当記事は、法律に関する考察です。
筆者は法曹関係者ではありませんので、「法学部の学生が考えた」くらいのものとして読んでください。
テーマは「医薬部外品の”うがい薬”を、転売ヤーが買い占めて・フリマサイト等で高額転売すれば、違法行為として捕まるのでは?」というものです。
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読者様もご存じの通り、今「うがい薬」が市中から消えています。その理由は、大阪府知事と大阪市長が会見を開き、「うがい薬が、新型コロナウイルス対策に使えるかも知れない」という発表をやった為です。
www.nikkei.com(2020/8/4)
www.youtube.com(2020/8/4)
うがい薬に含まれる成分の中に、「ポビドンヨード」と呼ばれるものがあります。この成分が、新型コロナウイルスの予防or症状改善に効果があるのでは?…という研究結果が出て、その詳細を大阪府・吉村知事が記者会見の場で説明しました。
ただ、吉村知事は「効くと断言できない」「効くかも?という研究結果がひとつ出ただけ。もっとよく調べねばならない」と言っています。
ポビドンヨードがコロナの特効薬とは言っていない。そこは確かです。
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ただ、この手の話に弱い人は多い。
記者会見の話が流れると、急いでドラッグストアに走り、うがい薬を買い求める人が続出。店のうがい薬コーナーが、どこもカラッポ。マスク騒動の再来みたいな状況になりました。
そして、フリマサイト等で高額転売を図る連中も出現。いわゆる「転売ヤー」です。これもマスク騒動と同じ状況です。
www.itmedia.co.jp(2020/8/4)
が、マスク騒動の時と違うのは、ポビドンヨードを含むうがい薬は「医薬品」として扱われるものが多く、薬機法(旧・薬事法)で「医薬品は、転売ヤーによる転売禁止」とされている点です。正式な許可を得た者でないと、売ってはいけません。厚生労働省HPにも明記されています。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/topics/tp131111-01_1.htmlより。改行・強調等は筆者によるもの。以下同)
ちなみに、もし違反した転売ヤーがいたら、最悪「三年以下の懲役or三百万円以下の罰金orその両方」となります。立派な犯罪行為です。
(参考:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000145#1631 薬機法第84条9項)
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この「医薬品の転売は危険」という話。転売ヤーの中でも浸透しており、出品する者が少ない。また、転売サイトの運営も知っており、出品があれば速攻で削除される傾向にあります。
そこで転売ヤーが考えたのは、「医薬品ではなく、医薬部外品なら転売OKじゃね?」という話。
医薬部外品とは、「医薬品ほどの強烈な治療効果は無いが、予防くらいには使える」といった品です。医薬品と化粧品の間くらいの品で、歯磨き粉などが該当します。
この話に乗っかって、医薬部外品のうがい薬を・超絶高額で転売する連中が湧いています。
例えば、下記画像にある「イソジンクリア」は、医薬部外品のうがい薬。この手の商品が、フリマサイトやネットオークションに出品され、定価の数倍~数十倍もの値段が提示されています。
(提供:Amazon)
しかし…医薬部外品であれば、何を転売してもOKなのでしょうか?
いや、筆者はそう考えません。
「転売が違法になるかも知れない医薬部外品」に、心当たりがあります。
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その根拠となるのは、先程名前が出た「薬機法」ではありません。今年5月に出た、「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」です。
www.meti.go.jp(2020/5/22)
この政令は、コロナ騒動で問題視された「必需品の高額転売」を防止する為に発せられました。この政令によって、「アルコール消毒薬の、高額転売禁止」が取り締まり対象になったのです。
では、「取り締まり対象となる消毒薬」とは、どの様な品物なのでしょうか?
これも、上記リンクに明記されています。
※消毒等用アルコールとは、
消毒等(消毒、殺菌その他これらに類する行為)に使用されることが目的とされている
①アルコールを含有する医薬品・医薬部外品
及び
②医薬品・医薬部外品以外のアルコール分60度以上の製品
を指します。
(https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200522003/20200522003.html)
上記引用によると、「殺菌に使うもので、アルコールを含む医薬部外品であれば、高額転売禁止品」となります。
では、今回問題となった「医薬部外品のうがい薬」はどうなのでしょう?
先に名前が出た「イソジンクリア」の成分表を見てみると…
www.amazon.co.jp(2020/8/5閲覧)
原材料・成分
セチルピリジニウム塩化物水和物250mgグリチルリチン酸二カリウム250mg
添加物としてエタノール I-メントール サッカリンナトリウム水和物 pH調整剤 香料を含んでいます
(https://www.amazon.co.jp/dp/B07F8CK8B2)
「エタノール」とありますね。これ、「消毒用アルコール」のことです。
添加物ではありますが、成分にアルコールが含まれている。これ、「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」に引っかかるのでは?
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試しに、他の医薬部外品も調べてみましょう。
フリマサイトでよく見かける医薬部外品「コルゲンコーワうがい薬」の成分は、以下の通り。
(提供:Amazon)
原材料・成分
成分・分量(1mL中)/セチルピリジニウム塩化物水和物2.5mg、グリチルリチン酸ニカリウム2.5mg、l-メントール5.0mg、チョウジ油0.25mg、ハッカ油1.5mg
(https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07WCM3LYM/987ujk58gmpmo-22/)
やはりエタノールが含まれています。こういう製品は、かなり多い。
「国民生活安定緊急措置法施行令の一部を改正する政令」を厳密に解釈すれば、転売禁止品に見えてきます。
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筆者の調査した範囲では、今のところ「医薬部外品にもアルコールが含まれる」という話をされている方は…いません。是非、専門家の意見を伺ってみたいところです。
筆者も、可能な範囲で関係機関に問い合わせてみようと考えています。
なお、もし筆者の考えが正しかった場合、転売ヤーは逮捕される可能性アリ。その場合、国民生活安定緊急措置法・第26条違反ということで、刑事罰を喰らうかも知れません。罰則を定めているのは、同法の第37条です。
第三十七条
第二十六条第一項の規定に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反した者を五年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する旨の規定を設けることができる。
(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=348AC0000000121#140)
筆者の考えが間違っていた場合は、「勉強不足だ」と笑って頂ければ結構です。
筆者の主張は「法律の解釈論」であり、何も断言していません。逮捕者が絶対出るとも言っていません。あくまで「そういう解釈も可能では?」というレベルです。
「医薬部外品うがい薬」の高額転売を続ける方がいても、筆者に止める権利はありません。
転売を続けて利益を得るのも、違法転売で逮捕されるのも、全て転売ヤーさん達自身の問題です。その覚悟があって、転売ヤーをやっているハズ。覚悟は貫いてくださいませ。
--------------(記事了)--------------