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時空をかけるコック その2

さて、前回の続きを。

戦国グルメ漫画信長のシェフについての話でした。

 

前回掲載した『信長のシェフ』のあらすじを、ザッとまとめると…

 

 

(1)物語の始まりは、1568年(戦国時代の終盤)の京都から。

 

(2)主人公である「ケン」は、平成時代からタイムスリップしてきたコック。

ケンは、何かの拍子で記憶喪失になったらしく、自分の本名や住所など「身の回りの事」をスッカリ忘れている。

しかし、平成時代の料理知識や、歴史の流れなどは覚えている。

 

(3)ケンは、戦国時代の京都で暮らす為に、鍛冶屋に居候しながら料理を作る。

未来の調理技術を使った奇抜で美味い料理は、鍛冶屋の近所で評判・大人気となる。

ケンの料理は「京都名物」とまで言われるレベルに。

 

(4)その話を聞きつけたのが、勢力を伸ばし続ける有力武将、織田信長であった。

 

(5)ケンの店にやってきた信長「ケンよ。お主を召し抱える。断れば殺す。」

 

(6)ケンは、信長からの話を受ける。鍛冶屋の元を離れて岐阜へ。

 

(7)岐阜に着くと、早速に信長から命令が。「織田家の料理人とケンとで、料理勝負をしろ。より美味い品を作った方が勝ちだ。負けた方は、殺す。」

 

(8)命令のままに、料理を作るケン。さて、信長の判定は…?

 

 

…こんな感じでしたね。これが第1話近辺の内容です。

(なお、前回の記事はコチラ 時空をかけるコック その1 - makaran宝箱)

 

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信長のシェフ』は、現在「週刊漫画TIMES」で連載中の作品。

2019年2月17日現在、最新刊は23巻。

 

(漫画:梶川卓郎 芳文社)

 

戦国時代を描いた作品といえば、戦略だったり武勇だったり、軍事的な話が多いもの。

そんな中、「料理」という視点を取り入れた作品は、あまり多くありません。

先ず、そこが斬新。

 

加えて、話の内容も面白い。

主人公のケンは、信長から飛んできた無理難題の数々を、平成の料理技術や知識を用いて解決していきます。

戦国時代にはある筈のない、遠い未来の料理を目の前にして、信長でさえ目が点になる状況が多数。

その力量は、ただの料理人の域を超え、信長の貴重な戦力へと変わっていくのです。

 

 

信長のシェフ』の魅力は、「料理を、美味い・不味いの域で語るのではなく、より壮大な物語へと繋げていく」という点にあります。

ケンの技量を見た信長は、「ケンが作る料理を、腹ごしらえの為だけに使うのは惜しい」と考え、軍事や外交に使い始めるのです。

 

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例えば、「軍事」の話を見てみると…。

 

信長のシェフ』の始まりは、先述した通り「1568年から」となっています。

この時、信長は30代の半ば。あの有名な「桶狭間の戦い」から8年が経過した頃です。

桶狭間での勝利を皮切りに、どんどん勢力を伸ばしていく信長。美濃の斉藤氏を破って領地を広げ、足利義昭を将軍の座につけ、天下取りの布石を次々に打っていきます。

 

しかし、足利義昭を将軍にした時点で、戦いが終わったワケではありません。

武田信玄・勝頼の親子、上杉謙信本願寺顕如浅井長政朝倉義景毛利輝元と村上海賊…。

まだまだ、強敵だらけです。

 

そんな状況の中、ケンの料理が、思わぬ力を発揮します。

たった一皿の料理が、ある時は「戦の流れ」を大きく変え、またある時には迫り来る敵軍を止め…という展開まで引き起こします。

そうなる過程もキッチリ描かれるのですが、話の流れに無理が無く、説得力のあるものになっています。「ひょっとして、本当にこういう話が裏にあったのかも?」と思えるレベル。

その説得力が、この漫画の大きな魅力です。

 

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また、「外交」の話を見てみると…。

 

外交とは、ザックリ言えば「相手の国と、話し合いをする」というもの。

いくら戦国時代とはいえ、何かにつけて頻繁に戦争していたら、国が疲弊して滅びます。その為、「話し合いで解決できる事は、話し合いで」という流れになるのは、至極当然。

君主自らが赴いて話し合いをする事もあり、有力家臣を使者として派遣する事もあり。会談の機会も数多くありました。

 

戦国大名間における話し合いのネタは、「同盟の締結」「婚姻(政略結婚)」「人質交換」「貿易問題」…等々、かなり多数。

また、戦国時代の外交は「武家同士の話し合い」だけではありません。朝廷や貴族との付き合い、堺(現在の大阪)に住む大商人との交渉などもあります。

 

交渉時には、歓迎の宴席がつきもの。そこにケンが出す「未知の美味」が並べば、交渉参加者の心は激しく動きます。

ある者は、「こんなに美味い料理を食べている大名は…財力が豊富に違いない。友好関係を結ぶ方が無難だ」と思うでしょう。

またある者は、「この料理に使われている材料は、あの国の特産物だ。さては、裏で繋がりがあるな。織田を敵に回せば、繋がりのある国も同時に敵に回す事になる。敵対できない」と思うでしょう。

 

つまり、言葉を直接使った交渉・恫喝ではなく、無言の圧力をかける事ができるのです。

ケンの料理には、それだけのパワーがあります。

 

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表舞台へと積極的には出ず、あくまで裏方に徹する主人公・ケン。

彼はコックです。「料理や栄養素の知識」や「食材の歴史」等については博識ですが、戦国時代の出来事については、あまり詳しくありません。

 

ケンが知っている事は、「武田vs徳川の合戦(三方ヶ原の戦い)では、徳川が負けた」とか、「本能寺の変は、1582年(天正10年)に起こった」くらいのもの。

信長以外の武将が、いつ・どこで・どの様な活躍をしたのか…という事を始め、軍事史や政治史的な知識は、一般人レベルです。

その為、「この合戦に勝つには、こうすればよい」という助言もできません。

また、歴史改変への罪悪感や不安感もあり、歴史的な決断の場面からは離れようとします。

 

ケンがやろうとする事は、「信長の目に留まった以上、全力で仕える」「料理人としての誇りを忘れず、美味くて栄養のあるものを作る」ということ。

その頑固さが、逆に清清しく思えます。

 

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信長のシェフ』の最新刊は、23巻。

ケンと信長の出会いから、かなりの年月が経過しています。

しかし、「本能寺の変」が起こった1582年は、数年先の出来事。

信長に敵対する勢力は、多数存在しています。

 

ケンは、このまま「信長の料理人」として裏方に徹するのか?

それとも、本能寺の変を食い止めるために、積極的な歴史への介入を行うのか?

まだまだ先が読めない『信長のシェフ』。

興味のある方は、是非とも読んでみてください。

 

 

書店リンク > 『信長のシェフ』第23巻