本日の当ブログでは、「2020年3月28日(つまり今日)開催された、安倍総理の会見」について、ちょっとひとこと申し上げたい。
テーマは「伝え方を少し工夫するだけで、印象は改善される」という話です。
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本日の総理記者会見。
主な内容は、「新型コロナウイルスに関する現状と対策」について。
会見の詳細は、以下の記事に詳しく載っている為、申し訳ございませんが当ブログでは細かく触れません。
ただ、こういう時は「ひとつの媒体だけで済ませるのではなく、複数の媒体を見比べることが重要」になってきます。
その例として、「朝日新聞」と「産経新聞」の記事へのリンクを貼らせて頂きます。この二紙は、様々な面で正反対の記事を書く傾向があり、メディア比較のいい練習になります。
安倍首相関連記事の場合、朝日は批判的な記事が多く、産経は擁護的記事が多い。
なお、今回の産経は、当ブログを書いている時点(3/28の22時頃)で「内容をまとめて評価する記事」を出しておらず、ブツ切りの短記事しか出していません。その為、記者会見の書き起こしを載せた記事をリンクしておきます。
www.asahi.com(2020/3/28)
www.sankei.com(2020/3/28)
上記記事の内容を簡単にまとめると、以下の様な感じです。
◆海外の状況が非常に厳しいのは周知の通り。これは対岸の火事ではない。
◆日本は、ギリギリの所で止まっているだけで、いつ爆発的感染が起きても不思議ではない。引き続き、密集・密接・密閉の「感染しやすい環境」を作らない様に気を付けて欲しい。
◆既存の新型インフルエンザ治療薬「アビガン」が新型コロナウイルス対策にも使えるのではないか?…との報告があり、治験(患者への試験投薬)を始める予定。
◆緊急経済対策として、融資や助成金の枠を強化する。国民に現金を配ることも考えているが、全員に配るのではなく、対象は絞る。
◆消費税減税や、イベント自粛・中止で損害を被った事業者への特別補償は、難しいし考えていない。
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安倍総理の演説には、「かつてない」「躊躇なく」「大胆な」「適切に」といった、フワフワのイメージワードが多いのは相変わらずであり、批判が減っていないことは確かです。
が、前回・前々回の会見に比べて、具体性は上がっていますね。
ただ、具体性は上がったけれど、十分かどうかは別問題。
政治も仕事。ビジネスの礼儀や常識が求められるハズ。
そうなると、危機的状況への対策を語るには、「5W1H」の要素が欠かせないことになります。これ、新入社員からベテラン社会人に至るまで、仕事人なら意識しなければならない要素です。
5W1Hとは、
◆Who(だれが)
◆When(いつ)
◆Where(どこで)
◆What(なにを)
◆Why(なぜ)
◆How(どのように)
を指す言葉。この「5W1H」を意識し、分かり易く・明快な文章で語り掛けることで、情報伝達がスムーズにいきます。
逆に言えば、「5W1H」を意識していない文章は、「ただ長いだけで意味不明」「まともに答える気が感じられず、気分が悪い」というマイナス評価を生みます。
(イメージ画像 https://chojugiga.com/2017/07/04/da4choju36_0021/)
安倍総理の演説には、上記の「5W1H」を重視する姿勢が…いまいち感じられない。
それを助長しているのが、「いわば」「まさに」などの言い換えや、「躊躇なく」「かつてない」などのイメージワードです。
これらの言葉は、「5W1H」を薄めて有耶無耶にしてしまいます。不要です。
上記の様な「無くてもいい文言」を削るだけで、随分スッキリした表現になります。スッキリした表現になれば、聞き手側にとっても分かり易いし、「話が分かり難い」「長い」とイライラを生むことも無い。話し手・聞き手の双方にとってお得です。
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この「5W1H」。本日の会見で、どう使えるのか?
その例を考えてみましょう。
質疑応答の際、「現金給付や助成金など、経済対策はどうするのか?」という記者からの質問に、安倍総理はこう答えています。
給付金、現金の給付を行います。これは収入が減っている方々もそうなんですが、最初に申し上げましたように、中小・小規模事業者の皆さんや個人事業主の方々も、いわば経営を継続していく上において、考えていきたいと思ってます。そこで、国民みんなに給付を行うかどうかということでありますが、リーマン・ショックのときのですね、あのときも給付金を行いましたが、あのときのことも、経験を鑑(かんが)みればですね、やっぱり効果等を考えれば、そういうターゲットをある程度おいて、思い切った給付を行っていくべきなんだろうなというふうに考えております。
(https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/200328/plt20032819270028-n1.html)
上記で、260文字程度ですが…ちょっと長くて分かり難い。
「5W1H」を意識して答えるならば、「現金給付や助成金など、経済対策はどうするのか?」という問いに対し、答えるべきポイントは以下の要約通り。
◆Who(だれが)→日本政府が給付する。
◆When(いつ)→これに関しては何も言ってない。
◆Where(どこで)→何も言っていない。「役所」なのか「銀行」なのかよく分からない。
◆What(なにを)→現金を給付する。
◆Why(なぜ)→個人については減少した収入の補填を目的に。経営者については事業継続の援助に。
◆How(どのように)→リーマン・ショックの時にも給付金を支給した。その時の経験を基に判断するが、国民全員に配るのではなく、対象は絞る。
このポイントを文章にまとめれば、下記の様なものになります。
質問:「現金給付や助成金など、経済対策はどうするのか?」
総理の回答:「日本政府が、現金を支給します。支給の目的は、個人については減少した収入の補填、経営者については事業継続の援助となります。
いつ・どこで給付するかは未定ですが、〇週間以内に大枠を決める予定です。かつてのリーマン・ショック時にも給付金を支給しましたが、その経験を基に判断・決定します。
なお、支給による経済効果が最も高くなる様に考えて、配る対象を絞ります。」
上記で、170文字程度。「5W1H」を意識する前で260文字程度だったので、35%の削減になりますね。
これで時間の節約にもなるし、簡潔で分かり易い。
会見をやるなら、こういう工夫も大事ではないでしょうか。
ただやればいい…というものではありません。
特に、今は非常事態。聞き手はイライラしています。その心理状態を前提に会見を行い、「上手に伝える」様な質疑応答をやれば、支持を得られるでしょう。
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【参考書籍 書店リンク】