「eスポーツ」(イーすぽーつ)
2018年の流行語大賞でも取り上げられた言葉です。
ご存知の方も多いでしょう。
nlab.itmedia.co.jp(2018/12/3)
「eスポーツ」は、「エレクトロニック・スポーツ」の略。
各種コンピューターゲームを「対戦競技の一種」と考え、技を鍛え上げた選手が本気でぶつかり合う…というもの。
世界各地で競技会が開催され、専門チャンネルが競技を中継することも多い。優勝者には巨額の賞金が出ることもしばしば。普通のスポーツと遜色の無い、巨大イベントに成長しています。
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eスポーツのテーマとなるゲームの大半は、
「その場で勝敗がハッキリすること」
「プレイヤー本人の能力(技術や戦術等)で勝敗が決まること」
少なくとも、この2つの要素を満たしています。
典型的なのは「対戦格闘ゲーム」ですね。有名ゲーム「ストリートファイターシリーズ」を筆頭に、この手のゲームは多数あります。
他には、「ぷよぷよ」等のアクションパズルゲームや、「シャドウバース」等の対戦カードゲームもテーマになり得ますし、実際に大きな大会も開催されています。
同様に「サバイバル形式のシューティングゲーム」「サッカーやカーレース等、実際の競技をゲーム化したもの」についても、テーマとして採用されています。
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ここまで読んで頂いて、
「ゲームをプレイして、賞金が出る?」
と疑問に思われる方、いらっしゃると思います。
特に、ゲームを「子どもの娯楽」と見ているシニア層以上の方に多いのではないかと。
そう思われるのも仕方ないのかも知れませんが、競技として成り立つかどうかを分けるのは、「スポンサーの有無」「観客・ファンの多さ」です。
野球やサッカーがプロ競技として成立しているのは、スポンサー企業が資金を出してくれているからであり、試合を見てくれる観客がいるから。
両方が欠けている場合は「草野球」「草サッカー」と言われ、プロ競技としては認められないでしょう。それと同じこと。
有名eスポーツ大会では、億単位の賞金が出ることもありますし、数千万人規模のファンが存在する場合もあります。
一例として、有名カードゲーム「シャドウバース」の2018年世界大会を見てみると…。
優勝賞金は、1000000ドル(100万ドル。当時のレートで、約1億1000万円)です。
ニュースになる規模の、有名プロゴルフトーナメントでも、優勝賞金1000万円の大会が存在します。それを考えると、シャドウバースの大会賞金は破格。
この金額、eスポーツ界では珍しいものではありません。
www.sanspo.com(209/1/17)
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この盛り上がりに乗って、eスポーツの世界に入ろうとする人々が増えています。
そういった方は、様々な活動や出費を迫られます。悲しい現実。
先ずは、ゲームを手に入れないと話が始まりません。そうなれば、ゲームを作っている会社に利益が出ます。
ゲーム内で強くなる為には、様々な攻略情報が必要になってきます。ゲーム情報サイトや、ゲーム雑誌に関わる企業が儲かります。
ゲームで上位入賞を考えると、「野球のバット」や「サッカーのスパイク」と同様に、使う道具にもコダワリが出てきます。主にはPCの周辺機器(マウスやキーボード等)を吟味し、使いやすいものを選ぶでしょう。メーカーが喜びますね。
本物のプロを目指す人は、プロゲーマー養成の専門学校に入ることもあります。少子高齢化で教育産業が先細る中、業界にとってeスポーツは「貴重な新規開拓分野」です。
…こうやって経済が回り、業界が発展していく。既存のスポーツ・エンタメと同じです。
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しかし、発展の裏には問題もあり。
例えば、「ゲーム依存症」や「プロゲーマーの選手寿命が短い」等の問題が生じていますね。
www.afpbb.com(2019/9/22)
ゲームの世界でライバルを倒し続けてきたeスポーツの第一世代が引退し始めるなか、ある難しい問題が浮上している。
引退後、プロ選手は一体何をすればいいのか、という問題だ。
eスポーツの世界では他の多くのスポーツに比べ、この問題に直面する時期が早い。
激しいゲームで戦う選手たちにとっては、ミリ秒単位の遅れが致命的になり得るため、「反応の鈍り」が現れるとされる23歳でその選手生命が終わることすらあるという。
プロゲーム業界に詳しい人々によると、選手らの間では「引退後、どうするか」という話題がよく会話に上るという。
引退後の主な選択肢としては、eスポーツチームのコーチやコメンテーター、アナリストなどがある。
だが、1日12時間におよぶ練習によって目や手首を痛めてしまう選手もいる。そういったケースでは、引退を心待ちにしているとの声も聞こえてくる。
(https://www.afpbb.com/articles/-/3241623より。改行・強調等は筆者によるもの)
プロの世界は、甘くないですね。
「ミリ秒単位の遅れが致命的」と記事にありますが、ミリ秒とは「1000分の1秒」のこと。
人間が反応できる限界が、刺激を受けてから100ミリ秒(0.1秒)程度と言われているので、eスポーツのプロゲーマーは、常に人間の限界で戦っていることになります。
また、記事内に「1日12時間も練習しないといけない」との記述あり。
これは苦痛です。どんなに好きなゲームでも、「やらなければならない」という強制があれば、嫌になって当然。
そこに「勝たねば消える」というプレッシャーがのしかかる。
「ゲームで遊んでいれば生活できる」という幻想は通用しない、厳しい世界ですね。
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筆者としては、eスポーツは「カーリング」「ビリヤード」と同じ要素があると考えます。
パワーでゴリ押すだけでは勝てず、頭脳戦が大半という競技。
そう考えると、なかなかに興味深い。
ただ、eスポーツは生まれて間もないジャンルであり、成熟にはまだまだ時間がかかります。
先述の「ゲーム依存」「プレイヤー寿命」等の他にも、賞金の支払いで揉める話もチラホラ。
ゲームそのものの世代交代サイクルも早い。
盛り上がりの勢いにかき消され、悪い部分が見え難くなっている感アリ。そこを見て見ぬフリは…できないでしょう。
かつて、F1を代表とする「モータースポーツ」は存在せず、技術の発展と共にスポーツとして認知されました。
それと同様に、eスポーツが競技として成熟・発展していくことを期待しています。
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【参考書籍】『eスポーツのすべてがわかる本』
【Book Live!】(試し読みアリ)
【BOOK☆WALKER】(試し読みアリ)
【ebook-japan】 (試し読みアリ)
【e-hon】 (試し読みアリ)
【コミックシーモア】(試し読みアリ)