ツイッター等のSNSで、こういう文言を書くアカウントが多い。
読者の皆さんも、一度は見たことがあるでしょう。
「現金・金券プレゼント企画!」
「このアカウントをフォローし、このツイートをリツイート(拡散)するだけで、プレゼントが当たる!」
「プレゼントの中身は、現金やギフトカード!」
上記のツイートを頻繁に流すアカウントは、その多くが「投資会社の社長」だったり、「新しいビジネスを始め、短期間で月収数百万になった、元社畜」という感じのプロフィールを記載しています。
プレゼント企画ツイートには、「札束の写真」や「ギフトカードの山」が写った画像が添付されており、景気の良さを醸し出しています。
この記事を読んで頂いている読者様の中にも、上記のプレゼント企画に参加した方がいらっしゃるかも?
筆者は、この類のプレゼント企画に参加したことはありません。
何故ならば、「そんな景気のいい話が、そうそう転がっているワケがない」と考えるから。
この考えを、そのまま映像化した番組が、先日放送されていました。
番組名は、NHKの「クローズアップ現代+」です。
www.nhk.or.jp(2020/3/4)
「フォロー&リツイートだけで現金をプレゼント!」。
今、こうした「プレゼント企画」をうたうアカウントがSNS上に乱立し、応募した人が手数料をだまし取られたり、投資話に巻き込まれるケースが後を絶たない。
そして、多くの運営者の真の目的は「アカウント売買」とも言われる。
注目を集めやすい動画でフォロワーを増やした後、そのアカウントごと転売。数万人のフォロワーがいるアカウントは数百万円という高額で転売されている。
さらに、集められたフォロワーはだまされやすい情報弱者とされ、そのアカウントが高値で流通。新たな詐欺商法に利用される構造も浮かび上がってきた。
(https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4393/より。改行等は筆者によるもの)
番組によると、「プレゼント企画」に応募した人は、以下の被害に遭っているとのこと。勿論、約束されたプレゼントは手に入らない。
◆「当選したが、賞金の受け取りには特殊なアプリが必要」として、電子決済アプリのインストールを強要される。
その後、プレゼント企画者から「賞金の受け取りには手数料が必要だから、そのアプリを使って数万円(3万円程度の少額)を振り込んで欲しい」と依頼が来る。
相手の言う通りアプリに入金したら、その瞬間お金を取られ、その後は連絡がつかない。
◆ひたすら個人情報を聞かれ、律義に答えるも、賞金や商品は一切届かない。
要は「個人情報の収集だけを目的にしており、プレゼント企画ではない」という話。
◆応募して当選したはいいが、「出会い系サイトの登録」や「簡単に儲かる情報を書いた商材の購入」を勧められる。商品や賞金は届かない。
つまり、「プレゼント」というのはただの口実であり、本当の目的は「応募者から金なり情報なりを奪う」ということ。これが企画の正体である。
NHKの「クローズアップ現代+」では、そう結論づけています。
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「じゃあ、添付画像に写った札束は、一体何なの?」
「あれだけ大量のお金を持っている人が、嘘をついて小金を稼ぐ必要があるの?」
こう考える読者様もいらっしゃるでしょう。
普通に考えれば、確かにそうなのかも知れません。
律義に「アカウント名や投稿日付を記した”手書きメモ”を、札束と一緒に撮影する」といった手間をかける人もいます。
手書きメモならば、「札束の画像だけ他から持ってくる」という手法がやり難いですからね。信用度が上がります。
しかし、
札束画像はパクリやコピペではなく、企画者が撮影した本物だとしても…
札束が偽物だったら?
