鬼になっている。そうやっている間にも、怪物は着々と乗っ取りを進めていき…
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『遊星からの物体X』が初公開されたのは、先述の通り1982年のこと。ですが、その内容が高く評価され、未だに人気の衰えない傑作として知られています。
また、初公開から30年後の2011年には、続編(正確には前日譚)である新作、『遊星からの物体X ファーストコンタクト』が制作・公開されています。
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『遊星からの物体X ファーストコンタクト』が描くのは、アメリカ基地の惨劇ではなく、ノルウェー基地での惨劇。
基本設定は、1982年版とほぼ同じ。ですが、CGが本格的に採用されており、特殊効果は2011年の方が見事です。
ただ、「ジワジワと襲い来る恐怖や疑心暗鬼」の描写に関しては、1982年版の方に軍配が上がるでしょう。
CG慣れした現代の我々にとっては、CGの無いレトロな恐怖の方が、精神に強く訴えかけてくる。筆者は、そう考えます。
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