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モビルスーツが人型である理由。理系&文系編

さて…前回記事の続きになります。

(ちなみに、前回記事はコチラです。)

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tenamaka26.hatenablog.com

 

昨日・3/9は「ザクの日」という事で、『機動戦士ガンダム』に出て来る兵器・ザクの記事を書きました。

その記事の最後に、「ザクが愛される理由は、現実の歴史を考察し・兵器のとしてのリアリティを追及して・初期設定に活かしたこと」との文言を書き、そこで終わってしまいました。

 

この記事では、「ザク等のモビルスーツにおける、兵器のリアリティ」とは何か、その詳細について語ろうと思います。

「現実の歴史を考察」については、また別の機会に。

 

(なお…。前回記事は、かなり「ガンダム初心者」に優しい内容だったので、ガンダムを知っている方には物足りない記事だったと思います。今回は、中級者以上の方にも楽しんで貰えると考えています。逆に、初心者には難しいかも。それを踏まえて、以下の文章を読んで頂ければと思います。)

 

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まず、兵器としてのリアリティを語る前に、「大人の事情」に触れておかねばなりませんね。

 

そもそも、現実世界の兵器には、巨大ロボが存在しません。技術的に難しいという理由もありますが、大前提として「人型が戦闘に向かないデザイン」だからです。

銃弾が飛び交う戦場では、「伏せる」「物陰に隠れる」という行動が基本。立ってると的になるだけです。

 高速で移動するなら、二足歩行ではなく車輪が有効。悪路を進むなら無限軌道(キャタピラ)。人型では無い方が役立ちます。

 

戦場で使えるロボットの研究は、実際に行われています。有名なものは「山岳地帯用など、徒歩でないと移動が難しい地域でも使える、荷物運搬ロボ」の研究。

しかし、出来上がったロボットは、二足ではなく四足以上の多脚型です。人型ではなく馬型といったところ。この形になった理由は「多くの荷物を乗せて、安定して歩けるから」。

 

www.youtube.com(2014/4/6公開。時事通信社/JIJIPRESS)

 

他の状況でも同様です。空を飛ぶなら飛行機の形が一番だし、海を進むには船の形が最適。実際の戦闘では「人型である必要性」が少ない場面ばかりです。

それでもなお、「巨大人型ロボットが活躍する作品」にしなければならない理由。それは「スポンサーの意向」にあります。

 

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機動戦士ガンダム』の第1作(以下「ファースト」と表記)は、1979年に発表されました。今から40年前。

ファーストは、「巨大ロボットが活躍するアニメ」の草分け的存在。理由は「人類同士の戦争という概念を中心に置いた、初めてのロボアニメだったから」。

ファースト以前にも成功した巨大ロボットアニメはありましたが、その殆どが「正義のロボvs悪の軍団」みたいな勧善懲悪モノで、子供が喜ぶ作品でした。

そうなった理由は、話の面白さ云々よりも、「スポンサーが玩具メーカーだったから」という点が大きい。

 

アニメで活躍する主人公ロボのオモチャは、売れます。作品そのものが「オモチャのCM」になっているという訳です。いわゆる「販売促進(販促)番組」

その為、子供に売れるカッコイイ設定やデザインが重視されていました。

当然、ファーストにも同様の事情がありました。

 

売れている巨大ロボット玩具は、ほぼ全て人型。そこから大きく離れた奇抜なデザインはできません。

「今までに無いデザインですが、絶対に売れます」と断言できませんし、スポンサーを説得できないからです。

その為、販売実績のある人型から離れるのはダメ。

 

そういった事情を背景に、「人型でありながら、戦争に投入しても不自然では無いリアリティ」を追及した結果が、ザクを始めとするモビルスーツだったのです。

 

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モビルスーツが人型をしている理由として、最もよく目にするのは「AMBAC(アンバック)」です。

これは「Active Mass Balance Auto Control」の略。直訳すると「質量の均衡を積極的に用いた自動制御」くらいですかね。

 
直訳では分かりにくいでしょうから、もっと噛み砕いて言うと「手足をバタバタさせたりすることでバランスを取り、姿勢を制御する」という意味合いです。
人間が「平均台運動」や「綱渡り」をする時、「バランスを取る為に手を横に広げ、不安定にならないように手の位置を動かす」という動作をしますよね。あれと同じ様なものです。
手足を動かすだけでバランスを取るので、姿勢制御装置としては安価。
 
