記事本文に入る前に、先ずは軽く注意書きをば。
当記事は、ホラー&スプラッター映画に関するものになります。怖いものや血しぶきが苦手な方は、閲覧注意です。
ただ、普通のホラー映画と少し違うのは…。
「怖いだろ!そら怖がれ!」という制作者の意図は伝わってくるのですが、どこか空回りしている感じがあり、珍奇な印象を受けてしまう…という点。
見方によっては、ホラーではなくコメディに見えてしまうかも?
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では、作品紹介に移りましょう。
今回紹介するホラー映画のタイトルは、『口裂け女 in L.A.』です。
タイトルを見れば一発でお分かりになると思いますが、「口裂け女が、アメリカ・ロサンゼルスで暴れる話」ですね。
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「口裂け女」は、日本の有名な都市伝説です。その内容は、
(1)マスクを付けた若い女性が、通行人に「私、綺麗?」と尋ねる。
(2)通行人が「綺麗ですよ」と答える。
(3)すると女性は「これでも綺麗?」とマスクを取ってこちらを見る。
(4)そこにはコメカミ辺りまで大きく裂けた口を持つ、化け物がいた。
…というもの。
この伝説でお馴染みの口裂け女が、アメリカ西海岸の大都市・ロサンゼルスで暴れるという、コテコテのホラー作品。それが『口裂け女 in L.A.』です。
まぁ、出てくるのは口裂け女だけじゃないんですが、あまり言うとネタバレになってしまうので…詳細はカットします。
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『口裂け女 in L.A.』の特徴は、「日本の都市伝説的なものを、ふんだんにミックスしている」という点です。
中でも目を引いたのは、劇中で「こっくりさん」を使うシーンです。
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「こっくりさん」も、口裂け女と同じく、日本の有名なオカルトネタです。
文字・数字・はい/いいえ・鳥居の絵…等々が書かれた紙の上に硬貨を置き、その硬貨の上に人が指を乗せて質問すると、硬貨に宿った「こっくりさん」という霊的な何かが硬貨を動かし、答えとなる文字を指し示していく。
かなり古くからある、降霊術みたいなモンですね。この「こっくりさん」を用いて、事件の原因や対策を探ろうとするシーンがあります。
ここで、あえて「こっくりさん」を出す制作サイドに、日本へのコダワリを感じます。
西洋には「ウィジャ盤(ウィジャボード)」という、「こっくりさん」とほぼ同じものが存在しています。物語の舞台・アメリカでは、ウィジャボードの方に親しみがあると思われますが、制作サイドはウィジャボードを使わなかった。
トコトン「日本の」都市伝説を前面に押し出す、そんな気概が伝わります。
(提供:Amazon)
(上画像:ウィジャボード)
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上記の様に、『口裂け女 in L.A.』は、日本色豊かなホラーです。
が、実際に見てみると、どこか奇妙。いわゆる「ニンジャ映画」「サムライ・ハラキリ映画」と同じく、ノリで改造されたと思しき部分がチラホラ存在します。
例えてみれば、アメリカ生まれの寿司「カリフォルニアロール」みたいなもの。原型を留めているかどうか、微妙な感じです。どこか曲解している雰囲気があります。
しかし、この作品…実は、スタッフに日本人が多い。出演俳優は外国人だらけですが、主要スタッフの大半は日本人です。
その為、「アメリカのノリで、日本の都市伝説を曲解した」のではなく、「アメリカでウケ易い様に、日本人が日本の雰囲気を加工した」と表現した方がよいのかも?
「寺生まれのTさん」みたいなキャラも出て来ますしね。このキャラは、単なるノリだけで出せるキャラではない。日本のネット(主にオカルトを茶化す掲示板)を使いこなすレベルでなければ、発想に至らないキャラです。
そう…強いて言えば…
『口裂け女 in L.A.』は、流血要素多めの『学校の怪談』といったところです。
(提供:Amazon)
ホラーなんだけど、微妙にホラーではない。
日本の都市伝説を曲解している風に見せかけて、実は理解度が深い。
『口裂け女 in L.A.』は、奇妙な魅力を持つ作品です。
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