「レートが低ければ、麻雀賭博しても捕まらない!」
「なぜなら、検察幹部が麻雀賭博やってもお咎めなしだもの!」
この話が出たのは、2020年5月のこと。まだ覚えていらっしゃる方も多いでしょう。
元検察幹部の「黒川弘」氏に関する事件です。
bunshun.jp(2020/5/26)
賭博を取り締まる側の最高幹部が、常習的に賭博をやっていた。
賭博をやった本人が認め、その上司である森法務大臣も認めた案件。冤罪ではありませんね。
マトモに捕まれば、犯罪者として裁かれる可能性が強烈に高かった案件ですが、今では有耶無耶。その曖昧さが災いし、「司法・行政のいい加減さ」を象徴するものとして、歴史に刻まれました。
今後、同様の賭博案件が出てきた時に、必ず「黒川の時は何もなかったのに、なぜ今回は問題になるのか?」と言われるでしょう。
黒川基準は、半永久的なネタと化した感があります。
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あれから一ヶ月。
早速発生しました。
「麻雀賭博」の案件が。
www.tokai-tv.com(2020/6/18)
違いはどこに? 1000点100円の“点ピン麻雀で摘発”…常習賭博等の容疑で客ら6人が書類送検
岐阜市で賭けマージャン店が警察に摘発され、経営者や客などあわせて6人が書類送検されました。店では「点ピン」と呼ばれるレートで賭けマージャンが行われていたとみられます。
書類送検されたのは、岐阜市で営業していた賭けマージャン店の男性経営者(55)や客ら合わせて6人です。
このうち男性経営者が賭博開帳図利の疑い、74歳と48歳の男2人が場所を提供した賭博開帳図利幇助の疑い、そして客3人が5月7日に麻雀賭博をした常習賭博の疑いが持たれています。
(https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20200618_130493 より。改行等は筆者によるもの。以下同)
上記記事のタイトルに、「違いはどこに?」という文言がありますね。
これは、「麻雀賭博をやったのだが、黒川氏の時は何もなかったのに、今回は摘発・書類送検された。その違いは何?」という意味です。
予想通り、麻雀賭博事件と黒川基準がワンセットになっていますね。
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では、その違いとは?
上記記事の続きを読むと、ある程度の推測が可能になります。
店は岐阜市内のアパートの一室で営業していましたが今年5月に近隣住民から騒音に関する相談が寄せられ、警察が店を調べたところ、賭けマージャンの実態が発覚しました。
警察によりますと店では、1000点100円のいわゆる「点ピン」と呼ばれるレートで賭けマージャンが行われていたとみられるということです。
「点ピン」は、黒川弘務・前東京高検検事長が、新聞記者と賭け麻雀に興じた際のレートと同じです。
このほか男性経営者は、ゲームに勝った客から場所代として1000円を徴収し、アパートの家賃に充てていたとみられるということです。
警察は仲間内で賭け麻雀をしていたとみて、店の実態について詳しく調べています。
(https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20200618_130493 )
上記案件と黒川基準を比較すると…。
同じ点は「仲間内で賭博やっていた」「1000点100円の”点ピン”レートだった」というところ。このレートで賭博やれば、1回の勝負につき3000円程度のお金がヤリトリされる見込みになります。
黒川基準では、「点ピン程度の麻雀賭博では、捜査対象にもならない」と解釈できます。特に気になるポイントではなさそう。
黒川基準と違う点は、以下。
◆状況から推測するに、賭博場にしていたマンションへ警察が踏み込んで、賭博の現場を押さえた。
◆賭博場の経営者がいた。
黒川氏の場合は、現行犯ではなく「犯行後に告白」という形でした。また、賭博場の経営者という人物が登場していません。今回の話とは、ちょっと違いますね。
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ただ、これらの要素から導き出されるのは…
(1)賭博の事実を後で告白しても、現行犯でなければ問題にならない。
(2)レートが「点ピン」なら、問題にならない。
(3)「賭博場として経営している場所」を避ければ、問題ない。
(4)上記1~3の要素をクリアした上で、仲間内ならば問題ない。
こういう結論になってしまいます。これでいいのか?
刑法では「賭博は駄目」とされており、各種判例では「金銭を賭けるのは大問題」とされている。筆者はそう理解していますが…
黒川基準との間に齟齬があるというか、何ともスッキリしない感じ。恐らくは、筆者の法的知識や解釈基準がズレているのでしょう。
まぁ、黒川基準は生まれたばかりのもの。捜査や裁判の場でどう使われるかは、まだまだ未知数です。
「黒川基準で考えれば、この賭博は大丈夫」と思っていても、それは個人的な見解。司法サイドがどう考えるかは別です。そういう意味で、筆者は賭博をオススメしません。止めた方がいい。
恐らくは、遠からず「黒川基準に照らすと、今回の賭博案件は捜査対象にすらならないハズだ」と、裁判の場で主張する弁護士さんが出てくるでしょう。
その時、裁判所がどういう判断を示すのか。筆者は、強烈な興味を持って見ています。
--------------(記事了)--------------