 
また、モビルスーツは「宇宙空間での運用」が前提となっています。
モビルスーツを作ったジオンは、スペースコロニー国家。地上には国土がありません。祖国の周りは宇宙空間。その為、宇宙で活躍できる兵器でないと、戦いが始められません。
 
宇宙空間で姿勢制御を行う為には、推進剤が必要です。ロケットから出る炎が典型例。あれ、推進剤を燃やしているんです。
推進剤の燃焼で得られる力で、向きを変えたり加速したりします。
 
ただ、推進剤を積むには、大きな容量を持った格納タンクが必要。重量もあるので、戦闘をこなす機体には邪魔でしかありません。
また、推進剤は不安定で、ちょっとの事で爆発します。自爆の危険が常にあるので、なるべく減らしたい。
そういう理由で、「推進剤を使わない姿勢制御」という事が求められ、「AMBAC」を使える人型になった…という説明が生まれました。
 
 
なお、この「AMBAC」に関して、ガチ記事を書いた有名新聞があります。その名は「日刊工業新聞」

 数式まで持ち出して、真面目に分析しています。

newswitch.jp

(2015年4月10日付け、「日刊工業新聞」より)

 

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「AMBAC」以外の理由としては、

・元々、人型の作業用重機だったものを、兵器へと転用したから。

・人型をしていると、人間の兵隊に用いる戦術や戦法を流用できるから。

といったものがよく挙げられますね。

 

実際に、劇中で使用されている武器を見ると、「人間用携帯ロケット砲そっくりの、ザクバズーカ」が出てきます。

近接格闘用の武器も「ヒートホーク」という名前の斧。

それぞれが、「人間が使っているものを、そのままデカくした」という感じ。全くのゼロから作られたわけでも無いのです。

既に存在する運用法・デザイン・コンセプト等を流用すれば、研究開発にかかる期間やコストが削減できます。

現実世界でも、普通に通用する理由です。

 

ROBOT魂 < SIDE MS > MS-06R-1A 高機動型ザクII ver. A.N.I.M.E.~黒い三連星

 

この様に、モビルスーツが人型をしている事には、それなりの理由がある」「その理由が、空想の産物であるモビルスーツに、リアルさを加えている」という説明が、アチコチでなされています。

どの話も、それなりに説得力があります。

その説得力が、大人のファンを掴む原動力になっています。

「どうせ作り話でしょ」で片付けられないレベルの緻密な設定が、『ガンダムシリーズ』を大人気作品にした理由のひとつでしょう。

 

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最後に。

 

本記事で触れた「機械の構造」「姿勢制御」等の話は、主に「理系分野」の話です。

理系の目線から、モビルスーツが人型である事を説明した話が大半。

 

しかし、人型である本当の理由は、作者「富野由悠季」氏の価値観にあるのです。

その内容は、理系的なものではなく、「人の心がどう反応するか」

文系的要素の最たるものでした。

 

www.oricon.co.jp(2015年10月24日付け、「オリコンニュース」より。以下の強調朱は筆者によるもの)

人気アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの生みの親として知られる富野由悠季監督が23日、東京・新宿ピカデリーで『第28回東京国際映画祭』(以下、TIFF)のトークイベントに登壇。ガンダムモビルスーツ)がなぜ人型なのかに言及し、「人間が宇宙で暮らすようになっても、人間が安心できる相手はやはり人間。だからガンダム機械的な形にしない。人型になっているんです」と語った。

 

人が感情移入し易いのは、自分と同じ姿のもの。

「価値観の違いから起こる戦争」という難しいテーマを描き、なおかつ視聴者に受け入れて貰う為には、感情移入を意識した作りが効果的。

感情移入して貰えない作品は、心に残りません。「あの作品、一体何だったのかな?」となり、消え行くのみ。

 

人の心に強く残り、愛して貰える作品に仕上げる。

その為に「人型」兵器にした…ということですね。

 

その考えは、見事に大当たり。『ガンダムシリーズ』は多くの人に愛され、40年以上続く巨大コンテンツへと成長しました。

今の所、シリーズが弱る気配が微塵もありません。

これからも躍進を続けていくのでしょうね。

 

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