本日のニュースの中に、嫌な話がありました。その内容は、
「本物の警察官が、特殊詐欺の受け子(現金やカードの回収係)になっており、悪事がバレて逮捕された」
というものです。
www3.nhk.or.jp(2019/11/1)
特殊詐欺に関わった疑いで先月31日逮捕された神奈川県警の24歳の巡査が「数百万の借金があり金が欲しかった」と供述していることが捜査関係者への取材でわかりました。
神奈川県警第1交通機動隊の巡査、蕪木紀哉容疑者(24)は、先月横須賀市の80代の男性の自宅を訪れ、男性からキャッシュカード2枚を盗んだとして31日、逮捕されました。
男性の自宅には警察官を名乗る男から「逮捕した詐欺事件の犯人があなたの口座から現金を引き出している」などとうその電話がかかっていて、蕪木巡査は、特殊詐欺グループで金品を受け取る「受け子」だったとみられています。
調べに対し容疑を認め「警察官という立場にもかかわらずすみません」などと供述しているということです。
さらにその後の調べに対し「数百万円の借金があり金が欲しかった。何回かやった」と供述していることが捜査関係者への取材でわかりました。
警察は借金返済のために詐欺に関わったとみて詳しく調べています。
(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191101/k10012160421000.htmlより。改行・強調等は筆者によるもの。以下同)
容疑者の名前は、蕪木紀哉。見慣れない苗字ですが、これで「かぶらき」と読みます。
階級は巡査。会社でいえば、役職の無い普通社員です。
現段階では、本人も容疑を認めています。全くの冤罪では無さそう。
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今回の手口は、ここ最近よく聞く「キャッシュカードのすり替え」とのこと。これは、以下の手順で被害者を騙すものです。
(1)詐欺の犯人は、貴重品を預かる時の要領で、被害者のキャッシュカードを・被害者の目の前で・専用の封筒に入れる。若しくは、被害者自身に入れさせる。その際、カードの暗証番号を紙に書かせて同封させるのがポイント。
(2)その後、犯人は何らかの理由をつけて被害者を別の場所に誘導したり、封筒以外の何かに注意を向ける言動をとる。
(3)そうやって被害者の目を逸らした隙に、前もって用意しておいた別の封筒にすり替える。
(4)すり替えた別の封筒は、見た目こそ同じだが、中身が違う。その中には、キャッシュカードと同じ大きさのプラスチック板や、簡単に作成できるポイントカード等が入っている。封筒は外から中身が見えないし、キャッシュカードによく似たものが入っているので、触っただけでは判別が困難。
(5)犯人は、すり替えた偽の封筒を被害者に渡し、「こちらから連絡をするまで封を開けないで」等と言って、時間稼ぎをする。
(6)被害者を勘違いさせている間に、すり替えで盗んだキャッシュカードを使い、同封させた暗証番号でATMを操作して、口座から金を奪う。
こんな感じです。今回逮捕された蕪木容疑者も、この手法でカードを奪った模様。
www.kanaloco.jp(2019/10/31)
キャッシュカードを持参した封筒に入れるよう指示し、男性が目を離したすきに別のカードが入っていた封筒とすり替えたという。
県警によると、同容疑者が訪問する前に、男性宅に横須賀署の刑事課員を名乗る男から電話があり、「捕まえた振り込め詐欺犯があなたの口座から不正に現金を引き出したと言っている。これから署員を向かわせる」などと言われたという。
盗まれたキャッシュカード1枚を使って、同日夜に横浜市都筑区のコンビニエンスストアの現金自動預払機(ATM)から現金50万円が引き出されていた。16日に男性が金融機関を訪れて、すり替えられたカードが使えるか相談したことから発覚。コンビニ周辺の防犯カメラ映像の解析などから同容疑者が浮上した。
(https://www.kanaloco.jp/article/entry-205804.html)
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今回の神奈川県警の話は、「詐欺撲滅に力を注ぐハズの警察が、自分も詐欺を働いていた」というもの。
警察が組織ぐるみで行ったモノでは無いにしても、警察の信用はガタ落ちです。警察が活動し難くなるのは確実。
それはそうです。犯罪者を逮捕するのが警察の仕事。自らの立場を利用して犯罪に走るというのは、言語道断です。
(イメージ画像 https://www.pakutaso.com/20131158305post-3445.html)
更に困ったことに、この手の話は神奈川県警だけの話ではありません。他地域の警察でも、同様の事件が起こっています。
例えば、京都府警の話があります。
mainichi.jp(2019/10/18)
特殊詐欺の通報で知り合った高齢男性から現金1110万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた元府警巡査長、高橋龍嗣被告(38)=京都市中京区=の論告求刑公判が17日、京都地裁(伊藤寿裁判長)であった。
検察側は「警察官への信頼を逆手に取り悪質」などとして懲役6年を求刑し、結審した。判決は11月21日の予定。
(https://mainichi.jp/articles/20191018/ddl/k26/040/291000c)
上記の詐欺事件が発覚したのは、今年の夏です。現在では、地裁での裁判が終わりかけの状態。
この京都の話も、神奈川と同じく「警官の立場を悪用して詐欺を働いた」というもので、悪質です。
この様な話が無くならないと、警察官全員が変な目で見られ、それがデフォルトになってしまうでしょう。
正当な理由で警察官がやって来たとしても、「アンタ、本当に警察?」「正当な業務なの?まさか詐欺じゃないでしょうね?」と疑うのが当然…という、ヤヤコシイ状態になる。そんな世界は、すぐそこまでやって来ています。
このままでは、警察官の肩身が狭くなる一方です。それに加えて、警察が動き難くなってしまえば、ガチの犯罪を取り締まり難くなり、犯罪の数が増えます。
警察にも一般市民にも、損しかない話。そういう状況にならない為に、警察は本気で再発防止に取り組んで頂きたい。
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他方、私たち一般市民に出来ることは、「詐欺や悪徳商法に対する免疫をつけること」です。
これには、2つの意味合いがあります。
1:相手の言動を疑うことで、怪しい点を見抜くスキルを見につける。
2:詐欺や悪徳商法の被害に遭った場合、「騙され易いカモのリスト」に、自分の名前が掲載されてしまうことがある。その名簿は闇で売買され、「新たな詐欺の顧客名簿」の様な扱いを受ける。
名前を載せない為には、そもそも詐欺や悪徳商法に引っかからないことが重要。最初が肝心。
詐欺師に狙われ難くすることが大事。
相手の言動を鵜呑みにせず、怪しい部分を感じるセンスを養うことも重要。
どちらも、1日や2日で可能になる話ではありません。常日頃からの心構えが必要になる話です。
詐欺師は、いつか必ずやって来ると思った方がいい。その前に、被害に遭い難くなる訓練をしておいた方がよい。
「自分は絶対に引っかからないから、訓練をしなくてOK」と思う人ほど、騙されます。何処の誰でも、注意は必要。
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【参考書籍】
『悪徳商法 わざと引っかかってみました』