今に始まったことではありませんが、「転売ヤー」に対する世間の風は冷たいものです。
ここでいう「転売ヤー」とは、市場に出回っている品物を買い占め、定価よりも強烈に高い値段で売ろうとする連中のことです。
主には、ネット上の個人商店サイト・オークションサイト・フリマアプリ等々を使って、不特定多数に販売しています。
最近では、「マスク」や「消毒液類」が転売ヤーのターゲットになり、一般消費者が難儀しました。
マスクの品不足は改善されつつありますが、消毒液類はもうひとつ。転売ヤーが荒らした痕跡は、未だに色濃く残っています。
そんな転売ヤーの次なるターゲットは、どうやら「ICカードリーダー」とのこと。
これは、パソコンの周辺機器の一種であり、身分証など「ICチップを内蔵したカード」でオンライン手続きをする際、必要になるものです。
(提供:Amazon)
www.itmedia.co.jp(2020/5/9)
注意したいのはICカードリーダーだ。
パソコン工房秋葉原BUYMORE店は「マイナンバーカードで10万円給付を受けたいということで、急速に需要が高まっています。既にかなり品薄になっています」と話す。
同店ではNTTコミュニケーションズの「ACR39-NTTCom」を1人1本の条件付きで販売中だった。
(https://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/2005/09/news015_2.htmlより。改行・強調等は筆者によるもの。以下同)
新型コロナウイルスで経済が急速に悪化し、その対策として配布される「10万円の特別定額給付金」があります。
この給付金は、「マイナンバーカードを使えば、オンラインで申し込みが可能」となっています。が、マイナンバーカードはICカードであり、オンラインで使用するにはICカードリーダーが必要になります。
その為、ICカードリーダーが品不足である。上記記事は、その様な情報を掲載しています。
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で、この「ICカードリーダーの品不足」ですが…マスク等と同じく、どうも転売ヤーの悪さが見え隠れしているのです。
その話を報じたニュースサイト「しらべぇ」の記事(2020年5月6日付)を、下記に引用します。
現在、「転売ヤー」たちの中では同アイテムを転売するのがトレンドになっているという。
そこで記者(私)が実際にフリマサイトをチェックしてみると…。
フリマアプリ『メルカリ』で「カードリーダ」の出品状況を調べると、確かに多数の商品が出品されている。
定価に近い値段で出品しているユーザーも見られたが、定価から1,000円前後値上げをしている出品者がかなり多い印象を受けた。
また「開封済み」でなく「新品未開封」の状態で販売している人が多いことからも、カードリーダの転売が盛んに行なわれていることが伺えるだろう。
(https://sirabee.com/2020/05/06/20162318836/)
筆者も、各種フリマアプリ・オークションサイトをチェックしてみました。
確かに、ICカードリーダーの「未開封品」が多数出品されており、買い手が付いたものもチラホラ。
値段は、定価より少し上から始まり、高いものでは倍額以上で出品されています。
典型的な「転売ヤーのやり方」ですね。
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ただ、今回の「ICカードリーダーの転売」は、転売ヤーにとって「かなりリスキーな話」だと考えられます。
なぜならば、飛びつく人が多くないと考えられるからです。
そもそも、急いでICカードリーダーを入手したい人は、今回の「10万円の特別定額給付金」を目当てにした人が大半でしょう。
しかし、特別定額給付金の申請は、ICカードリーダーを使わずとも、別の方法が複数あります。
最も代表的なのは「郵送」ですね。
役所から送られてくる用紙に記入し、返送すればOK。「オンライン」の欠片もない、アナログな方法です。が、これでも十分。
筆者も、これで申請するつもりです。
また、「スマートフォンを使って申請する方法」もあります。この場合、ICカードリーダーを買わなくてもOKです。
詳しくは、総務省のページに分かり易い解説が掲載されていますので、そちらをご覧くださいませ。
kyufukin.soumu.go.jp(2020/5/11閲覧)
この様に、ICカードリーダーを無理に買わなくても、申請方法はあります。
むしろ、ICカードリーダーを使う方が面倒かもしれません。
その状況で、転売目的の為だけにICカードリーダーを仕入れ、定価より高値で売ろうとする転売ヤーの人々。ちゃんと売り切れるのでしょうか?
マスクや消毒薬などの消耗品であれば、転売できなくとも自ら使えばいい話。
しかし、ICカードリーダーは年単位で使えるものであり、パソコン1台につき1個あれば十分の品物です。沢山あっても邪魔でしかない。
「金を儲けようとしたが、ドブに捨てたのと同じになった」という状況に…。
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そういえば、「失敗した転売ヤー」の話が、先日見た雑誌に載っていました。
消毒薬を大量に仕入れたけれど、転売に失敗して大損ぶっこいた挙句、身元がバレてフルボッコになったという話。
jisin.jp(2020/3/16)
実名と顔写真が報道されて、「最も嫌な意味での有名人」になったことだけでも大失敗ですが…。
損金を計算してみると、少なくとも1500万円くらいはドブに捨てたのではないかと思われます。
リスクを考えないままで行動した者の末路は、こんなモンでしょう。
転売ヤーとは、常にこの手のリスクと隣り合わせ。
お金を失うだけではなく、周囲からの迫害を覚悟しなければならない。
やるモンじゃないですね。
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当記事を書いていて、思い出した話があります。
それは「アメリカで起きたゴールドラッシュ時に、一番儲けたのは誰か?」という話です。
西暦1850年頃、「アメリカ西海岸・サンフランシスコ近辺で、金(ゴールド)が採れる」という話が湧いて出て、各地を駆け巡りました。
一攫千金を狙い、ゴールド採掘に集まった人々は数十万人とも言われています。
「このゴールドラッシュで、一番設けたのは誰か?」という問いに対し、多くの方から返ってきた答えがコレ。
「金を採る連中よりも、採掘用の道具や作業着を売った連中の方が儲かった」
その中に、ジーンズメーカー「リーバイス」の創業者がいたことは、有名な話です。
www.levistrauss.co.jp(2020/5/11閲覧)
出るかどうか分からないゴールドを当てにするより、「地に足のついた商売」をした方が儲かるし、長持ちする。
ゴールドラッシュが終わっても、地に足のついた商売は終わらない。
絵に描いたような、分かり易い話ですね。
現代の「転売ヤー騒動」にも、同じニオイがします。
転売ヤーが「品不足だぞ!」「高くても買え!」と消費者を煽り、儲けを狙っているワケですが…。
その転売ヤーが、既に他者から「転売で儲けよう!」と煽られて、うまく乗せられている…という感じがします。
地に足がついていない。
まぁ、そのリスクも十分承知の上で、転売ヤーさん達は活動しているハズです。それが商売というもの。
商売の世界は、深くて難しく、怪我の危険があちこちに存在します。
決して簡単な道ではありませんね。
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