「虎の威を借る狐」という故事成語があります。
これは、「小人物が、大人物をバックに威張る」という意味の言葉。あまり良いものではありません。
しかし、これが映像作品の世界になると、ちょっと事情が変わってきます。
「虎の威を借る作品」よりも、「虎の威を借りようとして、微妙に借りきれていない作品」が目立つのです。
もっと具体的に言えば、
「ヒットした有名作品を真似て作ったが、元ネタに比べて質が低過ぎる」
「バッタもん(パクリ作品)と言うのにも抵抗があるくらい、何とも残念な仕上がり」
「チープ過ぎる作りが、逆に微笑ましい」
「どれだけガッカリさせてくれるのか? それが楽しみだ」
「有名な元ネタに乗っかる気マンマン。しかし、乗っかる気”しか”ない事が分かるので、良い意味で脱力できる」
こういう評価を得る、変わった作品群です。
群の呼称は、人によって様々。
「バッタモン」「パクリ」「パチモン」等の聞き慣れた言葉もあり。
「地雷作品」「残念作品」「E級作品」「お馬鹿作品」等の名称もあり。
本記事では、「バッタモン」と表記します。
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「バッタモン」にも色々ありますが…。
本記事では
「豪華過ぎる元ネタを引っ張ってきて、それに乗っかる気しか伝わって来ない」
「しかも、乗っかりに失敗した…としか思えない出来上がり」
という、かなり残念度が高い作品をひとつ、御紹介します。
題名は『エイリアンvsアバター』。2011年の作品。
タイトルだけで相当キテますが、副題が「勝手に戦え!」です。
嫌な予感が、強烈に伝わってきますね。
(提供:Neowing)
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この作品の元ネタは、言わずと知れた有名作品『エイリアン』と『アバター』です。
加えて、『エイリアンvsプレデター』をも意識している模様。何とも欲張りな題名。
元ネタのひとつ『エイリアン』は、「SFホラー映画の元祖」とも呼ばれている作品です。
第1作は1979年に公開。現在も新作が発表されており、長期シリーズ作品として愛される存在になっています。
(提供:タワーレコード)
別の元ネタ『アバター』は、2009年の作品。
3D映像が話題を呼び、世界興行収入ランキング・1位を獲得。現在公開中の『アベンジャーズ/エンドゲーム』に抜かれそうな感じがしますが、2009~2019年現在の間、ずっと1位をキープしているという、凄い作品。
(提供:タワーレコード)
更なる元ネタの『エイリアンvsプレデター』。エイリアンは先述の通りですが、プレデターは「別映画の主役級モンスター」です。
若き日の「アーノルド・シュワルツェネッガー」氏と死闘を繰り広げた事もある、異星の狩猟民族。
ドレッドヘアーみたいな頭と、蟹や蜘蛛を思わせる口周辺が特徴。
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この様に、モトネタは凄く豪華なのですが、他は…ちょっと…。
控えめに言って、
「日本の『仮面ライダー』や『スーパー戦隊シリーズ』で、同じレベルの事をやれば、炎上する」
という内容。それが『エイリアンvsアバター』です。
粗筋を書くと、
「地球に来た凶悪エイリアンと、それを狩るアバターの戦い」
これだけ。
エイリアンは人を襲いますが、そのCGが何とも雑な仕上がりで、微笑ましい。
シナリオも雑。アバターを支援するロボット「ロボター」の出現が最大の見せ場かも?…というレベルの、何とも言えない展開になっております。
「気持ちよくガッカリしたい」という、変わった趣味の方にオススメ。
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なお…
「エイリアンとか、アバターとか、そもそも著作権的にアウトでは?」と思われる方もいらっしゃるでしょうね。
筆者も、それが心配です。
結論を言えば、「映像ソフトとして売られているから、著作権はクリアした」ハズですね。
そもそも、エイリアンという言葉は「外国人」「よそ者」を表す一般名詞。
同じく、アバターは「分身」「化身」という意味。エイリアンと同じく、一般名詞です。
両者の造形も、元ネタとは違います。「元ネタを意識しているな」という感じは、強烈に伝わってきますが。
こういった
「法律に引っかかるのは怖いので、元ネタの明らかな盗用は止めておこう」
「しかし、元ネタと勘違いして買って欲しいから、怒られない範囲でパクろう」
という”腰の引けた態度”には、苦笑いを禁じ得ません。
同時に、微笑ましいのも事実。
「悪戯がバレて、怒られるかもしれないと思い、挙動不審になる犬や猫」を見ている感じがして、変な好感が持てます。
この「奇妙な感覚」を狙って、製作サイドが『エイリアンvsアバター』を作ったとするならば…私は、見事に術中にハメられた事になりますね…悔しい。
---------(記事了)---------
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