こう考える人は、そんなに多くないでしょう。そこに落とし穴があります。
例えば、この札束画像をご覧ください。
パッと見れば、300万円はありますね。
これが山積みになっていれば、「凄い金持ちだ!」と考えるでしょう。
しかし、この画像にある札束は、ひとつ300~1000円くらいの価格帯で買えます。
実はこれ、「札束風のメモ帳」なのです。
「新聞紙で作った、偽の札束」というものは、昔の刑事ドラマなんかに出てきました。それよりもっと精工なものが、上記画像の商品です。
中身は、お札と同じ色のメモ用紙。その束の一番上に、本物のお札を一枚乗せるだけで、即席の札束が出来上がります。
これは、元々「ジョークグッズ」として販売されているもの。違法でも何でもありません。
中には、下画像の様な品もアリ。
よく見ると、お札の額面が「百万円」となっていますね。帯封にも「メモ帳」の文字が書いてあります。
ここまですれば、誰でも偽物だと気付きます。この手のジョークグッズは、そこかしこで売られています。
「札束画像を添付した、プレゼント企画ツイート」を流す人は、高確率で札束の表面しか見せていません。
たまに中身を見せる人もいますが、多くの場合「その札束を配る」とは約束していません。ただの「見せ金」かも知れない。
自分の貯金で、100万円くらい持っている人は大勢います。引き出せば、画像撮影に使えます。撮影後は、また口座に戻せばいいだけ。
また、自分の貯金で100万円を用意できなくても、借りることは可能。
キャッシング(借金)で、「30日間は無利息」というサービスを行うところもあります。札束を借りて、30日以内に様々な画像を撮影して返済すれば、利息ゼロで元金を返すだけで済みます。
手数料くらいはかかるかも知れませんが、小道具代金と考えれば安いもの。
画像に写る札束が、きちんと配布される金かどうか、応募者に判断する能力はありません。
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「札束はそうだとしても、画像に写ったギフトカードの山は何なの? 偽物じゃないでしょ?」
こう考える読者様もいらっしゃるでしょう。
プレゼント企画の添付画像には、よく「amazonギフトカード」や「itunesカード」の様な、ネットで使える金券が登場します。
しかも「数十枚はあろうかという、山盛り」の状態で。
このカードをプレゼントするという口実で、誘ってくるツイートは多い。
この手のカードには、上記で紹介した「札束メモ帳」といった偽物は見当たりません。画像に写ったカードは、恐らく本物でしょう。
しかし、「使用前のカード」かどうかは、画像を見ただけでは分からない。
既に使用した後のカード、即ち「プラスチックごみと化したカード」の可能性があります。
実は、使用済みカードの束は、ネットで簡単に手に入ります。主に「フリマサイト」で売買されていることが多い。
(参考:amazonギフトカード 使用済み 販売 Google 検索)
(参考:itunesカード 使用済み 販売 Google 検索)
上記検索でヒットする使用済みカードは、その多くにちゃんと「使用済み」と明記されています。
ただのゴミなのですが、「プラモデルを装飾する材料」等に使えないこともない。販売自体は問題ないのでしょう。
価格帯はピンキリですが、筆者の確認した範囲では「使用済みのもの、一枚当たり、10円程度の価格」で入手可能です。
これを使えば、「山盛りカードの画像」を撮影することは簡単です。
プレゼント企画の添付画像では、多くの場合、カードの裏面までは見せていません。
使用済みカードであれば、裏のスクラッチ部分(コイン等で削る銀のコーティング部分)が削られており、番号が見えているハズ。
裏面まで見せて貰わないと、使用前か使用済みか判断できませんね。
ただ、フリマサイトで売られている使用済みカードには、「スクラッチ部分はそのままですが、このカードは使用済みで使えません」という、なんとも意味深なコメントを書いているものがあります。
メチャメチャ怪しい…。
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この様に、「プレゼント企画」には、かなりの不審点が存在します。
先述の「クローズアップ現代+」で取り上げられていましたが、詐欺被害に遭った方もいらっしゃいます。
企画参加を止めはしませんが、かなり用心した方がいいでしょう。
他方、プレゼント企画が、本当に存在することも確かです。
名の通った企業さんが、公式アカウントにてプレゼント企画を行っているのは、よくある光景。企業の宣伝行為として、特に珍しくないものです。
この場合、「嘘ツイート」が発生する可能性は低い。なぜならば「嘘を流して後でバレた場合、信用度を落とすデメリットが巨大であるから」です。
個人レベルでも、億単位の金を配る人がいます。ZOZOTOWNの元社長・前澤氏が、その典型例。
「前澤氏から当選の連絡が来たのに、お金が振り込まれません」という話は報道されていないので、恐らくはキチンと振り込んでいるのでしょう。
もし詐欺なら、マスコミが黙っていないハズ。
逆に考えれば、「前澤氏レベルの人でないと、札束を配る能力はない」と言えるでしょう。
前澤氏の資産は、1億や2億ではありません。「1000億円を記帳する動画」が話題になりましたね。そのレベルです。
知名度があり、資産もある。そこまでの人でないと、多額の現金をバラ撒く企画は難しい。そう考えた方がよいでしょう。
正体不明の者が言い出した、SNS等で流れているプレゼント企画。
それ、信用できますか?
うまい話には、裏がある。
--------------(記事了)--------------
なお、本記事で使用した「札束風メモ帳」の画像は、全て「Amazon」さんから提供して頂きました。
(参考:【Amazon】「札束 メモ帳」検索結果)