先日、有名特撮番組「ウルトラシリーズ」のひとつ『ウルトラマンタロウ』について、記事を書かせて頂きました。
記事の内容は、「ウルトラシリーズには、ホラーテイスト強めのエピソードが混じっている」「子供には刺激が強すぎて、トラウマになる」というもの。
この記事を読んで頂いた読者様から、「マンガ版のウルトラマンタロウがある。内容は、かなりエグイ」という話を伺いました。
マンガ版?…筆者は、その存在を知りません。早速調査。
調査の結果…『マンガ版・ウルトラマンタロウ』の存在を確認。
(著:石川賢 小学館クリエイティブ)
扉絵を見るに、ちょっとオドロオドロしい、怖い感じがしますね。
タロウの後ろに、目と血管らしきものが…。
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上記画像を見て、「何だか怖い」と思うのは…特に不思議な話ではありません。
なぜなら、この『マンガ版・ウルトラマンタロウ』の作者は「石川賢(いしかわ・けん)」氏。かなり有名な漫画家さんです。
石川氏は、あの「永井豪(ながい・ごう)」氏との繋がりが強い漫画家さん。
長い間、永井豪氏と共に仕事をされており、『ゲッターロボ』や『キューティーハニー』等の作画を担当された経験の持ち主。
永井豪氏といえば、『デビルマン』に代表される様な、恐ろしくも悲しい物語を描かれる方。
石川氏も、同様の作風を持ち味とされています。「清廉潔白なヒーロー」ではなく、「傷を負っても、血まみれになっても、なりふり構わず相手を倒す者」を描く事が多い作家さんです。
下画像は、石川氏のオリジナル作品として有名な『魔獣戦線』。
長く伸びた爪・飛び散る血しぶき・鋭い眼光…。明らかに「永井豪作品」の影響を受けています。「ダークヒーロー」の見本という感じ。
この様な作風を得意とする漫画家「石川賢」氏。
彼の手による、『ウルトラマンタロウ』のコミカライズ。
バイオレンスの匂いがプンプンしますね。
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『マンガ版・ウルトラマンタロウ』は、あちこちの雑誌に掲載されていました。
その中で、最もバイオレンス要素が強い作風になっているのは、1970年代前半に「少年サンデー」で連載されていたもの。
記事冒頭で紹介した扉絵は、その「サンデー版」の影響が出た絵柄になっています。
(著:石川賢 小学館クリエイティブ)
「実写版」と「マンガ版」の違いを列挙すると、以下の様なものになります。
◆タロウの姿や能力
<実写版>身長53メートルの巨人。「ストリウム光線」等の必殺技を駆使して、敵をやっつけるヒーロー。
<マンガ版>場面によって身長は変わり、最小で2メートル、最大で40メートル程度(推定)。光線技を使ったりもするが、「力任せに敵を引きちぎって殺す」等、エグイ方法もよく使う。
◆タロウが人間の姿をしている時
<実写版>「東光太郎(ひがし・こうたろう)」という男性。職業は、ZAT(ザット。タロウの世界における、地球防衛組織)の隊員。元々はボクサーを目指していた。
<マンガ版>名前は「東光太郎」だが、読み方が「あずま・こうたろう」となっている。職業はキックボクサー。防衛隊員ではない(そもそも、マンガ版には防衛組織らしいものが無い)。
◆ウルトラ兄弟の存在
<実写版>初代ウルトラマンを始め、数多くの仲間が存在。共に戦う場面もある。
<マンガ版>人間と同じ身長で、黒い覆面とコートで姿を隠し、顔が見えない。が、仲間と名前を呼び合っており、そこからウルトラ兄弟だ…と推測できる。性格は冷酷で、「タロウが戦う運命を受け入れないのであれば、死あるのみ」と切って捨てる。
◆タロウの敵
<実写版>地球を荒らす怪獣や、宇宙からの侵略者。連中は町を破壊し、火災を起こしたりするが、直接的に殺人行為を働く事は少なめ。たまに「気のいい者」「話の分かる友好的な者」が混じっている。
<マンガ版>怪獣というよりは、悪魔や妖怪に近い。通行人の首を無差別に切断したり・人間を捕まえてドロドロに溶かしたり・針で串刺しにしたり…等、かなり生々しい方法で虐殺を行う。その行動目的が「生き残る事」という切迫した者もいて、かなりダーク。
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この作風は…
『ウルトラマン』というより『デビルマン』ですね。さすがは「石川賢」氏。
あまりのインパクトの強さに、「このマンガがすごい!」で特集を組まれた事もあります。
konomanga.jp(2016/8/8)
宇宙の戦士、未来の生物、人間精神の産物とされる〈奇形獣〉とウルトラマンタロウの、文字どおり血で血を洗う壮絶なバトル!
石川賢といえば、自らも原作者に名を連ねている『ゲッターロボ』における壮絶なアレコレが有名だが、原作の所在など関係なく、彼の手にかかればすべて石川ワールドに引きずりこまれてしまうのだ。
ズバッ バリボリバリ ズルリ ボタボタジュワーーーッ ビシャー ドワッ
今回の完全復刻版コミックスの帯にある、「史上最怖」の文字は伊達ではない。
(http://konomanga.jp/guide/73146-2より。改行等は筆者によるもの)
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分量はさほど多くありませんが、内容がやたら濃いので、読み応え抜群。
別作品と言えるレベルにまで変貌した、「異色のウルトラマン」を味わえる逸品です。
興味のある方は、この機会に是非どうぞ。
----------(記事了)----------
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