8月になりました。
もう少しすれば、お盆の時期。長期休みに入る方も多いでしょう。
長期休みには何をするか?
帰省して墓参りするもよし。同窓会で昔の仲間に会うもよし。
普段は多忙であればあるほど、長期休みでやりたい事は多いハズ。
そんな中、多くの方が選択するのが「旅行」ですね。
思い切って遠くに出かけ、滅多にお目にかかれない史跡を見たり、本場の味に舌鼓を打ったり…等、楽しみな事だらけ。
プランを考える段階で、既にワクワクしてしまう方もいらっしゃるでしょう。
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ただ、ひとつ用心したい話があります。
それは、近年問題視されている「観光公害」「オーバーツーリズム」の話です。
www.sankei.com(2019/7/27)
政府は、訪日外国人の増加に伴って観光地の住民生活環境が悪化する「オーバーツーリズム(観光公害)」の対策に乗り出す。
今秋、訪日客向けのマナー啓発動画を公開するほか、来年3月末までに混雑やマナー違反など観光地を評価する指標を作成する。来夏の東京五輪を控え、訪日客は今後も増える見込みで、政府は観光と生活の両立に向けた環境改善を急ぐ。
観光公害は深刻になりつつある。
京都・祇園では訪日客が無断で舞妓(まいこ)に触るなどのマナー違反が横行。
鎌倉などでは電車やバスが混雑し、住民の通勤、通学に支障が出ている。民泊でも利用者の騒音やゴミなどをめぐるトラブルが相次ぐ。
こうした事態を受け、観光庁は早ければ9月にも、電車の乗り降りや歴史的建造物の写真撮影など基本的なマナーを外国語で紹介する動画を作成する。少なくとも英語、中国語、韓国語の3カ国語で配信する。
新たな指標は観光地の持続可能性に着目し、観光産業の雇用者数や消費額など評価できる点と、観光地の混雑度合いやマナー違反、犯罪・違法行為の発生状況といった悪影響を数字などで示し、実効性の高い観光政策を図る。北海道の複数の自治体の協力を得て、全国での活用を目指す。
観光庁によると、今年上半期(1~6月)の訪日外国人旅行者は推計で前年同期比4・6%増の1663万3600人と、過去最高を更新。
令和2年に4千万人とする政府目標は達成が視野に入っている。
(https://www.sankei.com/politics/news/190727/plt1907270014-n1.htmlより。改行・朱入れ等は筆者によるもの。以下同)
「観光立国」という標語を掲げ、海外からの観光客をドンドン受け入れましょう…という姿勢は、ここ最近強化されています。
しかし、生活習慣が違う人々が、一気にドバッとやって来れば、混乱が生じて当然。
「日本国内ではやっていい事と、やってはダメな事」の区別が曖昧な人が増えれば、カオスな状況へまっしぐら。
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筆者は関西人であり、ちょっと足を伸ばせば京都へ行けますが…。
最近の京都は、もう凄い事になっています。
街中を歩いていると、「日本語以外の言語を聞く場面」が、やたら多い。英語・中国語・フランス語・タガログ語…等々、国際色の豊かな都市になっています。
国際色豊かであれば、世界各地から人が集まっている…という事に。つまり、大勢の方が来ているという事。
その状況は、有名観光地に行けばハッキリ見て取れます。例えば、超有名観光地である「某・稲荷大社」です。もう年がら年中、激混み。通勤電車?と思えるレベルである事もしばしば。
観光地で、観光客向けの商売をされている方からすれば、ありがたい事なのでしょうが…。
自らが観光客として行く場合は、ちょっと遠慮したくなる事もあります。地域住民の方は、もっと困っていらっしゃるでしょう。
www.sankei.com(2019/6/12)
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同じ事は、海外でも起きています。
有名な所では、イタリアの観光都市ヴェネツィア(ベネチア、ベニス)の話があります。
ヴェネツィアでは、そもそも観光客数が「都市としての収容能力」を超えており、観光客向けのホテルや商店ばかりが建設され、地域住民が立ち退きを迫られる状況が頻発。住民の数が60%以上も減少するという、深刻な状況になっていました。
この状況を前に、これはマズイ…と考えた当局が動きます。
マナー向上の為、「ゴミのポイ捨て」や「路上で寝る」という事に対して罰金を課す条例を制定。
遊園地と同じ要領で、街に入る為の「入場料」を観光客から徴収。
空きアパートを改修して住居を確保し、住民となってくれる人に提供する。
…その他、様々な方策を採っています。
同様の事例は、スペイン・バルセロナでも報告されています。
日本の京都でも、ホテル等を通して「宿泊税」を観光客から徴収したり、違法民泊を厳しく監視したり、様々な活動をしています。
www.sankeibiz.jp(2019/5/3)
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有名施設でも、似た様な動きがあります。
フランス・パリの「ルーブル美術館」では、「訪問前には、オンラインでの予約を、義務化する」という方向に動いています。
「予約した方がいいですよ」という呼びかけは行われていましたが、強制では無かった。それを、2019年内に義務化する為、動いています。
www.afpbb.com(2019/8/3)
世界的に有名な仏パリのルーブル美術館(Louvre Museum)は2日、今夏の混雑状況を受け、訪問客に対し事前にオンラインで来館予約を取るよう呼び掛けるとともに、年内に予約を義務化する方針を明らかにした。
レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)の絵画「モナリザ(Mona Lisa)」などを所有する同館は世界一の来館者数を誇る美術館で、人気のあまり混雑が問題になってきた。
今夏は熱波の影響で観光客が涼しい美術館内へ避難したことにより、混雑が悪化。また、改修工事のために「モナリザ」が別室に移動したことも、さらなる混乱を生んだ。
ルーブル美術館のバンサン・ポマレード(Vincent Pomarede)副館長補佐は、オンライン予約の義務化により、同館は来館者数に対処しやすくなると説明。
「(予約の義務化は)10月か11月からになる予定。2020年の年初に開始したかったものを早めた」と説明した
(https://www.afpbb.com/articles/-/3238246)
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世界各地で問題になっている「オーバーツーリズム」。
観光地からすれば「頭の痛い問題」ですが、観光客にとっても同じです。
多忙な日常から離れ、滅多に体験できない何かに出会う為、長い旅路を経て観光地に来たはいいが…見た光景が「満員電車と同じ」では、ゲンナリします。
そうならない為に、事前にしっかり調査しておきましょう。
混まない時間帯を調べたり、穴場スポットを探すだけでも大きく違います。
少なくとも「行ってから混雑状況に気付き、ガッカリ」という状況は避けられるハズ。
できれば、調査は「ゆっくり、落ち着いた時に、パソコンで行う」というものがベスト。
バタバタした状況では手落ちが発生し易くなりますし、スマホの小さい画面では十分な情報を得にくい場面もあります。
どっしりと腰を落ちつけて、大きな画面で調査するほうが良い。
折角の旅行の機会です。
オーバーツーリズムで困らない為に、オーバーツーリズムに加担しない為に、事前の準備はしっかりと!
-----------(記事了)-----------
【参考書籍】『観光公害』